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セルフ給油ノズルはなぜ静電気を除去する構造にされたのか|蒸気回収装置による適用除外と吹きこぼれ対策を解説

セルフ給油ノズルはなぜ静電気を除去する構造なのかを示すアイキャッチ画像

セルフスタンドの給油ノズルは、客が自分で握って給油する道具です。
握るだけの単純な道具に見えますが、平成19年の規則改正で構造そのものに条件が付きました。
きっかけは静電気による火災と、給油口からのあふれ出しという2つの事故です。
なぜ通達だけでは足りず、ノズルの構造まで義務付けられたのかを整理します

うちのスタンド、セルフ式なんですけどノズルは今のままで大丈夫なんでしょうか。

平成19年の通達でセルフスタンドの給油ノズルの構造が見直されているので、まずは何が変わったのか確認しましょう。

静電気で火がつくという話は聞いたことがありますが、規則で対応が決まっているんですね。

はい、給油ノズルそのものの構造まで踏み込んだ基準です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成19年の通達で、セルフスタンドの給油ノズルの構造そのものが見直された
  • 義務の対象は顧客用固定給油設備に限られ、有人スタンドは対象外
  • 静電気を除去する構造と、給油口からのあふれ出しを防ぐ構造の2つが義務付けられた
  • 蒸気回収装置を設けた設備は静電気除去構造の適用が除外される
  • 施行前からあるノズルは平成19年11月30日まで従前の例でよい経過措置がある

セルフ給油ノズルに義務付けられた静電気を逃がす構造とあふれを防ぐ構造と蒸気回収装置の適用除外を示した図解

セルフスタンドの給油ノズルはなぜ構造まで見直されたのか

セルフスタンドで給油ノズルを握る利用者と静電気の除去構造
指導だけでは事故を防ぎきれなかったことが、規則改正の背景です。
まずは通達が説明する経緯を見てみましょう。
セルフスタンドにおける給油時の静電気対策及び燃料の吹きこぼれ対策については、これまで「顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所における静電気対策について」(平成13年8月13日付け消防危第95号)及び「顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所における給油時の安全対策について」(平成19年3月16日付け消防危第61号)を通知し、セルフスタンドの関係者への指導等を依頼してきたところであるが、今回、セルフスタンドにおける顧客に自ら自動車等に給油させるための固定給油設備(以下「顧客用固定給油設備」という。)の給油ノズルの技術基準に係る規則の規定を見直し、安全対策の徹底を図ることとしたものであること。(危険物の規制に関する規則等の一部改正について 平成19年9月21日 消防危第218号)
指導は2回重ねられていました
平成13年に静電気対策、平成19年3月に給油時の安全対策と、それぞれ通達で呼びかけてきましたが、指導だけでは徹底しきれなかったのでしょう。
そこで同じ年の9月、規則そのものを改正してノズルの構造に義務を課すという一段強い手段に踏み込みました。
セルフスタンドが増えるほど、客本人が静電気を帯びたまま給油する場面も増えるという実情が背景にあります。

今まで指導だけだったのに、なぜ規則にまでしたんでしょうか。

指導だけでは徹底しきれなかったので、平成19年に構造そのものを義務化したんです。

対象になるのはどの給油設備か

蒸気回収装置が付いた顧客用固定給油設備のノズル
義務の対象は限定されています。
それ以外の設備や、施行前からある設備がどう扱われるかも通達に書かれています。
なお、これらの安全対策は、顧客用固定給油設備について適用されるものであるが、その他の固定給油設備についても同様の対策を講ずることが望ましいものであること。(危険物の規制に関する規則等の一部改正について 平成19年9月21日 消防危第218号)
セルフスタンドにおける給油ノズルの技術基準について、改正省令の施行前に設置されている給油ノズルについては、平成19年11月30日までの間は、なお従前の例によることとしたこと(改正省令附則第2条関係)。
義務が及ぶのは顧客が自分で操作するノズルだけです
係員が給油する有人の固定給油設備には義務は及びませんが、通達は同様の対策が望ましいと付け加えています。
施行前からある顧客用固定給油設備のノズルにも、平成19年11月30日までの経過措置が用意されました。
自分のスタンドが顧客用固定給油設備に当たるかどうかを、まず確認するのが最初の一歩です。

