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田園住居地域はなぜ農産物の乾燥施設でも建てられないものがあるのか|建築基準法別表第二(ち)項第二号・第三号の規制を解説

田園住居地域でも農産物の施設が建てられないことがあることを示すアイキャッチ

田園住居地域は、住宅だけでなく農業に関わる建物も一定の範囲で建てられる地域です。
建築基準法第48条第8項のただし書には、他の用途地域には無い「農業の利便」という言葉が明記されています。
ところが同じ農業関連の建物でも、別表第二(ち)項第二号は騒音を理由に一部を除外しています。
田園住居地域で農業施設を建てるときは、この除外規定を見落とすと計画が止まりかねません

田園住居地域の土地に農産物の乾燥施設を建てたいという相談があったのですが、そのまま建てられますか。

実は別表第二(ち)項第二号には、政令による除外規定があるんです。
まず条文で仕組みを確認しましょう。

農業の資材を貯蔵する倉庫を建てる場合も、同じ制限を受けるんですか。

いいえ、資材の貯蔵は別の号なので条件が違います。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 田園住居地域では、建築基準法第48条第8項により別表第二(ち)項に掲げる建築物以外は原則建てられません。
  • 同項のただし書は「農業の利便」を明記する点で、他の用途地域の規定と異なります
  • 二号は、農産物の生産・集荷・処理・貯蔵に供する建築物を原則として許容しています
  • ただし著しい騒音を発生する農産物処理施設は、国土交通大臣の指定により建築できません
  • 一方、三号の農業の生産資材の貯蔵に供する建築物には、この除外規定がありません。

田園住居地域で農産物の生産集荷貯蔵と生産資材の貯蔵は建てられるが著しい騒音を発生する施設は建てられないことを示す図解

田園住居地域はなぜ農業の利便を条文に書き込んだ用途地域なのか

農地に囲まれた住宅の列と密集した郊外の住宅街を対比したイラスト
田園住居地域は、農地とともにある暮らしを前提にした用途地域です。
まず、この地域を定める条文の書き方そのものを確認しましょう。
建築基準法第48条第8項 田園住居地域内においては、別表第二(ち)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が農業の利便及び田園住居地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
第48条の許可要件を通して読むと、田園住居地域だけがただし書に「農業の利便」を明記しています
他の用途地域の許可要件は「住居の環境を害するおそれがない」ことだけを条件にしていますが、田園住居地域は農業の利便という言葉をそこに並べて書いています。
これは、この地域が住居の環境保全と農業の継続の両方を目的にしていることを条文自体が示しているためです。
建てられる建物の範囲も、別表第二(ち)項という一つの号にまとめて列挙するポジティブリスト方式で決まっています。
次は、その(ち)項がどんな建物を挙げているかを確認しましょう。

農業の利便という言葉がただし書にあるのは、田園住居地域だけなんですね。

はい、条文上も特別扱いされている地域です。
次は建てられる建物の中身を見てみましょう。

田園住居地域内で建築できる建築物はどう決まっているのか

小さな住宅の隣に資材が積まれた農業用倉庫が並ぶイラスト
別表第二(ち)項は、六つの号で建てられる建物を列挙しています。
条文を確認します。
建築基準法別表第二(ち)項 田園住居地域内に建築することができる建築物 一 (い)項第一号から第九号までに掲げるもの 二 農産物の生産、集荷、処理又は貯蔵に供するもの(政令で定めるものを除く。) 三 農業の生産資材の貯蔵に供するもの 四 地域で生産された農産物の販売を主たる目的とする店舗その他の農業の利便を増進するために必要な店舗、飲食店その他これらに類する用途に供するもののうち政令で定めるもの(略) 五 前号に掲げるもののほか、店舗、飲食店その他これらに類する用途に供するもののうち政令で定めるもの(略) 六 前各号の建築物に附属するもの(政令で定めるものを除く。)
一号は第一種低層住居専用地域と同じ住宅・学校・診療所などを準用し、そこに農業関連の三つの号を上乗せする構造です
一号で(い)項第一号から第九号までの住宅・学校・診療所等がそのまま使え、そこへ二号(農産物の生産・集荷・処理・貯蔵)と三号(農業の生産資材の貯蔵)が加わります。
四号・五号は農産物直売所や小規模な店舗、六号は付属建物を定めており、田園住居地域ならではの号は二号から五号までに集中しています。
この記事では、特に条文の書き方が対照的な二号と三号に焦点を当てて確認します。
次は、二号がどこまでの建物を許容しているかを見ましょう。

