第一種低層住居専用地域は、住宅以外の建物を原則として建てられない、最も規制が厳しい用途地域です。
では、老人ホームや保育所のような福祉施設も、住宅と同じように建てられるのでしょうか。
建築基準法別表第二(い)項第六号は、老人ホーム・保育所・福祉ホームを面積の上限なく許容しています。
この号がなぜ無条件なのか、その範囲を正しく理解しておく必要があります
特別養護老人ホームを新しく建てたいという相談があったのですが、この地域でも建てられますか。
実は別表第二(い)項第六号に、その老人ホームの規定があるんです。
まず条文で仕組みを確認しましょう。
保育所や福祉ホームも同じ号に入っているんですか。
はい、三つの施設が同じ号にまとめられています。
次はその条文を見てみましょう。
- 第一種低層住居専用地域では、建築基準法第48条第1項により別表第二(い)項に掲げる建築物以外は原則建てられません。
- 別表第二(い)項第六号には「政令で定める」という限定句が付いておらず、面積の上限なく建てられます。
- 老人福祉法上「ホーム」を名乗るのは養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・軽費老人ホームの三類型で、有料老人ホームも別枠で対象になります。
- 児童福祉法第39条により、保育所は利用定員20人以上の施設と定義されています。
- 幼保連携型認定こども園は、児童福祉法上「保育所」からも別表第二上「学校」からも明示的に除外されています。
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目次
老人ホームや保育所はなぜ制限なく建てられるのか

まず六号の条文を確認します。
たとえば二号の兼用住宅には床面積50平方メートルの上限があり、七号の公衆浴場には個室付浴場業を除く除外規定があり、九号は施行令が定める五類型に限定され、十号には附属建築物の禁止類型があります。
これに対し六号は、老人ホーム・保育所・福祉ホームという三つの施設について、規模を問わず建築を認めています。
面積の上限がないという点は、この地域で施設整備を考える立場からは重要な出発点です。
次は「老人ホーム」という言葉が具体的に何を指すのかを確認します。
面積の上限がないなら、どんな規模の施設でも大丈夫なんですね。
はい、面積の上限なく建てられます。
ただし「老人ホーム」が指す範囲を確認しておきましょう。
老人ホームという言葉はどの施設を指すのか

まず条文を確認します。
老人デイサービスセンターや老人福祉センターは通いで利用する施設であり、入居を伴う「ホーム」とは性格が異なります。
さらに老人福祉法第29条は、老人福祉施設に該当しない有料老人ホームという別枠の制度を定めています。
有料老人ホームは、老人を入居させて入浴や食事などの介護等サービスを提供する施設で、都道府県への届出が必要です。
つまり六号の「老人ホーム」には、老人福祉法上の三類型に加えて、有料老人ホームも含まれると整理できます。
次は保育所と福祉ホームの条件を確認します。
老人ホームといっても種類がいろいろあるんですね。
はい、養護・特別養護・軽費の三種類と、有料老人ホームがあります。
次は保育所の条件を見てみましょう。
保育所と福祉ホームには法律上どんな条件があるのか

まず保育所の条文を確認します。
定員19人以下の小規模な保育施設は、この条文上の「保育所」には当たらず、家庭的保育事業など別の枠組みで扱われます。
福祉ホームについては、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第5条第29項に定義があります。
福祉ホームとは、住居を求めている障害者に対し、低額な料金で居室その他の設備を利用させ、日常生活に必要な便宜を供与する施設です。
保育所も福祉ホームも、施行令による面積制限を持たない点は六号の他の施設と共通しています。
次は、この号のあてはめで迷いやすい認定こども園の扱いを確認します。
定員が少ない小規模な保育施設は、この六号の対象にはならないんですか。
児童福祉法上の「保育所」の定義には当たりません。
次はさらに紛らわしい認定こども園を見てみましょう。
認定こども園はどちらに区分されるのか

条文の扱いを確認します。
さらに別表第二(を)項第五号でも「学校(幼保連携型認定こども園を除く。)」と定められており、こちらの「学校」からも除外されています。
つまり条文の文言上、幼保連携型認定こども園は「保育所」にも「学校」にもどちらにも当てはまらない、独自の位置づけを持つ施設です。
第一種低層住居専用地域での取り扱いを判断する際は、こうした条文上の除外規定を見落とさないことが重要です。
次は、こうした確認を実務でどう進めればよいかを整理します。
認定こども園は保育所として扱えばいいと思っていました。
条文上は「保育所」からも除外されています。
次は実務での確認手順を整理しましょう。
防火管理者は建てられることを知った先に何をすべきか

確認すべき点を整理します。
- 計画中の施設が、老人福祉法上の老人福祉施設・有料老人ホームのどれに当たるかを確認する
- 保育を行う施設であれば、利用定員が20人以上かどうかと、幼保連携型認定こども園に当たらないかを確認する
- 福祉ホームであれば、障害者総合支援法上の定義に合致するかを確認する
- 建築基準法上建てられる用途であることを確認したうえで、消防法上の防火対象物区分に応じた防火管理義務を確認する
老人ホームや保育所のように自力での避難が難しい利用者が入所する施設は、消防法施行令上も特に重い防火管理義務が課される用途区分に当たります。
第一種低層住居専用地域に建てられるかどうかの確認が終わった後こそ、防火管理者の選任や消防用設備の整備という本題が始まります。
施設の用途区分を早い段階で特定行政庁や所轄消防署に確認しておくことが、計画を円滑に進める近道です。
建てられることが分かっても、それで終わりではないんですね。
はい、防火管理の準備はここからが本題です。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
相談してくれた方には老人ホームや保育所の種類を確認するよう伝えてみます!
認定こども園などの個別判断も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第48条第1項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法別表第二(い)項第六号(e-Gov法令検索)
- 老人福祉法第五条の三・第29条(e-Gov法令検索)
- 児童福祉法第39条(e-Gov法令検索)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第29項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