うちは有人のスタンドなんですけど、対象外ということですか。

義務ではありませんが、同様の対策が望ましいとされているので参考にしてください。

規則は具体的に何を求めているのか

燃料タンク給油口からのあふれ出しを止める給油ノズルの構造
求められているのは2つの構造です。
条文と通達を突き合わせて確認します。
セルフスタンドにおける給油時の静電気火災を防止するため、引火点が40度未満の危険物を取り扱う給油ノズルについて、給油中に人体に蓄積された静電気を有効に除去することができる構造とすることを義務付けたこと。ただし、自動車等の燃料タンクに給油するときに放出される可燃性の蒸気を回収する装置を設けた顧客用固定給油設備については、適用が除外されるものであること(規則第28条の2の5第2号ハ関係)。セルフスタンドにおける吹きこぼれ事故時の被害を極小化するため、自動車等の燃料タンク給油口から危険物が噴出した場合において顧客に危険物が飛散しないための措置を講ずることを義務付けたこと(規則第28条の2の5第2号ニ関係)。(危険物の規制に関する規則等の一部改正について 平成19年9月21日 消防危第218号)
引火点が四十度未満の危険物を取り扱う給油ノズルは、給油時に人体に蓄積された静電気を有効に除去することができる構造のものとすること。ただし、可燃性の蒸気を回収する装置を設けた顧客用固定給油設備については、この限りでない。給油ノズルは、自動車等の燃料タンクが満量となったときに給油を自動的に停止する構造のものとするとともに、自動車等の燃料タンク給油口から危険物が噴出した場合において顧客に危険物が飛散しないための措置を講ずること。(危険物の規制に関する規則 第28条の2の5第2号ハ・ニ)
求められている構造は2つだけです
ひとつは給油中に人体へたまった静電気を逃がす構造、もうひとつは満タンになったときや外れたときに危険物が飛び散らない構造です。
どちらも令和の今も規則第28条の2の5第2号ハ・ニとしてそのまま生きている基準で、平成19年当時から条文の内容は変わっていません。
古い機種と新しい機種の違いを聞かれたら、この2点で説明できます。

具体的にはどんな構造にすればいいんでしょうか。

静電気を人体から逃がす構造と、給油口からあふれた危険物が飛び散らない構造の2つです。

実務で見落としやすいのはどこか

古いノズルと蒸気回収装置付きノズルを並べた改修工事の比較
条件の付け方を読み違えると、判断を誤りやすい部分です。
とくに改修工事の扱いは見落としがちです。
既に設置されているセルフスタンドにおける給油ノズルの改修について、その改修が1及び2の技術基準に適合するためのものに限られる場合は、消防法第11条第1項後段の規定による変更の許可を要しない軽微な工事として取り扱って差し支えのないものであること。(危険物の規制に関する規則等の一部改正について 平成19年9月21日 消防危第218号)
除外の条件は「装置がある」ことだけです
蒸気回収装置を設けていれば静電気除去構造は要りませんが、吹きこぼれを防ぐ構造まで免除されるわけではありません。
また、施行前のノズルを新しい基準に合わせて直すだけの改修であれば、消防法第11条第1項後段の変更許可は不要な軽微な工事として扱ってよいとされています。
「対策済みだから全部免除」「改修だから必ず許可申請」と決めつけず、条件を一つずつ確かめることが実務では重要です。

古いノズルは全部すぐ交換しないとだめですか。

施行前からあるものは経過措置があるので慌てなくて大丈夫です。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員がセルフスタンドの給油ノズルを確認する様子
まず何から手を付けるべきかを整理します。
施行日と経過措置の期限もあわせて確認しておきましょう。
第5 施行期日等 1 施行期日 平成19年10月1日から施行するものとしたこと(改正省令附則第1条、改正告示附則関係)。(危険物の規制に関する規則等の一部改正について 平成19年9月21日 消防危第218号)
確認は3つの手順で十分です
まず自分のスタンドが顧客用固定給油設備に当たるかを確認し、次に今のノズルに蒸気回収装置が付いているかを見ます。
最後に、交換や改修を予定しているなら軽微な工事として扱えるかを所轄消防署に確認してください。
平成19年10月1日の施行からすでに年数が経っていますが、当時からの機器がそのまま残っていないか、この機会に棚卸ししておくと安心です。

まずは何から確認すればいいですか。

自分のスタンドのノズルが顧客用固定給油設備に当たるか、所轄に聞いてみましょう。

よくある質問

Qセルフスタンド以外の給油取扱所にも静電気除去構造は義務なのか?
A義務付けられるのは顧客用固定給油設備だけです。係員が給油する有人スタンドの設備は、同様の対策が望ましいとされる努力目標にとどまります。
Q施行前からある給油ノズルはすぐに交換しないといけないのか?
A改正省令の施行前に設置されていたノズルは、平成19年11月30日までの間は従前の例でよいとする経過措置がありました。
Q蒸気回収装置を設ければ静電気除去構造は不要になるのか?
Aはい。燃料タンクへの給油時に放出される可燃性の蒸気を回収する装置を設けた顧客用固定給油設備は、静電気除去構造の適用が除外されます。
Q古いノズルを改修する工事は消防法上の許可が必要か?
A改修が技術基準に適合するためのものに限られる場合は、消防法第11条第1項後段の変更許可を要しない軽微な工事として扱ってよいとされています。

まとめ

セルフスタンドの給油ノズルは平成19年の規則改正で構造そのものが見直された
背景には、2回の通達指導だけでは防ぎきれなかった静電気火災と吹きこぼれ事故がある
義務の対象は、客が自分で給油する顧客用固定給油設備に限られる
引火点40度未満の危険物を扱うノズルは、静電気を除去できる構造が必要になった
蒸気回収装置を設ければ静電気除去構造の適用は除外される
施行前設置済みのノズルには平成19年11月30日までの経過措置があった
基準適合のためだけの改修は、軽微な工事として変更許可なしで行える

静電気の除去構造まですっきりわかりました!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「危険物の規制に関する規則等の一部改正について」(平成19年9月21日 消防危第218号 消防庁次長)
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第28条の2の5第2号
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第11条第1項

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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