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居住環境向上用途誘導地区と特定用途誘導地区はなぜ上限と下限で分かれるのか|建築基準法第六十条の二の二と第六十条の三の規制を解説

駅前の落ち着いた住宅街に建つ壁面を後退させた低層住宅と隣に建つ大規模な集合住宅の写真

用途地域や容積率の話をしていると、まれに「誘導地区」という言葉が出てきます。
高度利用地区や高層住居誘導地区とはまた別に、都市再生特別措置法に基づく用途誘導型の地区が二種類あるのをご存じでしょうか。
この二つは、片方が上限を定め、もう片方が下限を定めるという対照的な仕組みです。
居住環境向上用途誘導地区と特定用途誘導地区がそれぞれ何を制限するのかを解説します

都市計画課の資料に「特定用途誘導地区」と書いてあったのですが、高層住居誘導地区とは違うのでしょうか。

別物です、都市再生特別措置法に基づく地区がもう二種類あります。
制度の全体像から見ていきましょう。

種類がいくつもあると、自分の建物がどれに当たるのか分からなくなりそうです。

はい、上限を課す地区下限を課す地区で分かれています。
順番に制度の中身を確認しましょう。

この記事の結論
  • 居住環境向上用途誘導地区と特定用途誘導地区は、いずれも都市再生特別措置法に基づき都市計画法第八条第一項第四号の二が定める地域地区です
  • 居住環境向上用途誘導地区は建蔽率・壁面位置・高さの上限を都市計画が個別に定めます(建築基準法第六十条の二の二第一項〜第三項)。
  • 特定用途誘導地区は逆に、容積率と建築面積の最低限度という下限を都市計画が定めます(同法第六十条の三第一項)。
  • いずれの地区も、移転が容易な小規模建築物・公衆便所や交番等・特定行政庁が許可した学校や駅舎等は適用除外になります(両条の各号)。
  • 地方公共団体は国土交通大臣の承認を得て、条例で用途地域の用途制限(第四十八条第一項〜第十三項)を緩和できる仕組みも共通しています。

用途誘導地区は建蔽率と高さの上限を定める地区と容積率や建築面積の下限を定める地区に分かれることを示す図解

用途誘導地区とはどんな仕組みの地区なのか

都市計画の地図の上に色分けされた二種類の誘導地区と市街地の建物群が浮かぶイラスト
都市計画法には、用途地域や高度地区のほかにも様々な地域地区が定められています。
居住環境向上用途誘導地区と特定用途誘導地区は、そのなかでも都市再生特別措置法に基づいて指定される地区です。
都市計画法第八条第一項第四号の二 都市再生特別措置法(平成十四年法律第二十二号)第三十六条第一項の規定による都市再生特別地区、同法第八十九条の規定による居住調整地域、同法第九十四条の二第一項の規定による居住環境向上用途誘導地区又は同法第百九条第一項の規定による特定用途誘導地区
この二つの地区は、都市計画法ではなく都市再生特別措置法という別の法律の規定に基づいて指定されます
条文上は都市再生特別地区や居住調整地域と同じ号にまとめられており、都市再生特別措置法が指定の根拠を定め、建築基準法がそこでの建築規制の中身を定めるという役割分担になっています。
建築基準法側では第六十条の二の二が居住環境向上用途誘導地区を、第六十条の三が特定用途誘導地区を扱います。
次は、居住環境向上用途誘導地区がどんな数値を制限するのかを見ていきましょう。

