不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備は、使う消火剤も設置される場所もまったく違います。
ところが配線の技術基準だけを見ると、消防法施行規則はひとつの条文にルールを集約し、他の条文がそこから借りる仕組みになっています。
しかもハロゲン化物消火設備と粉末消火設備は、基準を定めた条文を直接引用せず、不活性ガス消火設備の条文を経由してさらに借りる、いわば孫引きの形をとっています。
条文をたどる順番を間違えると、配線の技術基準にたどり着けません。
不活性ガス消火設備の配線は、いったいどの基準を見ればいいんでしょうか。
第十九条第五項第二十一号を見ます。
操作回路と音響警報装置回路、表示灯回路をまとめて第十二条第一項第五号の例によると定めています。
じゃあハロゲン化物消火設備や粉末消火設備も、同じように書いてあるんですか。
そこが面白いところで、両方とも自分の条文には書かず、不活性ガス消火設備の条文を指定して借りています。
- 不活性ガス消火設備は操作回路・音響警報装置回路・表示灯回路の三つをまとめて「操作回路等」と呼び、第十二条第一項第五号の規定の例により配線を設けます。
- ハロゲン化物消火設備と粉末消火設備は、自分の条文で配線基準を定めず、不活性ガス消火設備の条文を指定して間接的に借りています。
- 泡消火設備が号五を準用する回路は操作回路と表示灯回路の二つだけで、音響警報装置回路への言及はありません。
- 設備ごとに条文を読むだけでは、配線の技術基準にたどり着けません。
- 最終的にはどの設備も第十二条第一項第五号にたどり着くため、条文をさかのぼる順番を押さえておく必要があります。
▼

目次
不活性ガス消火設備の配線はなぜ三つの回路をまとめて呼ぶのか

消防法施行規則は、この三つをひとまとめにして呼ぶための言葉を条文の中に用意しています。
音響警報装置は、起動装置の作動と連動して防護区画の内外に自動で警報を鳴らす装置で、第十九条第五項第十七号に設置基準があります。
操作回路・音響警報装置回路・表示灯回路のいずれも、屋内消火栓(第十二条第一項第五号)と同じ耐熱電線・工事方法で設けなければなりません。
「操作回路等」という定義は、この条文だけでなく後述する二つの設備の条文にもそのまま登場します。
まずはこの三つがセットであることを覚えておくと、あとの条文が読みやすくなります。
操作回路とか音響警報装置とか、いろいろ出てきて混乱します。
「操作回路等」という一つの言葉で覚えてしまえば大丈夫です。
三つまとめて同じ基準だと考えてください。
ハロゲン化物消火設備と粉末消火設備はどうやって同じ基準を借りるのか

ところがこの二つの条文は、自分では配線の技術基準を書いていません。
第二十条(ハロゲン化物消火設備)と第二十一条(粉末消火設備)の条文をそれぞれ確認すると、配線について書かれているのは「操作回路等の配線は、第十九条第五項第二十号及び第二十一号の規定の例により設けること」という一文だけです。
つまりこの二つの設備は、「操作回路等」という言葉そのものを定義していません。不活性ガス消火設備の条文が定義した言葉と番号を、そのまま引き継いでいるだけです。
第十二条第一項第五号を直接引用するのではなく、いったん第十九条を経由してから五号にたどり着く、二段構えの準用になっています。
自分の設備の条文だけを読んで満足すると、この二段目の存在に気づけません。
ハロゲン化物消火設備の条文を見ても、配線の基準が書いてないんですが。
第十九条を指定しているだけなんです。
不活性ガス消火設備の条文まで戻って読む必要があります。
泡消火設備の配線はなぜ範囲が狭いのか

ただし借りる回路の種類は、不活性ガス消火設備より少なくなっています。
「第四号ロの灯火」とは、移動式の泡消火設備の格納箱の上部に設ける赤色の表示灯を指します。
不活性ガス消火設備が三つの回路をまとめて呼んだのに対し、泡消火設備は操作回路と表示灯回路の二つだけを号五につないでいます。
借りる回路の数が違うのは、設備ごとに警報の仕組みそのものが違うためで、条文の書き漏らしではありません。
同じ号五を準用していても、対象の範囲まで一致するとは限らない例です。
泡消火設備にも同じ三つの回路があると思っていました。
泡消火設備は二つだけです。
設備によって借りる範囲が変わることを覚えておいてください。
なぜ孫引きされる基準の原文を確認しないと読み違えるのか

最終的な中身は、いちばん奥の第十二条第一項第五号にしか書かれていません。
第十二条第一項第五号は「六百ボルト二種ビニル絶縁電線又はこれと同等以上の耐熱性を有する電線を使用すること」「金属管工事、可とう電線管工事、金属ダクト工事又はケーブル工事(不燃性のダクトに布設するものに限る。)により設けること」と定めています。
この一文こそが、五つの設備すべてに共通する配線の実体です。
点検や設計の場面で「自分の設備の条文」だけを見て終えると、この一文に一度も出会わないまま作業を終えてしまう危険があります。
条文番号をたどりきる習慣をつけておくことが、見落としを防ぐいちばんの方法です。
条文の番号だけ見て、中身まで確認していませんでした。
番号の先まで開かないと、耐熱電線の指定は出てきません。
最後の一文まで必ず開いてください。
現場では何を確認すればよいのか

最後にたどり着く条文はどれも同じです。
不活性ガス消火設備なら第十九条第五項第二十一号を見れば、その場で第十二条第一項第五号に行き着きます。
ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備は、まず第二十条または第二十一条を開き、そこに書かれた「第十九条第五項第二十号及び第二十一号」という指定を経由してから、同じ第十二条第一項第五号に行き着きます。
泡消火設備は第十八条第四項第七号から直接、ただし対象は操作回路と表示灯回路の二つだけです。
どの設備でも、条文の指定を最後まで開き切ることが確認の基本です。
設備ごとに手順は違っても、最後は同じ条文に行き着くんですね。
そのとおりです。
ここは条文番号を最後まで開くことだけ覚えておいてください。
よくある質問
まとめ
配線の基準がどこにあるか、やっと分かりました。
次の点検のときは条文までさかのぼって確認します。
配線の準用構造でお悩みでしたら、点検や図面確認からお手伝いします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第十二条第一項第五号(配線の基準)
- 消防法施行規則第十八条第四項第七号(泡消火設備の配線)
- 消防法施行規則第十九条第五項第十七号・第二十一号(不活性ガス消火設備の音響警報装置・操作回路等の配線)
- 消防法施行規則第二十条・第二十一条(ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の配線の準用)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。設備の設計・施工の詳細は所轄消防署や専門業者にご確認ください。





