BLOG

不活性ガス消火設備の貯蔵容器はなぜ加圧ガス容器の耐震義務を負わないのか|ハロゲン化物消火設備や粉末消火設備との対象範囲の違いを解説

不活性ガス消火設備の貯蔵容器はなぜ加圧ガス容器の耐震義務を負わないのかを表すアイキャッチ画像

消火設備の貯蔵容器は、地震で転倒したり配管が外れたりしてよいわけではありません。
消防法施行規則は屋内消火栓設備の条文で「貯水槽等には耐震措置を講じること」と定め、この一号を他の消火設備にも準用しています。
ところが不活性ガス消火設備と、ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備とでは、条文が名指しする対象の数が違います。
なぜ不活性ガス消火設備だけ「加圧ガス容器」が対象から外れているのかを、条文の言葉から整理します。

うちには不活性ガス消火設備が入ってるんですが、耐震って貯水槽の話じゃないんですか。

消防法施行規則第十九条第五項第二十四号を見ます。
貯蔵容器・配管・非常電源に耐震措置を講じると定めています。

貯水槽じゃなくて容器なんですね。
ハロゲン化物消火設備とは違うんですか。

そこが今回のポイントで、ハロゲン化物消火設備と粉末消火設備には「加圧ガス容器」も加わります

この記事の結論
  • 不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の耐震義務は、いずれも消防法施行規則第十二条第一項第九号を準用する形で定められている。
  • 不活性ガス消火設備(第十九条第五項第二十四号)の対象は貯蔵容器・配管・非常電源の三つに限られる。
  • ハロゲン化物消火設備と粉末消火設備は、貯蔵容器等に加えて加圧ガス容器も対象になる
  • 対象の違いは、消火剤を押し出す仕組みが起動用ガス容器加圧用ガス容器で役割が異なることに由来する。
  • 配管と非常電源は三つの設備すべてで必ず耐震措置の対象になる。

不活性ガス消火設備は貯蔵容器と配管と非常電源が対象になりハロゲン化物消火設備と粉末消火設備は加圧ガス容器も対象になる図解

貯蔵容器の耐震義務はどの条文が定めているのか

貯水槽と加圧送水装置と非常電源と配管の四つが震動に耐える措置を示す様子
不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の条文には、耐震措置そのものを書いた一文がありません。
かわりに、屋内消火栓設備のために書かれた条文を指定して基準を借りる形になっています。
消防法施行規則第十二条第一項第九号 貯水槽、加圧送水装置、非常電源、配管等(以下「貯水槽等」という。)には地震による震動等に耐えるための有効な措置を講じること。
この号は屋内消火栓設備のために書かれた条文ですが、条文の準用によって他の多くの消火設備にも及びます。
条文が挙げる要素は貯水槽・加圧送水装置・非常電源・配管の四つで、まとめて「貯水槽等」と呼ばれます。
スプリンクラー設備や屋外消火栓設備のように水を使う設備は、この四要素をほぼそのまま準用します。
これに対し、不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備のようにガスや粉末を詰めた容器を使う設備は、条文側で対象の言葉を書き換えています。
どこがどう書き換わっているかを、三つの設備の条文で順番に確認します。

もともとは屋内消火栓設備の条文なんですね。

そのとおりです。
設備ごとに書き換わっている部分が今回の本題です。

不活性ガス消火設備の耐震義務はどこまで及ぶのか

不活性ガス消火設備の貯蔵容器と非常電源と配管の三つが並ぶ様子
不活性ガス消火設備の条文を確認すると、貯水槽等という言葉そのものは出てきません。
かわりに、対象となる設備の名前が個別に書き直されています。
消防法施行規則第十九条第五項第二十四号 貯蔵容器、配管及び非常電源には、第十二条第一項第九号に規定する措置を講じること。
不活性ガス消火設備で耐震措置の対象になるのは、貯蔵容器・配管・非常電源の三つだけです。
屋内消火栓設備の「貯水槽」に当たる位置に「貯蔵容器」が入り、二酸化炭素や窒素などの消火剤を高圧で詰めた容器がその役割を担います。
屋内消火栓設備の加圧送水装置に相当する要素は、この条文には出てきません。
不活性ガス消火設備は消火剤自体が高圧で詰められており、屋内消火栓設備のようにポンプで水を押し上げる仕組みを持たないためです。
この時点で、貯水槽等の四要素のうち二つ(貯水槽→貯蔵容器・配管・非常電源)だけが形を変えて残っていることになります。

