BLOG

マッサージ店やレンタルルームはなぜ(5)項イに区分されるのか|副次的な宿泊サービスの4条件と対象外になる用途を解説

夜の店舗の外観を写したマッサージ店やレンタルルームの令別表第一(5)項イ判定アイキャッチ画像

マッサージ店やレンタルルームのような、宿泊が本業ではない施設でも、実態次第で消防法上の旅館と同じ扱いになることがあります。
総務省消防庁は、こうした施設を令別表第一(5)項イに位置付けるかどうかの判断基準を通知で示しました。
背景にあるのは、宿泊という業態の看板ではなく、実際に不特定多数の人を継続して泊まらせているかどうかという実態です。
通知が示したのは主たる目的が宿泊でなくても対象になるという判定の物差しです。

うちのテナントに、深夜まで営業しているマッサージ店とレンタルルームが入っているんですが、消防法上は普通の物販店と同じ扱いでいいんでしょうか。

実は宿泊させている実態があれば、その施設は令別表第一(5)項イとして扱われることがあります。

うちは「宿泊」という看板を出していないので、対象にならないと思っていました。

看板の表示は関係ありません。
実際に泊まらせているかどうかで判定されます

この記事の結論
  • 宿泊を主たる目的としない施設でも、副次的に宿泊サービスを提供していれば令別表第一(5)項イの対象になります
  • 判定の目安になるのは不特定多数の継続宿泊・宿泊可能な設備・深夜/24時間営業・利用料金の徴収という4条件です
  • カラオケボックスや病院、蒸気浴場、神社仏閣等は副次的に宿泊させても原則(5)項イとして扱いません
  • ただし寺院の宿坊のように、宿泊部分が独立して不特定多数に使われている場合は例外的に(5)項イとなることがあります
  • 判定は名称ではなく、名称・営業形態・サービス内容を総合的に見て行います

宿泊できる設備・深夜営業・利用料金の徴収という条件がそろうと令別表第一(5)項イになることを示した図解

マッサージ店やレンタルルームはなぜ(5)項イとして扱われることになったのか

伝統的な旅館建物と、寝具が透けて見える小さな店舗建物を並べたイメージ
宿泊を専門としない施設が、なぜホテルや旅館と同じ扱いを受けるようになったのでしょうか。
背景には、宿泊以外を主目的とする業態の広がりがあります。
令別表第一の改正に伴う消防法令の運用について(平成14年8月2日消防予第227号・消防安第35号) 第2 令別表第一(5)項イに関する事項 最近の社会実態、経済活動の変化、娯楽の形態の変化、性風俗関連産業の変化等により、従来の宿泊を主たる目的としたホテル、旅館、宿泊所等の他に、マッサージ、レンタルルーム等で、主たる目的は宿泊以外のものであっても、副次的な目的として宿泊サービスを提供している施設については令別表第一(5)項イに掲げる防火対象物となることを明確化したものである。
看板の業種名ではなく、実際の宿泊機能が判断の出発点です
マッサージ店やレンタルルームは、もともと宿泊業として営業しているわけではありません。
しかし個室にベッドやリクライニングチェアを備え、深夜まで客を滞在させる形態が広がったことで、実質的に旅館と変わらない火災リスクを抱える施設が現れました。
消防庁はこの実態を踏まえ、業種の看板にかかわらず副次的な宿泊が確認できれば(5)項イとして扱う方針を明確にしました。
テナント側がまず確認すべきは、契約書上の業種名ではなく、実際に宿泊可能な設備を置いているかどうかです。

