病院やホテル、データセンターなど、停電時の電源を自前で備える施設が増えています。
常用発電設備やコージェネレーションシステムを屋外に置く場合、建物からの距離が古くから決まった数字で縛られてきました。
ですが安全装置が進化した今、その数字を一律に守らせる意味はどこにあるのでしょうか。
消防庁の通知は、条件を満たす機器に限って建物との距離を計算式で決め直せる特例を示しました。
病院の裏に据えるガスエンジンの発電機、建物にかなり近づけたいんですけど大丈夫ですか。
原則は建物から三メートル以上ですが、条件を満たせば距離を計算し直せる特例があります。
三メートルより近くに置けるということですか。
はい、機器の要件と温度の計算次第では可能です。
順番に見ていきましょう。
- 常用発電設備やガスコジェネレーションシステムを屋外に置くとき、原則は建物から三メートル以上の距離が必要です。
- 平成15年の消防庁通知は、条件を満たす機器に限って距離を計算し直せる特例を示しました。
- 対象は発電出力10キロワット以上300キロワット未満のガスエンジン式・ガスタービン式発電設備です。
- 特例が使えれば、三メートルの一律ルールではなく許容最高温度を超えない距離まで近づけることができます。
- 適用できるかどうかは所轄の消防長の判断によるため、事前の相談が欠かせません。
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目次
ガスコジェネ発電設備の特例はなぜ示されたのか

中でもガスエンジンやガスタービンを使うコージェネレーションシステムは、熱も電気も同時につくれることから屋外に据えられるケースが目立ちます。
条例(例)は内燃機関を原動力とする発電設備を、変電設備と同じ距離ルールの対象として扱ってきました。
これは古い機器を想定した一律の安全マージンで、機器の性能を反映した数字ではありません。
安全装置や外箱の構造が向上したことを受け、消防庁は条件を満たす機器に限って距離を計算し直せる道を示しました。
それが平成15年の消防安第114号通知です。
建物の近くに置きたいのに三メートルって結構つらいですね。
そうなんです。
なので機器の性能次第で距離を計算し直せる特例が用意されました。
どんな発電設備がこの特例の対象になるのか

まず機器そのものが決められた要件を満たしているかどうかが出発点になります。
出力は10キロワット以上300キロワット未満という範囲が決められています。
外箱は板厚1.6ミリメートル以上の鋼板製で、断熱材や防音材も難燃性のものに限られます。
燃料漏れや温度異常を自動的に検知して燃焼を止める安全装置も欠かせません。
これらを1つの機器でまとめて満たして初めて、特例の入り口に立てます。
出力の範囲まで決まっているんですね。
はい、10キロワット未満や300キロワット以上は別の基準で見ることになります。
距離はどうやって短くできるのか

かわりに使うのが、熱の伝わり方をもとにした距離の計算です。
安全装置が働く異常時を想定しても、近くの建物や可燃物の表面温度が許容最高温度を超えない距離まで近づけてよいとされています。
三メートルという固定値ではなく、機器の発熱と安全装置の性能から個別に距離を導き出す考え方です。
この計算にはメーカーが行った温度試験のデータが前提になります。
現場の感覚だけで距離を縮めることはできません。
数字が三メートルから温度の計算に変わるんですね。
ええ、ただし計算の根拠になる試験データが必要になります。
実務で見落としやすいのはどこか

見落としやすい落とし穴を確認しておきましょう。
要件は外箱・安全装置・出力範囲などがセットになっており、1つでも欠けると特例全体が使えなくなります。
また通知は「差し支えないと思料される」という執務の参考であって、自動的に適用される規定ではありません。
最終的に認めるかどうかは所轄の消防長の判断に委ねられています。
距離を計算する温度試験のデータも、メーカー資料として事前に用意しておく必要があります。
書類さえ揃えば自動で認められるわけじゃないんですね。
そうです。
事前に所轄の消防に相談しておくのが確実です。
明日から何を確認すればよいか

順番を守れば、特例が使えるかどうかを早い段階で見極められます。
次に、その機器の温度試験データをもとに、許容最高温度を超えない距離を計算した資料を用意します。
これらが揃ったら、設置前に所轄消防署へ相談し、特例を適用してよいか確認を受けます。
確認が取れないまま工事を進めると、あとから三メートルの原則に戻され、配置のやり直しになりかねません。
発電設備を検討し始めた時点で、早めに動き出すことが遠回りを防ぎます。
仕様書と試験データを揃えてから相談するのが早道なんですね。
そのとおりです、まず仕様書と試験データを並べるところから始めましょう。
よくある質問
まとめ
今度発電設備を入れるときは、まず仕様書を確認してみます!
距離の計算や書類の準備でお困りでしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「ガスエンジン式及びガスタービン式常用発電設備並びにガスコジェネレーションシステムに係る発電部分の取扱いについて」(平成15年7月7日消防安第114号消防庁防火安全室長、改正:平成17年3月消防安第55号)
- 火災予防条例(例)第17条の3・第12条第3項・第11条第2項(昭和36年11月22日自消甲予発第73号)
- 対象火気設備等及び対象火気器具等の離隔距離に関する基準(平成14年消防庁告示第1号)第2・第7
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





