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少量危険物タンクを複数並べるとなぜ1つの貯蔵場所になるのか|距離1mの基準と流出防止の囲いを解説

低い囲いに収められた2つの少量危険物タンクが並ぶ屋外の様子

灯油タンクや薬品タンクなど、指定数量に満たない少量の危険物を貯蔵するタンクは、実は消防法本体ではなく市町村の火災予防条例で基準が決まっています。
ところが同じような小さなタンクでも、複数並べる場合の扱いや周囲の囲いの基準は、市町村によって解釈が分かれやすい部分でした。
令和元年に内閣府へ寄せられた要望をきっかけに、消防庁がこの取扱いを全国で統一するための通知を出しています。
タンクの並べ方と囲いの作り方には、見落としやすい2つの基準があります

うちにも屋外に灯油タンクを2つ置いているんですが、距離とか特に決まりはないんでしょうか。

実は少量のタンクでも、火災予防条例(例)に細かい基準があるんです。
令和2年に消防庁がその運用をまとめた通知を出しています。

条例に基準があるのは知っていましたが、複数のタンクとなると初めて聞きました。

はい、距離の取り方と囲いの容量、両方に決まりがあります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 灯油タンクなど指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵・取扱うタンクは「少量危険物タンク」として市町村の火災予防条例(例)の基準に従います
  • 複数のタンクを1m以上離して設置すれば、それぞれを別の貯蔵場所として扱えます
  • タンクの周囲に設ける囲いは、タンクの最大容量以上を収納できる容量にする必要があります
  • 複数のタンクをまとめて囲う場合は、最大のタンクの容量以上の囲いが必要です
  • この運用は令和2年3月17日付け消防危第71号で消防庁が全国に周知したものです

少量危険物タンクの技術基準を対象を確認距離を確保囲いを設置標識を掲示の4ステップで示した図解

少量危険物タンクの基準はなぜ全国で統一されることになったのか

ビニールハウスの脇に置かれた少量危険物タンクと吹き出しの図
灯油や軽油など、指定数量に満たない少量の危険物を貯蔵するタンクは、身近な施設にもよく置かれています。
実はその設置方法をめぐって、全国で統一した運用を求める声が上がっていました。
指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンクに係る火災予防条例(例)の運用について(令和2年3月17日 消防危第71号) 「規制改革ホットライン」(令和元年7月25日内閣府とりまとめ)において、園芸などの用途に用いられる少量危険物タンクの設置方法について、各市町村の火災予防条例における位置、構造及び設備の技術上の基準の運用に当たり、統一的な取扱いが行われるよう求められているところです。
きっかけは内閣府に寄せられた統一運用を求める要望でした
少量危険物タンクは、昭和36年に定められた火災予防条例(例)の技術基準を踏まえ、各市町村の条例で運用されてきました。
条例の枠組みは全国共通でも、実際の当てはめは市町村ごとの解釈に委ねられていた部分があったのです。
そこで消防庁は火災予防条例(例)第31条の4に規定される技術上の基準について、運用の考え方をとりまとめました。
この通知は消防組織法第37条に基づく技術的助言として、令和2年3月17日に発出されています。

少量のタンクだから細かい決まりはないと思っていました。

指定数量未満でも火災予防条例で基準が決まっているんです。
次はどんなタンクが対象になるか見てみましょう。

少量危険物タンクとはどの範囲のタンクを指すのか

地上に置かれた対象のタンクと対象外になる地下タンク及び移動タンクの図
一口に「タンク」といっても、この基準の対象になる範囲は決まっています。
対象と対象外を条文で確認しましょう。
火災予防条例(例)第31条の4 指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンク(地盤面下に埋没されているタンク(以下「地下タンク」という。)及び移動タンクを除く。以下この条において同じ。)に危険物を収納する場合は、当該タンクの容量を超えてはならない
対象は地上に置く指定数量未満のタンクだけです
指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵・取扱うタンクが「少量危険物タンク」と呼ばれます。
地盤面より下に埋められた地下タンクと、車両に固定された移動タンク(タンクローリー)は、この基準から除かれています。
灯油の給油タンクや薬品タンクのように、屋外や屋内に据え置く小型のタンクが典型例です。
まずは自社のタンクがこの範囲に入るかどうかを確認することが出発点になります。

うちのタンクは地上に置いてある灯油タンクなので、対象になりそうです。

はい、その地上設置のタンクが今回の基準の対象です。
次は複数並べるときの決まりを見ていきましょう。

複数のタンクを並べるときはどんな基準に従うのか

2つのタンクの間に測定バーを置いて間隔を示した図
少量危険物タンクを複数設置する事業所は少なくありません。
このとき気になるのが、タンクどうしの距離の扱いです。
指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンクに係る火災予防条例(例)の運用について(令和2年3月17日 消防危第71号) 複数の少量危険物タンクを設ける場合の取扱いについて(第31条の4第2項第1号関係) 複数のタンクを設ける場合、タンク間の距離を1m以上確保することにより、それぞれのタンクを一の貯蔵場所として取り扱うことができるものであること。この場合、タンクに接続する配管は、他のタンクに接続される配管と共用することができるものであること。
タンク間を1m以上離せば、それぞれを別の貯蔵場所として数えられます
容量の基準はタンクそれぞれの容量に応じて決まるため、まとめて計算されずに済むということです。
しかも距離さえ確保すれば、タンクに接続する配管を他のタンクの配管と共用することも認められています。
逆に1mの距離を確保できない場合は、複数のタンクをまとめて1つの貯蔵場所として扱う必要が出てきます。
新しくタンクを増設するときは、まず既存のタンクとの間隔を測ることから始めましょう。

