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高層住居誘導地区はなぜ容積率が上がり建蔽率は都市計画任せになるのか|建築基準法第五十七条の五の規制を解説

手すりのある高層住宅タワーが立ち並ぶ写真

建物の容積率や建蔽率は、通常なら用途地域ごとに決められた計算式で算出します。
けれども、住宅を増やしたい区域では、この計算式に手を加えて容積率を引き上げる仕組みがあります。
その代わり建蔽率のほうは、都市計画そのものが直接数字を定め直します。
この高層住居誘導地区という仕組みがどんな建物に何を求めるのかを解説します

駅の近くのタワーマンションは、周りより容積率が高い気がします。

それは高層住居誘導地区に指定された区域かもしれません。
住宅を増やす建物ほど容積率を引き上げられる仕組みです。

容積率が上がる代わりに何か制約もあるのでしょうか。

はい、建蔽率は都市計画が直接定め直します。
まず制度の中身から確認しましょう。

この記事の結論
  • 高層住居誘導地区に指定されると、住宅部分の床面積割合などの要件を満たす建物は容積率の上限を通常より引き上げられます(建築基準法第五十二条第一項第五号)。
  • 一方で建蔽率の上限は、通常の計算式ではなく都市計画そのものが直接定めます(建築基準法第五十七条の五第一項)。
  • 敷地が地区の内外にわたるときは、地区内にある部分だけが特別な建蔽率の限度とみなされて計算されます(同条第二項)。
  • 敷地面積の最低限度が都市計画で定められた場合は、用途地域における規定を読み替えて準用する仕組みがあります(同条第三項)。
  • 一定の要件のもとで、日影規制の対象区域の外にある建物とみなされる場合があります(同条第四項)。

高層住居誘導地区は住宅比率で容積率が上がり建蔽率は都市計画が直接指定することを示す図解

高層住居誘導地区とはどんな区域なのか

都市計画板が指定区域を示し隣に手すりのある高層住宅が並ぶイラスト
用途地域には、それぞれ容積率や建蔽率の上限を決める計算式があります。
高層住居誘導地区は、その計算式に手を加えて住宅を増やすための地域地区です。
都市計画法第九条第十七項 高層住居誘導地区は、住居と住居以外の用途とを適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域でこれらの地域に関する都市計画において建築基準法第五十二条第一項第二号に規定する建築物の容積率が十分の四十又は十分の五十と定められたものの内において、建築物の容積率の最高限度、建築物の建蔽率の最高限度及び建築物の敷地面積の最低限度を定める地区とする。
高層住居誘導地区は、住宅を増やす建物を誘導するために都市計画が指定する地域地区の一つです
指定できるのは、第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域・近隣商業地域・準工業地域のうち、容積率が十分の四十又は十分の五十と定められた区域に限られます。
指定されると、容積率の最高限度・建蔽率の最高限度・敷地面積の最低限度という三つの数字を都市計画があらためて定め直します。
目的は住居と住居以外の用途の適正な配分で、駅の近くなど利便性の高い場所に住宅を増やしたいときに使われる指定です。
次は、容積率がどう変わるのかを確認しましょう。

用途地域そのものが変わるわけではないのですね。

はい、住居系の用途地域に重ねて指定される地区です。
次は容積率がどう変わるのかを見ていきましょう。

建蔽率の上限はどう定められるのか

高い建物が敷地の一部だけを覆い残りが空き地のままになっているイラスト
高層住居誘導地区に指定された区域では、建蔽率の決め方そのものが変わります。
通常の用途地域の計算式ではなく、都市計画が数字を直接指定します。
建築基準法第五十七条の五第一項 高層住居誘導地区内においては、建築物の建蔽率は、高層住居誘導地区に関する都市計画において建築物の建蔽率の最高限度が定められたときは、当該最高限度以下でなければならない。
高層住居誘導地区の建蔽率は、都市計画が定めた最高限度がそのまま基準になります
通常の用途地域では、建蔽率は地域の区分ごとに定められた数値の範囲内で都市計画が選びます。
高層住居誘導地区では、この区分にとらわれず地区独自の数値を都市計画が直接指定できます。
容積率を引き上げる代わりに、建蔽率のほうは抑えて敷地に空地を確保させる狙いがあります。
次は、敷地が地区の境界をまたぐときの扱いを確認しましょう。

容積率が上がる分、建蔽率は抑えられるということですね。

そのとおりです、空地を確保させる狙いがあります。
次は敷地が境界をまたぐときの扱いを見ていきましょう。

敷地が地区の内外にわたるときはどう扱われるのか

点線の境界で分かれた敷地の片側に高い建物もう片側に低い建物が建ち手前に小さな区画の枠があるイラスト 高層住居誘導地区の指定は、既存の敷地の境界と一致するとは限りません。
敷地が地区の内外にまたがる場合の扱いと、容積率が上がる要件をあわせて確認します。
建築基準法第五十七条の五第二項 前項の場合において、建築物の敷地が高層住居誘導地区の内外にわたるときは、当該高層住居誘導地区に関する都市計画において定められた建築物の建蔽率の最高限度を、当該建築物の当該高層住居誘導地区内にある部分に係る第五十三条第一項の規定による建築物の建蔽率の限度とみなして、同条第二項の規定を適用する。
敷地が地区の内外にわたるときは、地区内にある部分だけに特別な建蔽率の限度が適用されます
地区外の部分には通常どおりの用途地域の建蔽率が適用され、面積であん分して敷地全体の限度を計算します。
容積率の引き上げにも要件があり、住宅の用途に供する部分の床面積が延べ面積の三分の二以上であることなどが条件です(建築基準法第五十二条第一項第五号)。
敷地面積の最低限度が都市計画で定められた区域では、用途地域における規定を読み替えて準用する仕組みもあります(同条第三項)。
次は、この地区で見落としやすい日影規制の扱いを確認しましょう。

