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動力消防ポンプはなぜ9段階の級別に分かれるのか|規格放水性能とポンプ効率がD級を設置基準から外す仕組みを解説

動力消防ポンプの級別が9段階に分かれる理由を示すアイキャッチ画像

倉庫の隅に置かれた、小さな可搬式のポンプ。
これも大きな消防ポンプ自動車と同じ動力消防ポンプの仲間ですが、性能にはかなりの幅があります。
その違いを整理しているのが「級別」と呼ばれる区分で、A-1級からD-2級まで9段階に分かれています。
実はこの級別の違いが、そのポンプを消防用設備として使えるかどうかまで左右します

うちの倉庫に置いてある可搬ポンプも、動力消防ポンプの一種ですよね。
これって全部同じ基準で見ていいんでしょうか。

実は動力消防ポンプには級別という区分があります。
級によって放水の量も圧力も、設置基準に使えるかどうかも変わってきます。

級で使える使えないが決まるんですか。
知らずに小さいポンプを置いていたら心配になってきました。

はい、なかでも一番小さいD-1級とD-2級は設置基準そのものに使えません。
今日はその理由を条文から順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 動力消防ポンプは規格放水性能と高圧放水性能によってA-1級からD-2級まで9段階の級別に区分される
  • A-1級が規格放水量毎分2.8立方メートル以上で最上位、D-2級が毎分0.05立方メートル以上で最下位となる。
  • 消防法施行令第20条第3項が定める規格放水量の最低ライン(毎分0.2立方メートルまたは0.4立方メートル)にD-1級とD-2級は届かない
  • ポンプ効率の基準もD-1級・D-2級だけ25パーセント以上という別枠になっている。
  • 導入時は自主表示の有無と規格放水量の2点を確認すれば選定を誤らない

動力消防ポンプの規格放水性能と高圧放水性能とD級が設置基準の対象外になる仕組みを示した図解

動力消防ポンプの級別とは何を指すのか

消防ポンプ自動車と可搬消防ポンプを並べたイラスト
動力消防ポンプ設備は、消防ポンプ自動車と可搬消防ポンプの総称です。
その性能を統一のものさしで表すのが「級別」という区分です。
動力消防ポンプの技術上の規格を定める省令第2条
二 消防ポンプ自動車 ポンプが自動車の車台に固定された動力消防ポンプをいう。
三 可搬消防ポンプ ポンプが車両を使用しないで人力により搬送され、又は、人力により牽引される車両若しくは自動車の車台に取り外しができるように取り付けられて搬送される動力消防ポンプをいう。
六 ポンプの級別 第21条第1項に規定するポンプの規格放水性能及び高圧放水性能に応じた区分をいう。
級別とは性能で並べた序列です
消防ポンプ自動車はポンプが自動車の車台に固定されたもの、可搬消防ポンプは人が担いだり牽引したりして運ぶものと、まず運び方で分かれます。
そのうえで、どちらの型にも共通して使われるのが「級別」という物差しで、規格放水性能高圧放水性能という2つの数値で9段階に区分されます。
上から順にA-1級、A-2級、B-1級、B-2級、B-3級、C-1級、C-2級、D-1級、D-2級と並び、数字が大きいほど非力になります。
つまり同じ「動力消防ポンプ」という名前でも、中身の実力にはかなり幅があるということです。

同じ動力消防ポンプでも、級によってこんなに差があるんですね。
うちの倉庫のは一体どの級なんでしょう。

銘板や取扱説明書に級別が書いてあるはずです。
次の章で級ごとの具体的な数値を見てみましょう。

規格放水性能と高圧放水性能はどう分かれているのか

太いホースの強い放水と細いホースの弱い放水を並べたイラスト
級別を分けているのは規格放水性能と高圧放水性能という2種類の試験結果です。
数値は省令の別表にA-1級からD-2級まで一覧で示されています。
動力消防ポンプの技術上の規格を定める省令第21条第1項・別表
ポンプは、別表の上欄に掲げるポンプの級別に応じ、同表の中欄に掲げる規格放水性能及び同表の下欄に掲げる高圧放水性能をそれぞれ満たすものでなければならない