都市計画法と建築基準法の両方にまたがる話なんですね。

はい、指定の根拠と建築規制の中身で法律が分かれています。
次は居住環境向上用途誘導地区の中身を見ていきましょう。

居住環境向上用途誘導地区は建蔽率と壁面の位置をどう制限するのか

敷地境界線から控えた壁面線に沿って建つ低層の建物と余白の庭のイラスト
居住環境向上用途誘導地区は、住宅地としての環境を保ちながら生活利便施設を誘導するための地区です。
ここでは建蔽率と壁面の位置の二つが都市計画で個別に定められます。
建築基準法第六十条の二の二第一項 居住環境向上用途誘導地区内においては、建築物の建蔽率は、居住環境向上用途誘導地区に関する都市計画において建築物の建蔽率の最高限度が定められたときは、当該最高限度以下でなければならない。(略)
建蔽率は都市計画が定めた最高限度以下に抑えなければなりません
これに加えて第二項により、壁面の位置の制限が定められた場合は、建築物の壁やこれに代わる柱をその位置より前に出して建てることができません。
地盤面より下の部分や、国土交通大臣が指定する歩廊の柱などは壁面の位置の制限から除かれます。
公衆便所や交番など公益上必要な建築物、特定行政庁が許可した学校や駅舎などは、建蔽率・壁面位置いずれの制限も適用除外です。
次は、高さの上限がどう扱われるのかを確認しましょう。

壁面の位置まで都市計画で決まってしまうんですね。

はい、ただし公益上必要な建物は除外されます。
次は高さの上限を見ていきましょう。

高さの上限や用途地域の制限緩和はどう扱われるのか

高さの上限線に届く低層の建物と条例の書類が並ぶイラスト
建蔽率と壁面の位置に続いて、居住環境向上用途誘導地区では高さの上限も定められます。
あわせて、用途地域の制限を条例で緩和できる仕組みも用意されています。
建築基準法第六十条の二の二第三項 居住環境向上用途誘導地区内においては、建築物の高さは、居住環境向上用途誘導地区に関する都市計画において建築物の高さの最高限度が定められたときは、当該最高限度以下でなければならない。(略)
高さも都市計画が定めた最高限度以下に抑える必要があります
特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可した建築物は、この高さの制限から除かれます。
さらに第四項では、地方公共団体が地区指定の目的のために必要と認めるときは、国土交通大臣の承認を得て条例で用途地域の用途制限(第四十八条第一項から第十三項まで)を緩和できます。
特定行政庁の許可には第五項により第四十四条第二項が準用され、建築審査会の同意が必要になります。
次は、上限ではなく下限を定める特定用途誘導地区を見ていきましょう。

用途規制を条例で緩められる地区なんですね。

はい、ここまでは上限を課す話でした。
次は逆に下限を課す地区を見ていきましょう。

特定用途誘導地区はなぜ上限ではなく下限を定めるのか

敷地に対して小さすぎる建物に禁止マークが付き隣の大きな建物に青チェックが付くイラスト
これまでの誘導地区はいずれも数値の上限を都市計画が定めるものでした。
特定用途誘導地区は、逆に下限を定めるという点で他の誘導地区と大きく異なります。
建築基準法第六十条の三第一項 特定用途誘導地区内においては、建築物の容積率及び建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、それぞれの建築面積)は、特定用途誘導地区に関する都市計画において建築物の容積率の最低限度及び建築物の建築面積の最低限度が定められたときは、それぞれ、これらの最低限度以上でなければならない。(略)
特定用途誘導地区では、容積率と建築面積の両方に最低限度が定められ、それを下回る建物は建てられません
拠点となる駅前などで狭小な建物が建ち並んでしまうと、都市機能を集約する目的が果たせないための仕組みです。
ただし、主要構造部が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などで階数二以下・地階なしの容易に移転や除却ができる建築物は適用除外です。
これに加えて、居住環境向上用途誘導地区と同じく公衆便所や交番等・特定行政庁が許可した学校や駅舎等も除外されます。
第二項では高さの最高限度も定められ、こちらは上限として扱われる点に注意してください。
次は、二つの地区に共通する実務上の確認点を整理します。