うちのテナントは「レンタルルーム」という名前で契約しているので、宿泊施設には当たらないと思っていました。

名称では判断できません。
宿泊可能な設備があるかどうかが最初の分かれ目です

どんな条件がそろえば(5)項イと判定されるのか

ベッドのアイコンと深夜の時計のアイコンと硬貨のアイコンを並べたイメージ
通知は、実際に宿泊が可能かどうかを立入検査等で確認する際の目安として、4つの条件を示しています。
どれか1つではなく、実態をあわせて見ていく考え方です。
令別表第一の改正に伴う消防法令の運用について(平成14年8月2日消防予第227号・消防安第35号) 令別表第一(5)項イ「その他これらに類するもの」に該当するか否かの判定については、実際に宿泊が可能であるかどうか立入検査等により状況を確認することになるが、次のアからエまでに掲げる条件等を勘案する必要があること。ア 不特定多数の者の宿泊が継続して行われていること。イ ベッド、長いす、リクライニングチェア、布団等の宿泊に用いることが可能な設備、器具等があること。ウ 深夜営業、24時間営業等により夜間も客が施設にいること。エ 施設利用に対して料金を徴収していること。
4条件のうち特定の1つで即断せず、実態を重ねて確認します
アの不特定多数の継続宿泊は、特定の知人だけを泊める場合と区別するためのものです。
イは宿泊できる設備そのものの有無、ウは深夜・24時間営業という営業時間帯、エは宿泊分の料金を実際に取っているかという条件です。
これらは判定のための着眼点であり、4つすべてがそろわなければならないという数値基準ではありません。
立入検査では、この4つの視点で施設の使われ方を具体的に確認することになります。

深夜まで営業していれば、それだけで(5)項イになるということですか。

いいえ、深夜営業は4条件のうちの1つです。
宿泊できる設備や料金徴収の実態もあわせて見ます

主たる目的が宿泊でなくても対象になるのはなぜか

施術台側と寝具側に分かれた一つの建物のイメージ
マッサージ店やレンタルルームの本来の目的は、施術やスペースの貸し出しであって宿泊ではありません。
それでも対象になるのは、火災危険の考え方が業種の看板ではなく利用実態に置かれているからです。
令別表第一の改正に伴う消防法令の運用について(平成14年8月2日消防予第227号・消防安第35号) 最近の社会実態、経済活動の変化、娯楽の形態の変化、性風俗関連産業の変化等により、従来の宿泊を主たる目的としたホテル、旅館、宿泊所等の他に、マッサージ、レンタルルーム等で、主たる目的は宿泊以外のものであっても、副次的な目的として宿泊サービスを提供している施設については令別表第一(5)項イに掲げる防火対象物となることを明確化したものである。
主目的が何であるかは判定の対象外です
旅館業の許可を得ているかどうかや、施設の本来の営業目的が施術や貸室であることは、(5)項イの該当性を左右しません。
判断されるのは、その建物の中で不特定多数の人が実際に夜を明かしているかどうかという一点です。
深夜に個室で眠ることを前提にした利用のされ方をしている以上、火災時の逃げ遅れリスクは旅館と変わらないという考え方です。
自分の施設が「宿泊業」を名乗っていないという理由だけで対象外と判断しないようにしてください。

うちは施術がメインで、宿泊は求められれば対応しているだけなんですが、それでも対象になるんでしょうか。

はい、対象になり得ます。
主目的ではなく、実際に泊まらせているかどうかで判断されます

病院やカラオケボックスはなぜ原則(5)項イにならないのか

病院とカラオケボックスと浴場の建物に禁止マークが付き、寺院の宿坊の建物にはチェックマークが付いたイメージ
副次的に宿泊させる可能性がある施設は、マッサージ店やレンタルルームだけではありません。
病院やカラオケボックスなど、他の用途にもともと該当する施設をどう扱うかが次の論点です。
令別表第一の改正に伴う消防法令の運用について(平成14年8月2日消防予第227号・消防安第35号) 令別表第一(2)項ニ(カラオケボックス等)、令別表第一(6)項イ(病院、診療所又は助産所)、同項ロ(老人福祉施設、有料老人ホーム等)、令別表第一(9)項イ(蒸気浴場、熱気浴場等)、令別表第一(10)項(神社、寺院、教会等)等は、副次的に宿泊の用に供する施設を有する場合もあるが、それぞれの用途としての火災危険性に着目して対応することで十分であり、原則として令別表第一(5)項イに掲げる防火対象物としては取り扱わないこと。ただし、寺院の宿坊等であって不特定多数の者が利用しており、かつ、当該用途部分の独立性が強く、専らその用に供されている場合は、令別表第一(5)項イとして取り扱うべき場合もあること
他の用途にすでに当てはまる施設は、原則としてそちらの用途で扱います
カラオケボックスや病院、老人福祉施設、蒸気浴場、神社仏閣等は、それぞれの用途ごとの防火安全対策がすでに用意されています。
これらの施設で副次的に宿泊が発生しても、用途としての火災危険性に着目した対応で足りるとされ、原則(5)項イには当てはめません。
ただし例外もあります。寺院の宿坊のように、宿泊部分が独立していて不特定多数の人が専らその用途で使っている場合は、(5)項イとして扱うべきことがあります。
自分の施設がこれらの用途に該当する場合でも、宿泊部分の独立性だけは個別に確認しておく必要があります。

