BLOG

粉末消火設備の加圧用ガスはなぜ窒素と二酸化炭素で必要量が変わるのか|クリーニングに使うガスの基準も解説

粉末消火設備の加圧用ガスと蓄圧用ガスの量の基準を解説する記事のアイキャッチ

粉末消火設備は、貯蔵容器の中の消火剤をガスの力で押し出して放射する仕組みです。
このガスにも、種類と必要な量を定めた条文があります。
窒素ガスを使うか二酸化炭素を使うかで、必要な量の求め方はまったく違います。
この記事では、消防法施行規則第二十一条から加圧用ガス・蓄圧用ガスに求められる種類と量の基準を解説します

うちの粉末消火設備、加圧用のボンベが窒素ガスなのか二酸化炭素なのか、正直気にしたことなかったです。

実はガスの種類によって必要な量の基準が違うんです。
窒素ガスと二酸化炭素、それぞれ見ていきましょう。

量まで細かく決まってるんですか。

はい。
さらにクリーニング用のガスにも独立した決まりがあります。

この記事の結論
  • 粉末消火設備の加圧用・蓄圧用ガスは窒素ガスまたは二酸化炭素のいずれかとする
  • 加圧用ガスに窒素ガスを使う場合は消火剤一キログラムにつき四十リットル以上が必要
  • 蓄圧用ガスに窒素ガスを使う場合は消火剤一キログラムにつき十リットルにクリーニングに必要な量を加えた量以上が必要
  • 二酸化炭素を使う場合は加圧用・蓄圧用とも消火剤一キログラムにつき二十グラムにクリーニングに必要な量を加えた量以上が必要
  • クリーニングに必要な量のガスは貯蔵容器等とは別の容器に貯蔵しなければならない

粉末消火設備の加圧用ガス・蓄圧用ガスの種類と量の基準、クリーニング用ガスは別容器に貯蔵する流れを示す図解

粉末消火設備の加圧用ガス・蓄圧用ガスにはなぜ量の基準まであるのか

窒素ガスと二酸化炭素の容器に接続された粉末消火設備の貯蔵タンクの図
粉末消火設備は、消火剤そのものだけでは放射できません。
消火剤を押し出すガスの種類と量にも、条文で決まりがあります。
六 加圧用又は蓄圧用ガスは、次のイからニまでに適合するものであること。イ 加圧用又は蓄圧用ガスは、窒素ガス又は二酸化炭素とすること。(消防法施行規則第二十一条第四項第六号)
ガスの種類は二つに絞られています
消火剤を貯蔵容器等から押し出すためのガスは、窒素ガスまたは二酸化炭素のいずれかでなければなりません。
このガスは加圧式では放出のたびに送り込む「加圧用ガス」、蓄圧式ではあらかじめ消火剤と一緒に容器に蓄えておく「蓄圧用ガス」と呼び分けられます。
方式が違えば、次に見る必要な量の求め方も変わってきます。
点検表に「加圧用ガス容器」とだけ書かれていても、その中身が窒素か二酸化炭素かで確認すべき数値が変わる点は見落とせません。

うちの設備、ガスの容器が2本並んでるんですけど、どっちがどっちの役目かよく分かってなかったです。

設備台帳に加圧式か蓄圧式か、ガスの種類も記載がありますので、まずそちらで確認しましょう。

加圧用ガスと蓄圧用ガスでは必要な量がどう違うのか

大きい加圧用ガス容器と小さい蓄圧用ガス容器を並べた図
同じ窒素ガスでも、加圧用と蓄圧用では求められる量がちがいます。
条文は方式ごとに別の基準を置いています。
ロ 加圧用ガスに窒素ガスを用いるものにあつては、消火剤一キログラムにつき温度三十五度で一気圧の状態に換算した体積が四十リットル以上、二酸化炭素を用いるものにあつては、消火剤一キログラムにつき二十グラムにクリーニングに必要な量を加えた量以上の量であること。ハ 蓄圧用ガスに窒素ガスを用いるものにあつては、消火剤一キログラムにつき温度三十五度で一気圧の状態に換算した体積が十リットルにクリーニングに必要な量を加えた量以上、二酸化炭素を用いるものにあつては消火剤一キログラムにつき二十グラムにクリーニングに必要な量を加えた量以上であること。(同項第六号ロ・ハ)
加圧用ガスに窒素ガスを使う場合は消火剤一キログラムにつき四十リットル以上が必要ですが、蓄圧用ガスなら十リットルにクリーニングに必要な量を加えた量以上で足ります
二酸化炭素を使う場合は、加圧用・蓄圧用のどちらでも消火剤一キログラムにつき二十グラムにクリーニングに必要な量を加えた量が基準です。
蓄圧式は消火剤とガスをあらかじめ同じ容器に高圧で詰めておく構造のため、放出のたびに別のガス容器から新たに送り込む加圧式より、窒素ガスの基準量が少なくて済むと考えられます(理由までは条文に書かれていません)。
点検記録で窒素ガスの量を確認するときは、加圧式と蓄圧式のどちらの基準に照らすかをまず確かめる必要があります。

