屋内消火栓設備の水を送り出す加圧送水装置は、消防法施行規則第十二条第一項第七号が高架水槽・圧力水槽・ポンプの三方式を定めています。
スプリンクラー・水噴霧・泡消火・屋外消火栓・連結送水管はこの号七を条文の中で引用していますが、引用する項目は設備ごとに違います。
とくに落差や圧力、吐出量を求める計算式そのものは、五つの設備のどれも借りていません。
この記事では、号七のどこが共通の型でどこが設備ごとの数値なのかを、条文の引用差から読み解きます。
加圧送水装置の基準って、屋内消火栓もスプリンクラーも同じ条文を使っているんですよね。
条文は同じ号を引用していますが、実は借りている項目が設備ごとに違うんです。
今日はその違いを見ていきましょう。
同じ号を引用しているのに、何が違うんですか。
計算式の部分と、圧力の上限値と、起動装置です。
条文を並べて比べると、はっきり分かれています。
- 屋内消火栓設備の加圧送水装置(消防法施行規則第十二条第一項第七号)は、高架水槽・圧力水槽・ポンプの三方式を定めている
- スプリンクラー・水噴霧・泡消火・屋外消火栓・連結送水管はこの号七を引用しているが、落差や圧力・吐出量を求める計算式そのものはどの設備も借りていない
- 放水圧力の上限値は屋内消火栓が〇・七メガパスカル、スプリンクラーは一メガパスカル、屋外消火栓は〇・六メガパスカルと設備ごとに数値が異なる
- 起動装置の基準も、屋外消火栓は号七とほぼ同じ内容を書き直し、水噴霧は自動火災報知設備の感知器と連動する独自の方式を定めている
- 消防用ホースの摩擦損失計算基準(号七のチ)は、ホースを使う泡消火・屋外消火栓は引用し、ホースを使わないスプリンクラー・水噴霧は独自の項目に書き直している
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目次
屋内消火栓の加圧送水装置はどんな基準を定めているのか

まず、この号七がどんな構成になっているのかを見ます。
イ・ロ・ハがそれぞれ高架水槽・圧力水槽・ポンプという三方式の構造を定め、ニからチまではどの方式を選んでも共通してかかる規定です。
この八項目のうち、他の設備が実際に借りる範囲は設備ごとに違います。
次の章から、その借り方の違いを一つずつ見ていきます。
うちはポンプ方式ですけど、高架水槽や圧力水槽を使う建物もあるんですね。
はい、三方式のどれを選ぶかは建物の設備によります。
ただ、選んだあとの基準の借り方は方式に関係なく共通です。
加圧送水装置の計算式はなぜ設備ごとに書き直されているのか

この計算式の部分だけは、五つの設備のどれも引用していません。
号七のポンプの吐出量は屋内消火栓が百五十リットル毎分、屋外消火栓は四百リットル毎分ですが、スプリンクラーは条文を引用せず自分で九十リットル毎分(ヘッド一個あたり)という独自の式を持っています。
号七のうち、落差の計算式・圧力の計算式・吐出量・全揚程の計算式にあたる部分は、五つの設備のどれからも除かれています。
借りているのは水位計や排水管、圧力計、専用配管といった構造の要件だけで、必要な量を求める式は各設備が自分のヘッドやノズルの数に合わせて独自に定めています。
同じ号を引用していても、肝心の数字は別なんですね。
そうです。
号七が貸しているのは構造の型で、数値は設備ごとに自前で決めています。
放水圧力の上限はなぜ設備ごとに数値が違うのか

この上限値も、他の設備は号七の数値をそのまま借りていません。
号七のホが定める〇・七メガパスカルは、五つの設備のどれからも引用されていません。
屋外消火栓は自分の条文に〇・六メガパスカル、スプリンクラーは一メガパスカルという別の数値を独自に書いており、泡消火や水噴霧は固定の数値ではなく泡放出口やヘッドの性能範囲の上限に合わせる書き方になっています。
ホースを人が持って操作する屋内消火栓・屋外消火栓は反動力を抑える必要がある一方、天井のヘッドから自動的に放水するスプリンクラーや水噴霧はヘッド側の性能に合わせて上限が決まる、という違いが数値の差になって表れています。
〇・七メガパスカルって、屋内消火栓だけの数字だったんですね。
はい。
ホースを人が持つ設備と、天井のヘッドが自動で放水する設備とでは、上限の考え方自体が違うんです。
起動装置の基準はなぜ引用したり書き直したりするのか

この項目も、五つの設備で引用の仕方が分かれます。
屋外消火栓の起動装置は、号七のヘの屋内消火栓箱を屋外消火栓箱に置き換えただけの、ほぼ同一の条文です。それでも条文上は号七を引用せず、独立した項目として書かれています。
一方、水噴霧設備は屋内消火栓とは違う仕組みで、自動火災報知設備の感知器や閉鎖型スプリンクラーヘッドの作動と連動して自動的に起動する方式を主に定めています。
人の操作を前提にする設備と、感知器の作動を前提にする設備とで、起動装置の条文の作り方自体が変わっています。
屋外消火栓は、ほとんど同じ内容なのに引用しないんですか。
条文上はそうなっています。
内容が近くても、引用するかどうかは設備ごとの書き方次第なんです。
消防用ホースの摩擦損失計算基準はなぜ引用の有無が分かれるのか

このチを引用するかどうかも、ホースを使う設備かどうかで分かれます。
移動式のホースを持つ泡消火設備と屋外消火栓設備は、号七のチをそのまま引用し、消防用ホースと配管の両方の摩擦損失を計算します。
一方、天井のヘッドから放水し消防用ホースを持たないスプリンクラー設備と水噴霧消火設備は、チを引用せず「配管の摩擦損失計算」だけに絞った独自の項目を自分の条文に持っています。
借りる項目が号七の中身とほぼ同じでも、その設備にホースという要素があるかどうかで、引用するか書き直すかが分かれています。
ホースがあるかないかで、条文の作り方まで変わるんですね。
そうなんです。
号七は屋内消火栓の条文ですが、その中身は他の設備の設計にも影響しています。
よくある質問
まとめ
同じ号を引用しているように見えても、実際に借りている範囲はこんなに違うんですね。
点検のときも条文を見比べてみます。
その条文の読み合わせから、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第十二条第一項第七号(屋内消火栓設備の加圧送水装置)
- 消防法施行規則第十四条第一項第十一号(スプリンクラー設備に関する基準の細目)
- 消防法施行規則第十六条第三項(水噴霧消火設備に関する基準)
- 消防法施行規則第十八条第九号(泡消火設備に関する基準)
- 消防法施行規則第二十二条第十号(屋外消火栓設備に関する基準の細目)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。設備の設計・施工の詳細は所轄消防署や専門業者にご確認ください。