既存のタンクのすぐ横に、もう1台増設しようと思っていました。

それだと距離が足りない可能性があります。
まずは1m確保できるか確認してください。

タンクの周囲の囲いで見落としやすいのはどこか

複数のタンクを囲う低い囲いと外側に立てた標識の図
距離の基準と並んで重要なのが、タンクの周囲に設ける囲いです。
ここには実務で見落としやすいポイントが2つあります。
指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンクに係る火災予防条例(例)の運用について(令和2年3月17日 消防危第71号) 少量危険物タンクの周囲に設ける流出防止措置について(第31条の4第2項第10号関係) タンク周囲に設ける囲いは、鉄筋コンクリート製又は鋼板、ステンレス等の金属製のものとするとともに、当該囲いの容量は、タンクの最大容量以上の量を収納できる量とすること。また、複数のタンクを包含するように囲いを設ける場合、当該囲いの容量は、包含されるタンクのうち、最大のものの容量以上の量を収納できる量とすること。この場合において、配管の破損等により流出事故が発生した際、タンク直近の開閉弁の操作等により、複数のタンクから同時に危険物が流出するおそれのないものとすること。
囲いの容量は合計ではなく最大のタンクの容量で決まります
複数のタンクをまとめて囲う場合でも、容量の合計ではなく、その中で一番大きいタンクの容量以上あれば足ります。
ただしタンク直近の開閉弁を操作するなどして、複数のタンクが同時に流出しないようにしておく必要があります。
もう1つの落とし穴が標識です。火災予防条例(例)第31条の2第2項第1号の標識を囲いに取り付ける場合、囲いの機能に影響を与えない位置や方法で行わなければなりません。
容量の計算だけに気を取られて、標識の取り付け方まで確認していない現場は少なくありません。

囲いの容量は全部のタンクを足した分で考えていました。

実は最大のタンクの容量で足りるんです。
標識の付け方もあわせて確認しましょう。

明日から少量危険物タンクの何を確認すればよいのか

巻尺でタンクの間隔を確認する担当者の図
最後に、実際に現場で確認すべき手順を整理します。
難しい計算は不要で、まずは実測から始められます。
指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンクに係る火災予防条例(例)の運用について(令和2年3月17日 消防危第71号) 貴職におかれましては、このことに留意の上、各市町村の火災予防条例に係る運用において御配慮いただくとともに、各都道府県消防防災主管部長におかれましては、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対してこの旨周知くださいますようお願いします。
まずはタンク間の距離を巻尺で測ることから始めましょう
複数の少量危険物タンクがあるなら、1m以上の間隔が確保できているかを確認します。
確保できていなければ、囲いの容量を最大のタンクの容量以上に見直す必要があります。
標識を囲いに取り付けている場合は、囲いの機能を妨げていないかもあわせて点検してください。
最終的な基準は各市町村の火災予防条例によるので、判断に迷ったら所轄消防署へ確認しましょう。

まずは巻尺で距離を測ってみます。

それが一番の近道です。
迷ったら所轄消防署にも相談してみてください。

よくある質問

Q少量危険物タンクとはどんなタンクのことですか?
A指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵・取扱うタンクのことです。地下タンクと移動タンク(タンクローリー)は対象から除かれます。
Qタンクを1m以上離せば囲いは不要になりますか?
Aいいえ、距離を確保しても囲いによる流出防止措置は別に必要です。距離の基準は貯蔵場所の数え方、囲いの基準は流出対策という別の目的の規定です。
Q複数のタンクを囲う場合、囲いの容量はどう計算しますか?
A容量を合計するのではなく、包含するタンクのうち最大のものの容量以上を収納できる量にします。あわせて複数のタンクが同時に流出しない措置も必要です。
Qこの基準はどの市町村でも同じ内容ですか?
A火災予防条例(例)は国が示す標準的なひな形であり、実際の基準は各市町村の条例によります。個別の運用は所轄消防署に確認してください。

まとめ

灯油タンクなど指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵・取扱うタンクは「少量危険物タンク」と呼ばれます
地下タンクと移動タンク(タンクローリー)はこの基準の対象外です
複数のタンクを1m以上離せば、それぞれ別の貯蔵場所として扱えます
距離を確保すれば、タンクに接続する配管の共用も認められます
囲いの容量は合計ではなく、最大のタンクの容量以上あれば足ります
開閉弁の操作などで複数タンクの同時流出を防ぐ措置もあわせて必要です
標識を囲いに取り付ける場合は、囲いの機能に影響を与えない位置で行いましょう

おかげで少量危険物タンクの決まりがよく分かりました。
まずは距離を測るところから始めます!

その調子です。
基準の当てはめに迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンクに係る火災予防条例(例)の運用について」(令和2年3月17日 消防危第71号 消防庁危険物保安室長)
  • 火災予防条例(例)第31条の4(指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンクの技術上の基準)
  • 火災予防条例(例)第31条の2第2項第1号(少量危険物を貯蔵し、又は取り扱う場所に設ける標識)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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