加圧送水装置みたいなポンプは無いってことですね。

はい。
貯蔵容器そのものが高圧なので、押し上げる装置が要らないんです。

ハロゲン化物消火設備と粉末消火設備はなぜ加圧ガス容器も対象になるのか

貯蔵容器と加圧ガス容器と非常電源と配管の四つが並ぶ様子
不活性ガス消火設備と同じ「ガスや粉末を詰めた容器を使う設備」でも、ハロゲン化物消火設備と粉末消火設備は対象の数が一つ多くなっています。
消防法施行規則第二十条第四項第十八号 貯蔵容器等、加圧ガス容器、配管及び非常電源には、第十二条第一項第九号に規定する措置を講じること。
ハロゲン化物消火設備は「貯蔵容器等」「加圧ガス容器」「配管」「非常電源」の四つが対象になります。
第二十一条第四項第二十号の粉末消火設備も、同じ「貯蔵容器等、加圧ガス容器、配管及び非常電源」という文言で同一の対象を定めています。
「貯蔵容器」という言葉にも意味があり、条文はこれを「貯蔵容器又は貯蔵タンク」と定義しています。
容器形式でもタンク形式でも消火剤を貯蔵できるハロゲン化物消火設備・粉末消火設備に対し、不活性ガス消火設備は「貯蔵容器」としか定義しておらず、タンク形式が想定されていません。
そして両設備に共通して増えているのが加圧ガス容器で、これが不活性ガス消火設備との一番の違いです。

加圧ガス容器って、消火剤の容器とは別物なんですか。

別の容器です。
窒素ガスを詰めて、消火剤を押し出す役目を持っています。

起動用ガス容器と加圧ガス容器はなぜ扱いが違うのか

小さな起動用ガス容器と大きな加圧ガス容器を並べて役割の違いを示す様子
不活性ガス消火設備にも「起動用ガス容器」という小さな容器があります。
これが加圧ガス容器と混同されがちですが、条文上の役割はまったく別です。
消防法施行規則第十九条第五項第十三号 起動用ガス容器は、次のイからニまでに定めるところによること。イ 全域放出方式の不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するものに限る。)には、起動用ガス容器を設けること。ロ 起動用ガス容器は、二十四・五メガパスカル以上の圧力に耐えるものであること。
起動用ガス容器は、貯蔵容器の弁を開けるための小さな引き金であって、消火剤そのものを押し出す容器ではありません。
不活性ガス消火設備の消火剤は貯蔵容器の中で自ら高圧を保っており、起動用ガス容器が作動信号で弁を開けると、その圧力だけで自動的に放射されます。
一方でハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の加圧式は、貯蔵容器等に入った消火剤自体には十分な圧力が無いため、別の加圧ガス容器から窒素ガスを送り込んで押し出す仕組みを取ります。
起動用ガス容器は「きっかけ」を作るだけの部品なので、第十二条第一項第九号の対象物リストには挙げられていません。
加圧ガス容器は放射そのものを担う圧力源だからこそ、耐震措置の対象に名指しされているのだと読み取れます。

