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消防長が建築確認に同意しないとき不同意そのものを裁判で争えるのか|行政処分にあたらないとした最高裁判例を解説

消防長の同意拒絶は直接争えず確認拒否処分を争うことになるという趣旨を表したアイキャッチ画像

建築計画に対して、消防長が消防同意を拒んだり、いったん出した同意を取り消したりすることがあります。
そんなとき「消防長を訴えれば同意を取り戻せるのでは」と考えたくなりますが、実はその訴え方自体が認められないことがあります。
争えるかどうかの分かれ目を示したのが、消防同意の性質そのものを扱った最高裁判例です。
どこで争えばよいのかを知っておけば、いざというとき無駄な訴えで時間を失わずに済みます。

うちの計画、消防長さんが同意してくれなくて困ってるんです。
このまま消防長さんを訴えることってできるんでしょうか。

実はそれ、そのままでは訴えが却下されてしまうんです。
最高裁の判例で、争い方の道筋が決まっているんですよ。

え、消防長さんを訴えちゃダメなんですか。

はい、直接は無理なんです。
今日はその理由と、正しい争い方を一緒に見ていきましょう。

この判例の要点
  • 消防長の同意拒絶や同意の取消しそのものは、消防長を被告とする訴訟で直接争うことはできません
  • 最高裁は、行政機関相互間の行為が抗告訴訟の対象になるのは国民との直接の関係で権利義務を形成する場合に限られると判断しました
  • 消防長の同意は、建築主事等(当時は知事)に対する機関相互間の行為にとどまり、建築主に直接の効力を持ちません
  • 争うのであれば、建築主事等が下す確認拒否処分を対象に取消訴訟を起こす必要があります
  • その訴訟の中でなら、前提となった消防長の同意拒絶の違法を主張することができます

消防長の同意拒絶は確認拒否処分の取消訴訟の中でなら主張できることを示した図解

消防長の同意はどのような場面で裁判になったのか

建築主事務所の窓口と消防署の窓口の間で申請書類がやり取りされているイメージ
建築物を新築するとき、建築主事等の確認を受けるだけでは工事に着手できません。
その前段階に、消防長または消防署長の同意という関門があります。
事案 ・建築確認を行う前に、工事施工地を管轄する消防長又は消防署長の同意を得る必要がある(消防法第7条) ・ある建築計画で、消防長がいったん与えた同意を取り消した、又は同意を拒絶した ・建築主側は、この同意拒絶・同意取消しの取消し又は無効確認を求めて、消防長を被告に訴えを起こした
争われたのは「消防長のこの判断そのものを裁判で正面から争えるか」という一点です。
建築計画が同意を得られないまま止まってしまえば、建築主にとっては死活問題になります。
だからこそ「消防長を直接訴えて決着をつけたい」という発想が出てきます。
しかし結論から言うと、この訴え方には大きな落とし穴がありました。

同意を取り消されたら、建築の計画が全部止まってしまいますよね。

はい、だからこそ消防長を直接訴えたくなる方が多いんです。
でも、そこに大きな落とし穴があったんですよ。

消防長の同意・不同意は裁判で直接争える処分なのか

一つの訴状の束が消防署へ向かう道と特定行政庁へ向かう道の分かれ道に立っているイメージ
裁判で正面から争うには、その行為が「行政処分」と呼べるものでなければなりません。
消防長の同意・不同意・取消しが、この行政処分にあたるのかどうかが争点になりました。
争点 消防法第7条に基づく消防長の同意、その拒絶、又は同意の取消しは、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか。
ここで問われたのは訴訟の入口そのものです。
行政処分にあたらなければ、どれほど不満があっても取消訴訟という土俵に上がれません。
逆に行政処分にあたるなら、消防長を被告として正面から争える道が開けます。
最高裁は、この入口の判断基準を一般論として示しました。

行政処分にあたるかどうかで、争えるかが決まるんですね。

そのとおりです。
行政処分というキーワードがすべてのカギを握っています。

裁判所はどんな基準で行政処分にあたるかを判断したのか

天秤が行政機関どうしのやり取り書類と国民への通知書を釣り合わせているイメージ
最高裁判所は昭和34年1月29日、この争いに一つの物差しを示しました。
その後の行政訴訟でも広く使われている一般論です。
認められた判断 抗告訴訟の対象となる行政処分は、対国民との直接の関係において、その権利義務に関係あるものであることを必要とし、行政機関相互間における行為は、その行為が、国民に対する直接の関係において、その権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものでない限りは、抗告訴訟の対象とならない。(最高裁判所 昭和34年1月29日判決)
ポイントは国民との直接の関係という一点に尽きます。
行政機関どうしの内部的なやり取りは、それだけでは国民の権利義務を動かしません。
消防長の同意は、建築主事等に対して行われる機関相互間の行為にあたります。
建築主本人に向けて直接、何かを命じたり許したりする行為ではない、という位置づけです。

