給油取扱所の固定給油設備のまわりには、ガソリン等の可燃性蒸気がたまりやすい範囲があります。
この範囲で使う電気設備は防爆構造にする必要がありますが、どの基準で範囲を決めるかで判断に迷う場面が少なくありません。
消防庁は令和3年3月30日付けの情報提供で、防爆ガイドラインと従来の個別通知のどちらでも評価してよいことを整理しました。
ガイドラインを使うか個別通知を使うかで、確認すべき数値そのものが変わります。
うちの給油取扱所、ポンプの近くに置く設備は防爆構造にしてくれと言われたんですが、どこまでの範囲か毎回悩むんですよね。
その範囲の決め方には、実は2つの基準があるんです。
令和3年の情報提供で整理されました。
えっ、2つも基準があるんですか。
今はどっちを使えばいいのか分からず困っています。
防爆ガイドラインが原則ですが、給油取扱所だけは従来の通知でも評価できます。
今日はその使い分けを整理しましょう。
- この通知は「危険物施設における防爆ガイドラインの活用等について(情報提供)」(令和3年3月30日付け事務連絡 消防庁危険物保安室)です
- 製造所等で危険区域を設定する際は、原則として防爆ガイドラインを活用して評価します
- 給油取扱所だけは、防爆ガイドラインのほか43号通知と77号通知による評価も認められています
- 固定給油設備の可燃性蒸気滞留範囲は、ベーパーバリアの型式によって基準点が変わります
- ノズルブーツやエアーセパレーターの排出部は、ベーパーバリアより低い位置に設ける必要があります
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目次
危険物施設の防爆基準はなぜあらためて周知されたのか

それをもっと使ってほしいという後押しが、令和3年に入って強まりました。
規制改革・行政改革ホットライン、いわゆる縦割り110番に寄せられた要望を受け、消防庁は防爆ガイドラインをもっと使いやすくする情報をまとめました。
背景には平成31年の消防危第84号でガイドラインが示されたあとも、現場での活用が十分に進んでいなかった事情があります。
そこで評価の事例を載せたホームページを新たに開設し、執務の参考にできるようにしたのがこの情報提供です。
つまりこの通知そのものは新しい基準を作るものではなく、既存のガイドラインの使い方を後押しするものです。
防爆ガイドラインって、平成31年の通知でもう出てたんですね。
はい、令和3年の情報提供はその使い方を後押しする位置づけです。
新しい基準ではありません。
対象になるのはどの危険物施設なのか

なかでも給油取扱所は、ほかの施設と少しちがう扱いになります。
製造所等では原則として防爆ガイドラインで評価することが求められます。
一方で給油取扱所は、防爆ガイドラインのほかに43号通知と77号通知という従来からの基準でも評価してよいとされています。
43号通知は固定給油設備まわりの可燃性蒸気流入防止構造の基準、77号通知は電気自動車用急速充電設備を設置する場合の基準です。
どちらを使うかは事業所の判断に委ねられているため、まず自社がどちらで評価してきたのかを確認することが最初の一歩になります。
うちはガソリンスタンドなんですが、防爆ガイドラインを使わないといけませんか。
いいえ、給油取扱所は43号通知と77号通知でも評価できます。
どちらでも差し支えありません。
給油取扱所はどちらの基準で危険区域を決めればよいのか

別紙にまとめられた考え方を見ていきましょう。
エアーギャップがない場合は、設備内部と端面から水平方向600ミリメートル、地上面から高さ600ミリメートルまでの範囲で端面から水平方向に6メートルまでが可燃性蒸気滞留範囲です。
ソリッド型のベーパーバリアを使う場合はバリアより下の部分、エア型を使う場合はエアーギャップ下部の間仕切りより25ミリメートル高い位置から下の部分が範囲になります。
つまり同じ「ベーパーバリアあり」でも、ソリッド型かエア型かで基準点そのものが変わります。
図面や設備の仕様書で型式を確認してから、範囲を測り直す必要があります。
うちの設備がソリッド型かエア型か、正直分かりません。
設備の仕様書か施工図面でベーパーバリアの型式を確認できます。
分からなければ施工業者に問い合わせましょう。
固定給油設備の範囲で見落としやすいのはどこか

ノズルブーツとエアーセパレーターの排出部の位置です。
ノズルブーツやエアーセパレーターの排出部がベーパーバリアより高い位置にあると、蒸気がバリアを越えて流出するおそれがあります。
新設のときは図面どおりでも、改修や部品交換の際に位置がずれてしまうことも見落としやすい点です。
また防爆ガイドラインと43号・77号通知のどちらを使うかを社内で決めないまま、担当者ごとに違う基準で判断してしまう例もあります。
評価に使った基準名を記録に残しておくと、次の点検や工事のときに迷わずに済みます。
ノズルブーツの位置なんて、今まで気にしたことなかったです。
見た目では分かりにくい箇所なので、点検の記録に位置を残しておくのがおすすめです。
次回の確認が楽になります。
明日からなにを確認すればよいのか

まずは自社の給油取扱所がどちらの基準で評価されているかの確認からです。
防爆ガイドラインを使っているなら、消防庁ホームページで公開されている評価の事例を参考図面と突き合わせます。
43号通知・77号通知を使っているなら、固定給油設備のベーパーバリアの型式と、ノズルブーツ・エアーセパレーターの排出部の位置を現地で確認します。
判断に迷う場合は、どちらの基準で評価したかを記録に残したうえで所轄消防署に相談すると確実です。
そのうえで危険区域内に非防爆機器を新たに置いていないかもあわせて点検しておくと安心です。
基準の選び方も見落としがちなポイントも、よく分かりました。
疑問が出てきたら遠慮なくご相談ください。
現地確認も承っています。
よくある質問
まとめ
基準の選び方まで分かって、次の点検が怖くなくなりました!
防爆構造や危険区域の現地調査もお任せください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「危険物施設における防爆ガイドラインの活用等について(情報提供)」(令和3年3月30日付け事務連絡 消防庁危険物保安室)
- 「プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン」(平成31年4月24日付け消防危第84号 消防庁危険物保安室長)
- 「可燃性蒸気流入防止構造等の基準について」(平成13年3月30日付け消防危第43号)
- 「給油取扱所に電気自動車用急速充電設備を設置する場合における技術上の基準の運用について」(平成24年3月16日付け消防危第77号)
- 危険物の規制に関する政令第9条第1項第17号・第24条第1項第13号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