同じ「ガス容器」でも、役割が全然違うんですね。

引き金役押し出す役かの違いです。
設備の図面で見分けてみてください。

点検や工事の現場では何を確認すればよいのか

点検員が消火設備の貯蔵容器のプレートを確認している様子
三つの設備の対象範囲がわかったところで、現場で実際に何を確認すればよいかを整理します。
  • まず設置されている消火設備が不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備のどれに当たるかを確認する。
  • ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備では、消火剤の貯蔵容器等だけでなく加圧ガス容器の固定状態も点検対象に加える
  • 配管と非常電源は三つの設備すべてに共通する対象なので、設備の種類にかかわらず必ず確認する。
設備の種類を取り違えると、耐震措置の対象を見落としたり、逆に不要な点検項目を増やしたりします。
特に不活性ガス消火設備とハロゲン化物消火設備・粉末消火設備は容器が並ぶ見た目がよく似ているため、銘板の記載で設備の種類そのものを確認するのが確実です。
加圧ガス容器の有無も銘板や系統図に記載されていることが多く、現場でまず確認すべき情報になります。
明日の点検では、貯蔵容器の並びだけでなく、そばに小さな別容器が無いかもあわせて見てみてください。

うちの設備の銘板、今度きちんと確認してみます。

それが一番早いです。
設備の種類の特定から始めてみてください。

よくある質問

Q不活性ガス消火設備の貯蔵容器そのものは、耐震措置の対象に入りますか?
Aはい、入ります。消防法施行規則第十九条第五項第二十四号は「貯蔵容器、配管及び非常電源」を対象に挙げており、貯蔵容器自体が耐震措置の対象です。対象から外れているのは加圧ガス容器であって、貯蔵容器ではありません。
Qハロゲン化物消火設備や粉末消火設備は、必ず加圧ガス容器を使いますか?
A条文は「蓄圧式」と「加圧式」の両方を想定しており、蓄圧式の貯蔵容器等はあらかじめ窒素ガスで加圧された状態で消火剤を保持します。加圧ガス容器が必要になるのは加圧式を選んだ場合で、耐震措置の対象範囲は設備の方式によって変わり得ます。
Q貯蔵容器等の「等」には、具体的に何が含まれますか?
Aハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の条文は「貯蔵容器又は貯蔵タンク」と定義しており、容器形式とタンク形式の両方を指します。不活性ガス消火設備の条文は「貯蔵容器」としか定義しておらず、タンク形式は想定されていません。
Q配管と非常電源の耐震措置は、三つの設備で基準が違いますか?
Aいずれも同じ消防法施行規則第十二条第一項第九号を根拠とするため、求められる考え方は共通です。配管と非常電源は不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備のすべてで対象になり、設備の種類による違いはありません。

まとめ

不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の耐震義務はいずれも消防法施行規則第十二条第一項第九号を準用する
不活性ガス消火設備の対象は貯蔵容器・配管・非常電源の三つに限られる。
ハロゲン化物消火設備と粉末消火設備は貯蔵容器等に加えて加圧ガス容器も対象になる。
起動用ガス容器は弁を開ける引き金にすぎず、消火剤を押し出す加圧ガス容器とは役割が違う。
「貯蔵容器等」は貯蔵容器または貯蔵タンクを指し、不活性ガス消火設備にはタンク形式が無い
配管と非常電源は三つの設備すべてに共通し、設備の種類にかかわらず対象になる。
点検ではまず設備の種類を銘板で確認し、加圧ガス容器の有無に応じて点検項目を分ける。

同じ耐震義務でも設備で対象が違うって、初めて知りました。
今度の点検で加圧ガス容器の有無から確認します。

消火設備の耐震点検でお悩みでしたら、確認からお手伝いします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第十二条第一項第九号(貯水槽等の耐震措置)
  • 消防法施行規則第十九条第五項第十三号・第二十四号(不活性ガス消火設備の起動用ガス容器・耐震措置)
  • 消防法施行規則第二十条第三項・第四項第十八号(ハロゲン化物消火設備の加圧用ガス容器・耐震措置)
  • 消防法施行規則第二十一条第四項第二十号(粉末消火設備の耐震措置)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。設備の設計・施工の詳細は所轄消防署や専門業者にご確認ください

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
不活性ガス消火設備の貯蔵容器はなぜ加圧ガス容器の耐震義務を負わないのかを表すアイキャッチ画像
消火設備の貯蔵容器は、地震で転倒したり配管が外れたりしてよいわけではありません。 消防法施行規則は屋内消火栓設備の条文で「貯水槽等には耐震措置を講じること」と定め、この一号を他の消火設備にも準用しています。 ところが不活...