非常コンセント設備は消防隊が消火活動で使う設備なので、非常電源にも消火設備と同じくらい厳しい基準があると思われがちです。
ところが消防法施行規則第31条の2第八号を読むと、条文はわずか一文で「屋内消火栓の非常電源の規定に準じて設けること」としか書いていません。
ガス漏れ火災警報設備や誘導灯の非常電源は同じ屋内消火栓の条文を借りながらも、蓄電池設備だけに絞り込んでいるのに対し、非常コンセント設備は絞り込みをしていません。
この記事では、その一文がどこまでの選択肢を残しているのかを整理します。
非常コンセント設備の非常電源も、蓄電池を用意しないといけないと思っていました。
実は非常コンセント設備だけ、条文の書き方が他と違うんです。
第十二条第一項第四号をまるごと準用しています。
まるごとというと、屋内消火栓と同じ4種類から選べるということですか。
そのとおりです。
今日はその条文の書き方の違いを見ていきましょう。
- 非常コンセント設備の非常電源(規則第31条の2第八号)は、第十二条第一項第四号の規定に「準じて」設けると定められている
- 条文を丸ごと準用しているので、非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備の4種類すべてから選べる
- ガス漏れ火災警報設備や誘導灯の非常電源は同じ条文を引用しながら蓄電池設備を中心とした一部の項目だけに絞り込んでいる
- 延べ面積千平方メートル以上の特定防火対象物では非常電源専用受電設備を選べないという制限も、非常コンセント設備にそのまま及ぶ
- 点検ではどの非常電源方式が採用されているかを確認し、建物の規模と照らし合わせる必要がある
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目次
非常コンセント設備の非常電源はなぜ第十二条を準用するのか

条文がどう非常電源を定めているのか、まず本体の一文を見てみましょう。
「準じて」という言葉は、第十二条第一項第四号の本文からイ・ロ・ハ・ニ・ホまで、条文全体を及ぼすという意味です。
号を分けて一部だけを指定する他の設備とは書きぶりが違います。
この違いが、選べる非常電源の種類にそのまま影響します。
次の章で第十二条第一項第四号の中身を確認します。
「準じて」と「例による」って、何が違うんでしょうか。
「準じて」は条文全体をそのまま持ち込む書き方です。
次の章で中身を見ていきましょう。
専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備はどう使い分けるのか

非常コンセント設備もこの本文をそのまま準用するので、同じ4種類が選択肢になります。
非常電源専用受電設備は電力会社からの引き込みを専用の配電盤で受ける方式で、自家発電設備や蓄電池設備のような設備投資が要りません。
ただし延べ面積千平方メートル以上の特定防火対象物では、停電が長引く事態に備えて自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備のいずれかに限られます。
非常コンセント設備もこの本文をそのまま準用するので、対象となる建物の規模はまったく同じ考え方で判定します。
どの方式が採用されているかは、非常コンセント盤の近くにある電源表示や配電盤の系統図で確認できます。
非常コンセント設備でも、建物の規模を見ないといけないんですね。
はい。
屋内消火栓と同じ延べ面積千平方メートルが基準になります。
他の消防用設備の非常電源とは何が違うのか

誘導灯を例に、非常コンセント設備との違いを比べてみます。
条文の本体で「直交変換装置を有しない蓄電池設備によるものとし」と先に方式を決め打ちしたうえで、第十二条第一項第四号のうち設置場所や配線に関する項目だけを部分的に借りています。
ガス漏れ火災警報設備も同じ構造で、蓄電池設備を基本にしたうえで自家発電設備や燃料電池設備を代替として認める書き方をしており、いずれも非常電源専用受電設備は選択肢にありません。
非常コンセント設備だけが本文ごと準じているので、結果として消火設備と同じ4種類から選べる唯一の警報・避難設備側の設備になっています。
設備ごとに条文の借り方が違う理由は、停電時にどれだけ長く確実に動かす必要があるかという要求水準の差にあります。
同じ条文を借りていても、中身がこんなに違うとは思いませんでした。
設備によって求められる信頼性が違うからです。
次は建物の規模による制限を詳しく見ましょう。
延べ面積千平方メートル以上の特定防火対象物ではどう変わるのか

非常コンセント設備を設置する建物の多くは、実はこの制限に該当します。
非常コンセント設備は11階建て以上の建物や地下街に設置義務が生じる設備なので、延べ面積千平方メートルという線引きは実務上ほとんどの現場で超えています。
つまり非常コンセント設備を備える建物の非常電源は、専用受電設備を除いた自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備のいずれかになっているのが通常です。
一方で延べ面積が小さい小規模特定用途複合防火対象物は例外として除かれるため、まれに専用受電設備のままの現場も残ります。
専用受電設備を見かけたら、まず建物が例外に当たるかどうかを確認してください。
非常コンセント設備がある建物は、たいてい千平方メートルを超えていそうですね。
そのとおりです。
例外に当たるかどうかは面積表で確認できます。
明日からなにを確認すればよいのか

第十二条第一項第八号の表示義務も、非常コンセント設備にそのまま及んでいます。
第十二条第一項第八号は延べ面積5万平方メートル以上の防火対象物や地下街など限られた大規模施設が対象で、該当すれば非常コンセント設備の状態も防災センター等で表示する必要があります。
点検ではまず配電盤や電源盤の系統図で非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備のどれが使われているかを確認し、建物の延べ面積と用途から千平方メートルの基準に照らします。
専用受電設備が使われているのに建物が千平方メートルを超えている場合は、設置時点の基準か増築による用途変更の可能性があるので、所轄消防署に確認してください。
共用する消火設備の非常電源と系統が同じかどうかも、あわせて図面で確認しておくと安心です。
系統図を確認するところから始めてみます。
図面と現地の表示を突き合わせれば迷いません。
不明な点があればいつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
非常コンセント設備だけ選べる非常電源の種類が違うとよく分かりました。
さっそく系統図を確認してみます。
その系統図の読み合わせから、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の2
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条の2の3
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第28条の3
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