住宅を建てる用途地域だと思っていましたが、農業関連の建物もこんなに列挙されているんですね。

そこが田園住居地域らしさです。
次は二号の中身を詳しく見てみましょう。

農産物の生産・集荷・処理・貯蔵に供する建築物とはどこまで含まれるのか

穀物サイロと積み荷用コンベアを持つ農業施設の隣に農産物の木箱が積まれた倉庫が並ぶイラスト
二号は、農業の一連の流れを一つの号でまとめて許容しています。
条文を改めて確認します。
建築基準法別表第二(ち)項 二 農産物の生産、集荷、処理又は貯蔵に供するもの(政令で定めるものを除く。)
二号は生産・集荷・処理・貯蔵という農業の四つの段階をまとめて一号で許容しています
条文はこの四つの言葉を並べているだけで、それぞれの具体的な範囲までは定めていません。
個別の建築物がどの段階に当たるかは、計画の内容ごとに特定行政庁が判断します。
そして「政令で定めるものを除く。」という一文が付いている点が、この号を読むうえでの注意点です。
次は、その政令による除外の中身を確認しましょう。

生産から貯蔵まで、幅広く一つの号でカバーされているんですね。

ただし政令の除外が付いています。
ここが今回の落とし穴です。

農産物処理施設でも建築できないものがあるのはなぜか

音波のマークが付いた大きな換気口を持つ農産物乾燥施設と隣接する静かな住宅のイラスト
二号の「政令で定めるものを除く。」の中身は、施行令が具体的に定めています。
条文を確認します。
建築基準法施行令第百三十条の九の三 法別表第二(ち)項第二号の規定により政令で定める建築物は、農産物の乾燥その他の農産物の処理に供する建築物のうち著しい騒音を発生するものとして国土交通大臣が指定するものとする。
二号で原則許容される農産物処理施設のうち、著しい騒音を発生するものとして国土交通大臣が指定したものだけは建てられません
除外の基準は建物の用途そのものではなく、著しい騒音を発生するかどうかという一点に絞られています。
指定するのは特定行政庁ではなく国土交通大臣である点も、条文どおりに押さえておく必要があります。
一方、三号の農業の生産資材の貯蔵に供する建築物には、この政令による除外規定そのものがありません。
次は、この違いを踏まえて明日から何を確認すればよいかを整理します。

同じ農業関連の建物でも、号によって除外規定の有無が違うんですね。

はい、そこが見落としやすい点です。
次は確認の手順を整理しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

製図机の図面とチェックリストを持つ役所窓口のイラスト
田園住居地域で農業関連の建物の相談を受けたときは、号の区別から確認を始めます。
確認すべき点を整理します。
  • 計画中の建物が、二号(農産物の生産・集荷・処理・貯蔵)と三号(農業の生産資材の貯蔵)のどちらに当たるかを整理する
  • 二号に当たる場合は、著しい騒音を発生する設備を伴う計画かどうかを確認する
  • 該当のおそれがあるときは、国土交通大臣の指定の有無を特定行政庁に確認する
  • 三号(資材の貯蔵)はこの除外規定が無いことも、あわせて相談者に伝える
号の区別と騒音の有無、この二点を初期段階で確認することが欠かせません
二号か三号かで、そもそも政令の除外規定を確認する必要があるかどうかが決まります。
二号に当たる計画では、著しい騒音を伴う設備がないかを早めに洗い出しておきましょう。
相談を受けたら、号の特定、騒音の有無、特定行政庁への確認という順で進めましょう。

号の区別と騒音の有無、まとめて確認します。

はい、その二点が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q田園住居地域で農業用の倉庫を建てるとき、必ず届出が必要ですか?
A建築確認申請は用途地域にかかわらず必要な手続きです。田園住居地域に特有の論点は、別表第二(ち)項のどの号に当たるかを整理し、政令の除外規定に当たらないかを確認する点にあります。
Q二号の「農産物の処理」にはどこまで含まれますか?
A条文は生産・集荷・処理・貯蔵という段階を並べているだけで、処理の具体的な範囲までは定めていません。個別の建築物が該当するかどうかは、特定行政庁への確認が必要です。
Q三号の「農業の生産資材」とは何を指しますか?
A条文には「農業の生産資材の貯蔵に供するもの」とだけ定められており、対象物の細目は書かれていません。二号のような政令の除外規定も設けられていません。
Q著しい騒音を発生する施設に当たるかどうかは誰が判断しますか?
A施行令第百三十条の九の三により、国土交通大臣が指定するものとされています。個別の施設が該当するかどうかは、計画段階で特定行政庁に確認するのが実務上の起点になります。

まとめ

田園住居地域では、建築基準法第48条第8項により別表第二(ち)項に掲げる建築物以外は原則建てられません。
同項のただし書は「農業の利便」を明記する点で、他の用途地域の規定と異なります
別表第二(ち)項一号は(い)項第一号から第九号までを準用し、そこに農業関連の号が加わります。
二号は農産物の生産・集荷・処理・貯蔵に供する建築物を原則として許容します
施行令第百三十条の九の三は、著しい騒音を発生する農産物処理施設を国土交通大臣の指定で除外します
三号の農業の生産資材の貯蔵に供する建築物には、この政令による除外規定がありません。
該当を判断できないときは、特定行政庁への確認が実務の起点になります

相談してくれた方には号の区別と騒音の有無を確認するよう伝えてみます!

特定行政庁への相談も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第48条第8項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法別表第二(ち)項第二号・第三号(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百三十条の九の三(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や国土交通大臣の指定の有無は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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