うちは老人福祉施設なんですが、ショートステイで宿泊させている部分があります。
それも(5)項イになりますか。

原則なりません。
老人福祉施設としての防火対策で対応することになっています

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持ったクリップボードと虫眼鏡で確認されている建物のイメージ
ここまでの内容を踏まえると、確認すべきことはシンプルになります。
名称に頼らず、実態を一つずつ確かめるだけです。
令別表第一の改正に伴う消防法令の運用について(平成14年8月2日消防予第227号・消防安第35号) 第3 留意事項 本通知中で挙げた具体例の中の多くは、用語の定義がなく、世間一般に通用している俗称を用いているため、用途の判定に当たっては名称のみで判定することなく、名称、営業形態、サービスの内容等の要件を総合的に判断して用途を判定する必要があることに留意されたい。
明日からできるのは、名称に頼らない実態確認です
まずテナント一覧の業種名を、実際の営業形態と突き合わせてください。個室にベッドや布団があるか、深夜まで客が滞在しているか、料金徴収の仕組みはどうなっているかを確認します。
病院や老人福祉施設のように他の用途にすでに該当する施設では、宿泊部分の独立性を確認してください。
判断に迷う場合や、テナントの用途が変わったときは、名称を鵜呑みにせず所轄消防署へ相談してください。
この確認をテナント入れ替えのたびに繰り返す仕組みにしておくと、区分の見落としを防げます。

テナントが入れ替わるたびに、この4条件を確認する仕組みにしてみます。

それが一番確実な方法です。
名称ではなく実態で毎回確認してください

よくある質問

Qマッサージ店やレンタルルームは必ず(5)項イになりますか?
A必ずではありません。不特定多数の継続宿泊・宿泊可能な設備・深夜/24時間営業・利用料金の徴収という4条件を踏まえ、実際に宿泊が可能かどうかを立入検査等で確認したうえで判断されます。
Q旅館業などの届出をしていない施設は対象外になりますか?
Aなりません。(5)項イに該当するかどうかは実際の宿泊の実態で判断されるため、旅館業等の届出の有無は要件とされていません。
Q病院や老人福祉施設で副次的に宿泊させている場合も対象になりますか?
A原則として対象になりません。それぞれの用途としての火災危険性に着目した対応で足りるとされているためです。ただし宿坊のように宿泊部分が独立している場合は例外があります。
Q深夜営業さえしていれば(5)項イと判定されますか?
Aいいえ。深夜営業は判定の目安となる4条件のうちの1つにすぎず、宿泊できる設備や料金徴収の実態などとあわせて総合的に判断されます。

まとめ

宿泊を主たる目的としない施設でも、副次的に宿泊サービスを提供していれば令別表第一(5)項イの対象になります
判定の目安は不特定多数の継続宿泊・宿泊可能な設備・深夜/24時間営業・利用料金の徴収という4条件です
対象になるかどうかは看板の業種名ではなく、実際の利用実態で判断されます
カラオケボックス・病院・老人福祉施設・蒸気浴場・神社仏閣等は原則として(5)項イに含まれません
寺院の宿坊のように宿泊部分が独立している場合は例外的に対象となることがあります
旅館業等の届出の有無は(5)項イの該当性を左右しません
テナントの入れ替わりのたびに名称ではなく実態を確認する仕組みにしておきましょう

名称ではなく実態で確認すればいいと分かりました。
すっきりしました!

宿泊可能な設備・深夜営業・料金徴収などの実態で判断してください。
名称に頼らず確認すれば大きく外しません
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 令別表第一の改正に伴う消防法令の運用について(平成14年8月2日消防予第227号・消防安第35号/改正:平成20年8月消防予第199号、平成22年9月消防予第423号)第2 令別表第一(5)項イに関する事項
  • 消防法施行令別表第一(5)項イ・(2)項ニ・(6)項イ・(6)項ロ・(9)項イ・(10)項
  • 消防実務六法 通達編

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
夜の店舗の外観を写したマッサージ店やレンタルルームの令別表第一(5)項イ判定アイキャッチ画像
マッサージ店やレンタルルームのような、宿泊が本業ではない施設でも、実態次第で消防法上の旅館と同じ扱いになることがあります。 総務省消防庁は、こうした施設を令別表第一(5)項イに位置付けるかどうかの判断基準を通知で示しまし...