別表(抜粋)
A-1級:規格放水量2.8立方メートル毎分以上/高圧放水量2.0立方メートル毎分以上
B-1級:規格放水量1.5立方メートル毎分以上/高圧放水量0.9立方メートル毎分以上
D-1級:規格放水量0.13立方メートル毎分以上/高圧放水性能の定めなし
D-2級:規格放水量0.05立方メートル毎分以上/高圧放水性能の定めなし
数字は上に行くほど大きくなります
規格放水性能は放水静圧力0.85メガパスカルなどの条件で測る通常時の放水量、高圧放水性能はさらに圧力を上げた状態での放水量で、この2つを同時に満たす級だけがその級を名乗れます
最上位のA-1級は規格放水量が毎分2.8立方メートル以上ですが、最下位のD-2級は毎分0.05立方メートル以上と、実に56倍の開きがあります。
しかもD-1級とD-2級だけは高圧放水性能そのものが定められていません
高い圧力での放水を求められる場面では、そもそも土俵に乗らない級だということです。

数字だけ見るとD級はずいぶん非力なんですね。
それでも動力消防ポンプと呼んでいいんでしょうか。

呼び方自体は問題ありません。
ただし消防用設備として使えるかは別の話で、次の章で見る施行令の基準が関わってきます。

なぜD-1級とD-2級は設置基準に使えないのか

建物と赤い禁止マークが付いた小型可搬ポンプを並べたイラスト
動力消防ポンプ設備として建物に置くには、施行令が定める最低ラインを満たさなければなりません。
このラインが、ちょうどD級を締め出す形になっています。
消防法施行令第20条第3項
動力消防ポンプ設備は、法第21条の16の3第1項の技術上の規格として定められた放水量(次項において「規格放水量」という。)が第1項第1号に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものにあつては0.2立方メートル毎分以上、同項第2号に掲げる建築物に設置するものにあつては0.4立方メートル毎分以上であるものとする。
基準は毎分0.2立方メートルから始まります
屋内消火栓設備の設置対象物に置く場合は規格放水量毎分0.2立方メートル以上、屋外消火栓設備の設置対象物に置く場合は毎分0.4立方メートル以上が必要で、これを下回るポンプは動力消防ポンプ設備として認められません。
ところがD-1級の規格放水量は毎分0.13立方メートルD-2級は毎分0.05立方メートルで、どちらも最低ラインの0.2立方メートルに届きません。
D-1級とD-2級は、級別としては存在していても、消防用設備等としての動力消防ポンプ設備には最初から使えない性能帯だということです。
倉庫や小規模な現場で見かける小型の可搬ポンプがこの級に当たることもあるので、備え付けの消火設備として数えられるかは別途確認が必要です。

うちにある小さい可搬ポンプ、もしかしてD級かもしれません。
設備として数えていいのか不安になってきました。

銘板の規格放水量を確認すれば分かります。
0.2立方メートル毎分に届かなければ、動力消防ポンプ設備には数えられません。

ポンプ効率の基準もD級だけ違うのか

効率を示す円形ゲージとストップウォッチを並べたイラスト
級別による違いは放水量だけではありません。
ポンプそのものの効率にも、D級だけに認められた別枠があります。
動力消防ポンプの技術上の規格を定める省令第21条第3項
ポンプの効率は、消防ポンプ自動車のポンプにあつては65パーセント以上、可搬消防ポンプのポンプにあつては55パーセント以上(ポンプの級別がD-1級又はD-2級のポンプにあつては、25パーセント以上)とする。
効率の合格ラインもD級だけ下がります
ポンプ効率とは、実際に水を押し出す仕事量をポンプに与えた動力で割った値で、通常は消防ポンプ自動車で65パーセント以上、可搬消防ポンプで55パーセント以上が求められます。
ところがD-1級とD-2級だけは25パーセント以上で足りるとする特別な扱いになっており、放水性能だけでなく効率の物差しそのものが別枠です。
これは手抜きというより、非常用・補助用として小型軽量に振り切った設計ゆえの割り切りと理解するのが実態に近いところです。
逆に言えば、D級のポンプを効率の面で上位級と同じ基準で評価してはいけないということでもあります。