じゃあ消防長さんの同意って、あくまで役所どうしのやり取りなんですね。

はい、建築主のみなさんに直接向けられた処分ではない、というのが最高裁の見立てです。

なぜ消防長を訴える方法は退けられたのか

消防署へ向かう訴状の束に禁止マークが付き特定行政庁へ向かう訴状の束にチェックマークが付いているイメージ
建築主側は「同意拒絶で計画が止まる以上、消防長を直接訴えられるはずだ」と主張しました。
しかし最高裁はこの言い分を退けています。
退けられた言い分 消防長の同意拒絶又は同意の取消しは、確認処分を行う行政庁に対する行政機関相互間の行為にとどまり、国民に対し直接に権利義務を形成するものではないから、これを対象として消防長を被告とする訴えは不適法である。(最高裁判所 昭和34年1月29日判決)
ここで大事なのは、訴える相手を間違えると門前払いになるという一点です。
消防長を被告に選んだ時点で、訴えの中身を見てもらう前に却下されてしまいます。
一方でこの判断は「同意拒絶の違法を一切主張できない」という意味ではありません。
建築主事等が最終的に下す確認拒否処分を対象にすれば、その中で同意拒絶の違法を主張できる、という道筋も同時に示されています。

消防長さんを訴えても意味が無いってことですか。

意味が無いというより、訴える順番と相手が違うんです。
正しい相手はこのあとお話ししますね。

同意が得られないとき防火管理者は何を争えばよいのか

実務担当者が机で不服申立ての書類を作成しているイメージ
判例の考え方を踏まえると、現場で取るべき順序はシンプルです。
争う相手と、争うタイミングを間違えないようにしましょう。
答 消防長の同意拒絶・取消しそのものを対象に消防長を訴えることはできない。争う場合は、建築主事等(特定行政庁)が下す確認拒否処分を対象として取消訴訟等を起こし、その中で消防長の同意拒絶・取消しの違法を主張することになる。
まず消防長に同意しない理由を確認することが先決です。
計画の修正で解消できる同意拒絶も少なくないため、いきなり争う姿勢は得策ではありません。
それでも納得できない場合は、建築主事等から確認拒否処分が出るのを待ちます。
その処分に対する不服申立てや取消訴訟の中で、はじめて同意拒絶の違法を主張できる、という順序を覚えておきましょう。

消防長さんじゃなくて、確認拒否処分が出てから動くんですね。

そのとおりです。
争う順番を間違えなければ、ちゃんと土俵に立てますよ。

よくある質問

Q消防長が同意してくれないとき、まず何をすればよいですか?
Aまずは消防長に同意しない理由を確認し、計画の修正で解消できないか検討するのが先です。それでも納得できない場合は、確認拒否処分が出るのを待ってから争う準備を進めます。
Q消防長を被告として裁判を起こすことはできますか?
Aできません。最高裁の判例上、消防長の同意拒絶・取消しは行政機関相互間の行為にとどまり、国民に直接の権利義務を生じさせないため、消防長を被告とする訴えは不適法とされます。
Qでは、いったいどこで争えばよいのですか?
A建築主事等(特定行政庁)が出す確認拒否処分に対する取消訴訟の中で、その処分の違法事由の一つとして消防長の同意拒絶・取消しの違法を主張します。
Q同意が一度得られたのに、あとで取り消されることもあるのですか?
Aあります。同意の取消しも同意拒絶と同じ扱いを受けるため、取消しそのものを消防長相手に直接争うことはできず、その後に出る処分を対象に争うことになります。

まとめ

消防法第7条は、建築確認の前提として消防長・消防署長の同意を必要としています
消防長の同意拒絶・取消しそれ自体は、消防長を被告とする訴訟の対象にはなりません
最高裁判所は昭和34年1月29日、行政機関相互間の行為は国民との直接の関係を欠くと訴訟の対象外と判断しました
争うべき相手は消防長ではなく、確認拒否処分を出した建築主事等です
確認拒否処分の取消訴訟の中でなら、消防長の同意拒絶の違法を主張できます
訴える相手を間違えると、それだけで訴えが却下されてしまいます
同意が得られないときは、まず確認拒否処分の通知を受け取ってから争う準備を進めましょう

争い方の順番、すっきり分かりました。
ありがとうございます。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 最高裁判所 昭和34年1月29日判決(民集13巻1号32頁)
  • 消防法第7条

※本記事は確定した判決の内容を要約したものです。判決当時の法令に基づく判断であり、条文番号も当時のものです。その後の改正により現在の規定とは異なる場合があります。個別の事案についての法的な判断は弁護士に、消防法令の適用は所轄消防署にご確認ください。

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