蓄圧式のほうが少ない量でいいなんて、意外でした。

方式によって基準がまったく別ものになりますので、点検記録では必ず方式を確認しましょう。

クリーニングに必要な量はどのように扱われているのか

主要な加圧用ガス容器から離れた場所に置かれた小さな別容器の図
先ほどの基準には、どちらも「クリーニングに必要な量を加えた量」という言葉が出てきました。
このクリーニング用のガスには、もう一つ別の決まりがあります。
ニ クリーニングに必要な量のガスは、別容器に貯蔵すること。(消防法施行規則第二十一条第四項第六号ニ)
クリーニングに必要な量のガスは、加圧用・蓄圧用のガスとは別の容器に貯蔵しなければなりません
条文はこの量そのものの数値までは定めておらず、配管の長さや口径など設計条件によって必要な量が変わるためです。
実際の量は設計段階の計算書に根拠が残されており、現場では容器そのものが用意されているかどうかを確認する形になります。
配管にクリーニング装置(残った消火剤を処理する部品)を設ける決まりとはまた別に、そこに送り込むガスの保管容器という独立した基準がある点を押さえておきます。

クリーニング用のガスの量って、どこを見れば分かるんですか。

設計図書や計算書に記載がありますので、点検資格者に確認してもらう形になります。

クリーニング用の別容器を見落としていないか

大きな貯蔵タンクの陰に隠れた小さなガス容器の図
加圧用ガス容器や蓄圧用の貯蔵容器は目立つ大きさですが、クリーニング用の別容器はそうではありません。
点検の現場で見落とされやすいのは、むしろこの小さな容器のほうです。 クリーニング用の別容器は、加圧用・蓄圧用のガス容器に比べて小さく、点検表にも独立した項目として載っていないことがあります
条文上は「別容器に貯蔵すること」という独立した要件であり、これが無ければ基準を満たしません。
機械室に容器が2本しか見当たらない場合、クリーニング用の別容器そのものが設けられていない可能性を疑う必要があります。
設計図書に記載された容器の本数と、現場に実在する容器の本数を照らし合わせることが、見落としを防ぐ確実な方法です。

言われてみると、うちの機械室、容器が何本あるかちゃんと数えたことなかったです。

設計図書と現場の本数を照らし合わせるだけでも、見落としはかなり防げます。

加圧用ガスまわりの点検では明日からなにを確認すればよいのか

クリップボードを持ちガス容器の並びを確認する点検の図
ここまでの内容を、明日からの点検で確認できる形にまとめます。
一つずつ現場で照らし合わせてみてください。 まずガスの種類を確認します
窒素ガスか二酸化炭素か、設備台帳や容器の表示で確かめます。
次に加圧式か蓄圧式かを確認し、それぞれの基準(窒素なら四十リットルまたは十リットル、二酸化炭素なら二十グラム、いずれもクリーニング量を含む)に照らして設計図書の数値を確認します。
最後に、クリーニング用の別容器が実際に設けられているかを、容器の本数から確かめます。
この三つを順番に見ていけば、条文が求める範囲はひととおり網羅できます。

ガスの種類、方式、別容器の本数、この3つを見ればいいんですね。

はい。
詳しい数値の適合判断は、点検資格者にお任せください。

よくある質問

Q加圧用ガスと蓄圧用ガスは、同じ種類のガスを使えるのか?
Aはい。いずれも窒素ガスまたは二酸化炭素と定められており、使えるガスの種類自体は加圧式・蓄圧式で共通です。ただし必要な量の基準は方式ごとに異なります。
Q窒素ガスと二酸化炭素、どちらが多く使われているのか?
A条文はどちらも認めており、優劣は定めていません。理由までは書かれていませんが、必要な量が体積基準か重量基準かという違いが、設計時の判断材料の一つになります。
Qクリーニングに必要な量は、どこで確認できるのか?
A条文は別容器に貯蔵することしか定めておらず、具体的な数値は設計図書や計算書に記載されています。点検の際はその計算書とあわせて別容器の有無を確認します。
Qクリーニング用の別容器が見当たらない設備を見つけたらどうすればよいか?
A条文で設置が義務づけられているため、基準を満たしていない状態にあたる可能性があります。速やかに点検業者へ連絡し、設計図書との照合を依頼します。

まとめ

粉末消火設備の加圧用・蓄圧用ガスは窒素ガスまたは二酸化炭素のいずれかとする
加圧用ガスに窒素ガスを使う場合は消火剤一キログラムにつき四十リットル以上が必要
蓄圧用ガスに窒素ガスを使う場合は消火剤一キログラムにつき十リットルにクリーニングに必要な量を加えた量以上が必要
二酸化炭素を使う場合は加圧用・蓄圧用とも消火剤一キログラムにつき二十グラムにクリーニングに必要な量を加えた量以上が必要
クリーニングに必要な量のガスは貯蔵容器等とは別の容器に貯蔵しなければならない
クリーニング用の別容器は加圧用・蓄圧用のガス容器より小さく見落とされやすい
防火管理者はガスの種類・方式・別容器の本数を日常点検の中で確認する

加圧用ガスの種類と量、次の点検でしっかり確認してみます!

粉末消火設備の点検でご不明な点があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第二十一条第四項第六号(粉末消火設備の加圧用ガス・蓄圧用ガスに関する技術上の基準)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
粉末消火設備の加圧用ガスと蓄圧用ガスの量の基準を解説する記事のアイキャッチ
粉末消火設備は、貯蔵容器の中の消火剤をガスの力で押し出して放射する仕組みです。 このガスにも、種類と必要な量を定めた条文があります。 窒素ガスを使うか二酸化炭素を使うかで、必要な量の求め方はまったく違います。 この記事で...