効率まで基準が違うとは知りませんでした。
D級は性能が低いというより、そもそも別枠の設計なんですね。

そのとおりです。
非常用・補助用として割り切って作られていると考えると分かりやすいと思います。

動力消防ポンプ設備を導入するとき何を確認すればよいのか

認証タグの付いたポンプとチェックリストのクリップボードを並べたイラスト
実際にポンプを選ぶときは、級別の数字だけでなく表示制度も見ておく必要があります。
動力消防ポンプは自主表示対象機械器具等に指定されているためです。
消防法第21条の16の3第1項
自主表示対象機械器具等の製造又は輸入を業とする者は、自主表示対象機械器具等について、その形状等が総務省令で定める自主表示対象機械器具等に係る技術上の規格に適合しているかどうかについて総務省令で定める方法により検査を行い、その形状等が当該技術上の規格に適合する場合には、総務省令で定めるところにより、当該技術上の規格に適合するものである旨の表示を付することができる
確認すべきは表示と規格放水量の2点です
動力消防ポンプは製造者や輸入者が自分で検査して表示を付ける「自主表示対象機械器具等」に指定されており、規格に適合したものにはその旨の表示が貼付されています。
導入時はまずこの表示の有無を確認し、そのうえで銘板に書かれた規格放水量が設置場所に必要な毎分0.2立方メートルまたは0.4立方メートルを満たしているかを照合します。
表示があっても級が低く規格放水量が足りなければ、その場所の動力消防ポンプ設備としては使えません。
逆に言えば、この2点さえ押さえておけば、級別の数字を丸暗記しなくても選定を間違えずに済みます。

表示と規格放水量の2つを見ればいいんですね。
今度うちの設備を見直すときに確認してみます。

ぜひ確認してみてください。
級が分かれば、いざというときにどこまで頼れるポンプかも見えてきます。

よくある質問

Q動力消防ポンプの級別はどこで確認できますか?
A多くの製品は本体の銘板や仕様書に級別と規格放水量が明記されています。銘板が読めない古い機種は、メーカーへ型式を照会する方法が確実です。
QD-1級やD-2級のポンプを消火活動に使ってはいけませんか?
A消火活動そのものでの使用は禁止されていません。問題になるのは消防法上の動力消防ポンプ設備として設置基準を満たせるかで、D級は規格放水量が届かないためその位置づけでは使えません。
Q規格放水量とホースの長さにはどんな関係がありますか?
A消防法施行令第20条第4項は、規格放水量に応じて水源までの水平距離とホースの長さの基準を分けています。規格放水量が大きい級ほど遠くの水源から放水できる関係になっています。
Q自主表示のマークが付いていれば、どの設置場所にも使えますか?
A自主表示は技術上の規格に適合していることの証明にすぎず、用途への適合は別問題です。設置場所が求める規格放水量を満たしているかは、表示とは別に確認する必要があります。

まとめ

動力消防ポンプは消防ポンプ自動車と可搬消防ポンプの総称で、性能を「級別」という区分で表す
級別はA-1級からD-2級までの9段階に分かれる
級は規格放水性能と高圧放水性能という2つの数値で決まる
最上位のA-1級は毎分2.8立方メートル、最下位のD-2級は毎分0.05立方メートルまで差がある
D-1級とD-2級は消防法施行令第20条第3項が定める最低ライン(毎分0.2または0.4立方メートル)に届かない
ポンプ効率の基準もD-1級・D-2級だけ25パーセント以上という別枠になっている
導入時は自主表示の有無規格放水量の2点を確認すれば選定を誤らない

級別のしくみがよく分かりました
うちの設備も一度チェックしてみます。

ぜひご確認ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第21条の16の3
  • 消防法施行令第20条
  • 動力消防ポンプの技術上の規格を定める省令(昭和61年自治省令第24号)第2条・第21条・別表

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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