工業地域は工場のための地域というイメージが強いかもしれません。
しかし実は、キャバレーや料理店のような夜間営業の店舗も、この地域では建築そのものが禁止されています。
しかも昭和の時代には、逆に「工業地域なら建てられる」という回答が出されていました。
今回は建築基準法別表第二(を)項第三号の規制と、当時の回答が現在は通用しない理由を解説します
知り合いが工業地域の空き店舗を借りて、キャバレーを開業したいと言っているのですが、その地域でも建てられますか。
それは別表第二(を)項第三号に関わりますね。
まず条文を確認しましょう。
実は古い資料で「工業地域ならキャバレーは建てられる」という回答を見た記憶があるのですが。
それは昭和39年当時の条文に基づく回答で、現在の条文とは中身が違うんです。
順番に見ていきましょう。
- 工業地域内では、建築基準法別表第二(を)項第三号により、キャバレー、料理店その他これらに類するものは建築できません(建築基準法第48条第12項)。
- 昭和39年当時の回答は、当時の条文(旧法第49条第4項)にキャバレーが明文で列挙されていなかったことを理由に、工業地域での建築を認めていました。
- 現在の別表第二(を)項第三号は、キャバレーと料理店の両方を明文で禁止対象に加えており、当時とは条文の書き方そのものが変わっています。
- 近隣商業地域を定める(り)項第二号にも同じ「キャバレー、料理店その他これらに類するもの」が掲げられており、工業地域と近隣商業地域の両方で建築できません。
- 一方、商業地域を定める(ぬ)項にはこの用途の列挙が無く、キャバレーや料理店を規模を問わず建築できるのは商業地域だけです。
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目次
工業地域でキャバレーや料理店は建てられるか

しかし建築基準法は、キャバレーや料理店についても、用途そのものを理由に建築を禁止しています。
建築基準法別表第二(を)項第三号 キャバレー、料理店その他これらに類するもの
別表第二(を)項は工業地域内で建築してはならない建築物を列挙した表で、第三号にキャバレー、料理店その他これらに類するものが明記されています。
同じ(を)項には、ホテルや旅館(第二号)、劇場や映画館(第四号)、学校(第五号)、病院(第六号)なども並んでおり、キャバレーだけが特別扱いされているわけではありません。
ところがこの結論は、条文の歴史をたどるとつい昭和の時代までは逆でした。
次は、その昔の回答の中身を確認しましょう。
ホテルや劇場と同じ並びで、キャバレーも名指しで禁止されているんですね。
はい、用途そのものを理由にした禁止です。
次は、昔は逆の結論だった理由を見てみましょう。
昭和39年の回答と何が変わったのか

理由は、当時の条文の書き方そのものにありました。
建築基準法別表第二(を)項第三号 キャバレー、料理店その他これらに類するもの
旧法第49条第4項は、学校・病院・劇場・映画館・演芸場・料理店・ホテル又は旅館の用途を個別に列挙する方式で、この列挙にキャバレーは入っていませんでした。
「その他これらに類するもの」という広げる言葉も無かったため、料理店に近いという理由で類推して規制を広げることはできない、というのが当時の理屈でした。
一方、現在の別表第二(を)項第三号は「キャバレー、料理店その他これらに類するもの」と、キャバレーを明文で加えたうえに包括的な表現も備えています。
条文の書き方そのものが変わった結果、同じ質問への答えが正反対になったわけです。
キャバレーという言葉が条文に無かったから、当時は建てられたということですね。
はい、列挙に入っていなかったのが理由です。
次は、近隣商業地域の扱いを見てみましょう。
近隣商業地域でも同じ規制があるのか

実は近隣商業地域でも、同じ用途が同じ言葉で禁止されています。
建築基準法別表第二(り)項第二号 キャバレー、料理店その他これらに類するもの
「キャバレー、料理店その他これらに類するもの」という表現がそのまま繰り返されており、工業地域と近隣商業地域の両方で建築できません。
一見すると近隣商業地域のほうが商業寄りで建てやすそうに思えますが、実際には工業地域と同じ扱いです。
両者のただし書を比べると、近隣商業地域は「近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給」という生活利便を守る基準で許可を判断しており、工業地域とは許可の物差しが異なる点は次で確認します。
まずは、逆にどの地域でなら建てられるのかを見てみましょう。
近隣商業地域のほうが街寄りだから建てやすいと思っていました。
実は条文の文言が完全に同じなんです。
次は、逆に建てられる地域を見てみましょう。
商業地域だけキャバレーが許される理由

実は禁止する側の用途地域の中で、商業地域だけが違う扱いです。
(ぬ)項が禁止しているのは、危険な薬品や可燃性ガスなどを扱う工場・危険物の貯蔵処理施設・個室付浴場業に係る公衆浴場であり、キャバレーや料理店はそもそも列挙の対象外です。
工業地域(を項)と近隣商業地域(り項)がそろって名指しで禁止する中、商業地域だけがこの用途を規模を問わず許容している格好です。
用途地域図で「商業」の色に塗られた区域だけが、キャバレーや料理店を新たに開業できる場所になります。
次は、それでも工業地域や近隣商業地域に建てたい場合の道筋を確認しましょう。
商業地域だけが、条文の列挙そのものから外れているんですね。
はい、列挙そのものに載っていません。
次は、それでも建てたい場合の道筋を見てみましょう。
それでも建てたいときは何が必要か

ただし、その許可を得るための手続きは簡単ではありません。
建築基準法第48条第15項 特定行政庁は、前各項のただし書の規定による許可(次項において「特例許可」という。)をする場合においては、あらかじめ、その許可に利害関係を有する者の出頭を求めて公開により意見を聴取し、かつ、建築審査会の同意を得なければならない。
工業地域のただし書は「工業の利便上又は公益上必要」という積極的な必要性を求める基準で、単に迷惑をかけないというだけでは足りません。
さらに第48条第15項により、許可に利害関係を持つ人の意見を公開で聴取し、建築審査会の同意も得る必要があります。
つまり用途を変えずに同じ場所で建てたいなら、この特例許可の手続きに乗るか、商業地域内の物件を探すかのどちらかになります。
- 計画地の用途地域を都市計画図で確認し、商業地域に該当するかをまず調べる
- 工業地域・近隣商業地域であれば、特定行政庁の特例許可が必要になることを前提に計画する
- 特例許可には公開の意見聴取と建築審査会の同意という手続きが伴うことを見込んでおく
まず用途地域を確認するところから始めます。
はい、用途地域の確認が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
古い回答をそのまま信じていたら、危うく計画を進めるところでした。
先に確認してよかったです。
用途地域の確認も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第48条第9項・第10項・第12項・第15項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法別表第二(を)項第三号・(り)項第二号・(ぬ)項(e-Gov法令検索)
- 工業地域内のキャバレーについて(昭和39年8月26日 住指発第157号 建設省住宅局建築指導課長から広島市長あて回答)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や規定の適用範囲は個別の土地の状況によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