小さな建物を建てたくても、下限を満たさないと建てられないということですか。

はい、適用除外の建物を除いて原則そうなります。
次は実務での確認点を整理しましょう。

この二つの地区に関わるときは何を確認すればよいのか

窓口の担当者と来訪者が壁の地図を指しながら書類を確認しているイラスト
居住環境向上用途誘導地区と特定用途誘導地区は、どちらも個別の都市計画決定ごとに数値が異なります。
建物の計画や取得を検討する立場から、確認すべき点を整理します。
  • 計画地が居住環境向上用途誘導地区特定用途誘導地区のどちらに当たるか、または当たらないかを都市計画課で確認する
  • 居住環境向上用途誘導地区であれば、建蔽率・壁面位置・高さの三つの最高限度の数値を確認する
  • 特定用途誘導地区であれば、容積率・建築面積の最低限度と高さの最高限度の数値を確認する
  • 計画する建築物が各条の適用除外(小規模建築物・公益施設・学校や駅舎等)に当たるかを確認する
どちらの地区も、まず自分の敷地がその指定を受けているかを都市計画課で確認することが出発点です
指定を受けている場合は、上限を課す地区なのか下限を課す地区なのかで検討の方向がまったく変わります。
学校や駅舎など特定行政庁の許可が必要な建築物を計画する場合は、建築審査会の同意も必要になるため早めの相談が欠かせません。
条例による用途制限の緩和が適用されている地区かどうかも、あわせて確認しておくと計画の自由度が把握しやすくなります。
次はよくある質問を見ていきましょう。

まずは自分の敷地がどちらの地区に当たるか都市計画課で確認してみます。

上限か下限かを確認することが第一歩です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q居住環境向上用途誘導地区と特定用途誘導地区はどちらも都市再生特別措置法の地区ですか?
Aはい、いずれも都市再生特別措置法に基づき指定され、都市計画法第八条第一項第四号の二にまとめて位置づけられています。建築規制の中身は建築基準法第六十条の二の二と第六十条の三がそれぞれ定めます。
Q居住環境向上用途誘導地区ではどんな数値が制限されますか?
A建蔽率・壁面の位置・高さの三つに、都市計画が定めた最高限度が適用されます(建築基準法第六十条の二の二第一項〜第三項)。
Q特定用途誘導地区で建築面積の最低限度を満たせないときはどうなりますか?
A適用除外に当たらない限り建築できません。ただし容易に移転・除却できる小規模建築物や公益上必要な建築物は除外されます(建築基準法第六十条の三第一項各号)。
Q用途地域の制限を緩める条例はどちらの地区にもありますか?
Aはい、どちらの地区も国土交通大臣の承認を得て条例で用途制限を緩和できます(建築基準法第六十条の二の二第四項・第六十条の三第三項)。

まとめ

居住環境向上用途誘導地区と特定用途誘導地区は、都市再生特別措置法に基づき都市計画法第八条第一項第四号の二が定める地域地区です
居住環境向上用途誘導地区は建蔽率・壁面位置・高さの上限を都市計画が定めます(建築基準法第六十条の二の二第一項〜第三項)。
特定用途誘導地区は逆に、容積率と建築面積の最低限度という下限を都市計画が定めます(同法第六十条の三第一項)。
特定用途誘導地区にも高さの最高限度という上限があわせて定められます(同条第二項)。
いずれの地区も、移転が容易な小規模建築物・公衆便所や交番等・特定行政庁が許可した学校や駅舎等は適用除外になります(両条の各号)。
地方公共団体は国土交通大臣の承認を得て、条例で用途地域の用途制限を緩和できます(同法第六十条の二の二第四項・第六十条の三第三項)。
学校や駅舎などの許可には第四十四条第二項が準用され、建築審査会の同意が必要になります。

自分の敷地がどちらの誘導地区に当たるか、都市計画課で確認してみます!

用途規制や数値の確認を含む相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 都市計画法第八条第一項第四号の二(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法第六十条の二の二第一項〜第五項・第六十条の三第一項〜第四項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法第四十四条第二項・第四十八条第一項〜第十三項(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の都市計画の内容や規制の適用範囲は地区ごとに異なります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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