境界で敷地が分かれると計算が複雑になりそうです。

地区内の部分だけを切り分けて計算する仕組みです。
次は日影規制の扱いを見ていきましょう。

なぜ日影規制の対象区域外とみなされることがあるのか

境界線の近くに建つ高い建物の影が線を越えて低い建物側に伸びているイラスト
高層住居誘導地区の建物は、日影規制との関係でも独自の扱いを受けます。
条文を確認すると、対象区域そのものから外れる仕組みになっています。
建築基準法第五十七条の五第四項 高層住居誘導地区内の建築物については、第五十六条の二第一項に規定する対象区域外にある建築物とみなして、同条の規定を適用する。この場合における同項の規定の適用については、同項中「対象区域内の土地」とあるのは、「対象区域(高層住居誘導地区を除く。)内の土地」とする。
高層住居誘導地区内の建物は、日影規制の対象区域の外にある建物とみなされます
日影規制は、地方公共団体が条例で指定した対象区域内の建物に一定時間以上の日影を生じさせないことを求める規定です。
高層住居誘導地区の建物はこの対象区域外とみなされるため、規制そのものが及ばない扱いになります。
ただし対象区域の外にある高さの高い建物が、区域内の土地に日影を生じさせる場合の規定は別途あります。
次は、実際の計画で確認すべき手順を整理しましょう。

日影規制そのものが関係なくなるということですか。

地区内の建物は対象区域外とみなされる扱いです。
次は計画段階で確認すべき手順を整理しましょう。

高層住居誘導地区に関わる計画では何を確認すればよいのか

窓口の担当者と住民が壁の地図を見ながら相談しているイラスト
高層住居誘導地区に関わる土地の取引や建築計画では、早い段階での確認が欠かせません。
確認すべき点を整理します。
  • 計画地が高層住居誘導地区に指定されているかを都市計画課の都市計画図で確認する
  • 指定されている場合、都市計画が定める容積率・建蔽率・敷地面積の最低限度の具体的な数字を確認する
  • 容積率の引き上げを受けたい場合は、住宅部分の床面積割合が要件を満たすかを確認する
  • 敷地が地区の内外にわたる場合は、地区内にある部分の面積を確認して建蔽率をあん分計算する
まず自分の計画地が高層住居誘導地区に指定されているかどうかを都市計画図で確認することが出発点です
指定されていれば、通常の用途地域の計算式は使えず、都市計画そのものが定めた数字に従うことになります。
容積率の引き上げを狙う計画では、住宅部分の床面積割合を早い段階で試算しておくことが欠かせません。
敷地が境界をまたぐ土地は、測量図をもとに地区内外の面積を確認しておくと手戻りが少なくなります。
次はよくある質問を見ていきましょう。

まずは都市計画図を確認してみます。

指定されていれば都市計画の数字がそのまま基準になります。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q高層住居誘導地区は用途地域と別に指定されるのですか?
A別ではありません。第一種住居地域など住宅系の用途地域に重ねて指定される地域地区の一つで、容積率の引き上げと建蔽率の直接指定を行います(都市計画法第八条第一項)。
Q容積率が上がるのはどんな建物ですか?
A住宅の用途に供する部分の床面積の合計が延べ面積の三分の二以上である建物です。敷地面積の最低限度が定められている区域では、その面積以上であることも条件になります(建築基準法第五十二条第一項第五号)。
Q敷地が地区の境界をまたぐときはどうなりますか?
A地区内にある部分だけについて、都市計画で定めた建蔽率の限度を敷地全体の限度とみなして計算します(建築基準法第五十七条の五第二項)。
Q日影規制の対象区域外とみなされるのはどんな場合ですか?
A高層住居誘導地区内の建物は、常に対象区域外にある建築物とみなして日影規制の規定が適用されます(建築基準法第五十七条の五第四項)。

まとめ

高層住居誘導地区は、住宅系の五つの用途地域等のうち容積率が十分の四十又は十分の五十と定められた区域内に指定されます(都市計画法第九条第十七項)。
住宅の用途に供する部分の床面積の合計が延べ面積の三分の二以上であるなどの要件を満たすと、容積率の上限を通常より引き上げられます(建築基準法第五十二条第一項第五号)。
建蔽率の上限は、高層住居誘導地区に関する都市計画で定められた数値がそのまま基準になります(建築基準法第五十七条の五第一項)。
敷地が地区の内外にわたる場合は、地区内の部分にだけ都市計画で定めた建蔽率の限度が適用されます(同条第二項)。
敷地面積の最低限度が定められた区域では、用途地域における規定を読み替えて準用する仕組みがあります(同条第三項)。
高層住居誘導地区内の建物は、日影規制の対象区域の外にある建築物とみなされます(同条第四項)。
容積率が上がる代わりに建蔽率は都市計画の指定次第になるため、計画段階での確認が欠かせません。

容積率を引き上げたいときは、まず住宅比率を確認します!

建蔽率や敷地の按分計算を含む相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第五十二条第一項第二号・第五号・第五十三条第一項・第五十三条の二・第五十七条の五第一項〜第四項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法第五十六条の二第一項・都市計画法第八条第一項・第九条第十七項(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や規定の適用範囲は個別の土地の状況によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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