非常用照明装置の定期検査で欠かせないのが、床面の照度を実測する検査です。
白熱灯なら1ルクス、蛍光灯やLEDランプなら2ルクス以上という基準は知られていても、廊下に外光が入る建物では単純に照度計を置くだけでは判定できません。
点灯時と消灯時の差を使う計算式や、検査結果の扱いが変わる境目、さらに測定する位置そのものにも細かいルールがあります。
この記事では、規定照度の根拠から外光がある場所での判定式、測定位置の選び方までを整理します。
うちのビル、廊下の窓から結構日差しが入るんです。
そういう場所は非常灯の照度、どうやって測るんですか。
点灯した状態と消灯した状態、両方の照度を測って差で判定する方法があります。
外光が強すぎるときは、夜間に測り直すこともありますよ。
測る場所もどこでもいいわけじゃないですよね。
はい、避難口や廊下の隅など選ぶべき位置が決まっています。
基準の中身から順番に見ていきましょう。
- 規定照度は白熱灯1ルクス、蛍光灯・LEDランプ2ルクス以上で、後者が高いのは周囲温度の上昇で全光束が減る特性を考慮したためです
- 測定は30分間点灯させた後の値で判定し、受光部を床面に水平に置いて測定者の影を入れないようにします
- 外光がある場所では点灯時と消灯時の照度差で判定する方法が認められています
- 照度差が消灯時照度の10パーセント未満かつ10ルクス未満のときは、夜間等に測定し直します
- 測定位置は避難口や廊下の中心線など避難上重要な地点を選ぶことになっており、居室の隅角部などは対象から外れます
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目次
蛍光灯やLEDランプの規定照度はなぜ白熱灯より高いのか

この基準は光源の種類によって数値が変わります。
蛍光灯やLEDランプは周囲の温度が上昇すると全光束が減少し、およそ140℃で半減する現象が知られています。
火災時は非常用照明の周囲温度が上がることが想定されるため、あらかじめ余裕を持った規定照度を設定してあるわけです。
判定は照度(測定値)が規定照度以上であることという式で確認し、白熱灯なら1ルクス、蛍光灯・LEDランプなら2ルクス以上あるかを見ます。
建築基準法施行令第126条の5第1項第1号ロが「著しく光度が低下しないもの」という構造方法を求めているのも、この温度特性への対策です。
数値が違うのは器具の性能差じゃなくて、熱の影響だったんですね。
そのとおりです。
だからこそ実際に測った値で確認することが欠かせません。
照度はどんな姿勢と手順で測定するのか

測り方を誤ると、器具は正常でも不合格の値が出てしまいます。
照度の測定はJIS C7612(照度測定方法)に準拠した物理的測定方法で行い、床面の水平面照度をルクス単位で読み取ります。
測定するのは常用の電源ではなく予備電源に切り替わった状態の値で、実際の停電時と同じ条件で確認する必要があります。
判定に使う照度は、非常用照明器具を30分間点灯させた後の値であり、点灯直後の高い値で判定してはいけません。
受光部を光源の真上ではなく測定したい床面に置き、指針や表示が安定するまで数十秒から1分程度待ってから読み取ります。
点けてすぐ測っちゃダメなんですね。
はい、30分点灯後の値が実際に避難時間を支える明るさだからです。
ここを省略すると数値が高く出すぎてしまいます。
外光がある場所ではどう補正して判定するのか

このような場所のために、照度差を使う補正方法が用意されています。
測定はまず一般照明を消し、ブラインドやカーテンで外光をできるだけ遮断するところから始めます。
その状態で非常用照明を点灯させた照度をAルクス、続けて消灯させた同一地点の照度をBルクスとして記録します。
外光そのものはAとBの両方に等しく含まれているため、A-Bを計算すれば非常用照明だけによる照度差が求められる仕組みです。
ただしこの方法が使えるのは、外光がある程度遮断できておおむね100ルクス以下に収まる居室等に限られます。
引き算するだけで外の光は関係なくなるんですね。
考え方としてはそうです。
ただし差の大きさによっては、この方法が使えない場合もあります。
照度差が小さいときはどう扱うのか

そこで差の大きさに応じて、扱いが3つに分かれています。
一つ目の区分は、照度差(A-B)が消灯時照度Bの10パーセント以上ある場合で、そのまま測定値として扱えます。
二つ目の区分は、10パーセントには届かなくても照度差そのものが10ルクス以上ある場合で、この場合も測定値として扱えます。
三つ目、つまりどちらの基準にも届かない場合だけが「改めて夜間等に測定する」という扱いになり、この日の数値では判定を確定できません。
つまり比率と絶対値の両方から見て、どちらか一方でも基準を満たせば測定値として認められる仕組みです。
その日のうちに結論を出せないこともあるんですか。
はい、その場合は夜間の再測定が必要になります。
無理に日中の数値で判定を確定させないことが大切です。
測定する場所と使う照度計はどう選べばよいのか

建物のどこでも同じように測ればよいわけではありません。
具体的には避難口となる出入口、照明器具間の中心線が壁と交わる点のうち照度が最も不利になる点、廊下など幅の狭い部分の中心線と壁の交点などが対象です。
一方で、居室の隅角部のうち1メートル四方以下の範囲や柱の陰になる部分は、避難に支障がなければ規定照度に届かなくても問題ないとされています。
測定器具は十分に補正された低照度測定用照度計を用い、測定範囲を0.1ルクスから10ルクス程度の低いレンジに合わせるのが望ましいとされます。
測定者自身の服装や位置が受光部に影を落とすと数値が狂うため、消防法の誘導灯がある場所ではその光の影響も避けて測定します。
部屋の隅っこは測らなくていいんですか。
避難に支障がない範囲であれば対象外です。
あくまで避難経路として使う場所を優先して測定します。
よくある質問
まとめ
計算式まであるとは思っていませんでした。
次の検査ではちゃんと測定位置から見直します!
外光がある場所の判定は迷いやすいところなので、ぜひ気をつけてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第126条の5(非常用の照明装置の構造)
- 昭和45年建設省告示第1830号(非常用の照明装置の構造方法を定める件)第4
- 平成20年国土交通省告示第285号 別表第三(非常用の照明装置の検査結果表)
- JIS C7612(照度測定方法)
※本記事は建築基準法・同施行令・関係告示に基づき、一般的な検査要領を解説したものです。個別の建物における具体的な判定は、必ず建築設備検査員による現地調査、または所轄の特定行政庁にご確認ください。




