立体駐車場で車両火災が起きたとき、被害を左右するのは消火設備の性能だけではありません。
令和5年8月、神奈川県厚木市の自走式駐車場で車両153台が焼損する火災が発生し、消防庁は同種施設の初動対応の徹底を全国の消防機関に求めました。
求められたのは新しい設備投資ではなく、受信機の確認体制や119番通報の要領、避難誘導といった、日々の訓練の質そのものでした。
この通知が示す4つの重点は、どの自走式駐車場にもそのまま当てはまります。
うちの駐車場は機械式なので、この話は関係ないですよね。
いいえ。
対象は自走式(ランプウェイ型)の駐車場で、機械式とは別の話です。
うちはまさに自走式の立体駐車場です。
中身が気になります。
厚木市の火災を受けて出された通知の中身を、順番に見ていきましょう。
- 令和5年12月26日、消防庁は消防予第696号・消防消第444号で自走式駐車場における防火対策の徹底等について通知しました。
- きっかけは令和5年8月20日の厚木市の火災で、車両153台と建屋1棟が焼損しました。
- 対象は機械式でない自走式(ランプウェイ型)の立体駐車場です。
- 消防計画への記載と、受信機確認・119番通報・初期消火・避難誘導の4項目を重点にした訓練が求められます。
- 防火管理者の選任状況や消防用設備の不備があれば速やかな是正指導が必要とされています。
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目次
自走式駐車場の火災はなぜ全国への注意喚起につながったのか

この火災をきっかけに、消防庁は全国の消防機関へ異例の通知を出しています。
それでも建屋1棟と車両153台という大きな物的被害が生じ、同じ10月には英国ルートン空港の自走式駐車場で駐車場の一部が崩落する海外事例も重なりました。
これを受け消防庁は「予防行政のあり方に関する検討会 消防用設備等の設置・維持のあり方に関する検討部会」で対応を検討し、早期覚知・迅速な通報・初期消火・適切な避難誘導・消防隊の迅速な有効注水が必要だと整理しました。
本通知は消防組織法第37条の規定に基づく助言として、令和5年12月26日に発出されています。
人的被害が無かったのに、なぜここまで大きな通知になったんですか。
車両153台という被害の規模と、海外の崩落事例が重なったためです。
どんな駐車場がこの通知の対象になるのか

この通知が対象にしているのは、車両が自分で運転して上下階へ移動する自走式のほうです。
用途としては消防法施行令別表第一(13)項イの「自動車車庫又は駐車場」に該当する施設が該当します。
今回の厚木市の火災も、車両が自ら走行して駐車する自走式の立体駐車場で起きています。
うちはパレット式なので対象外ということですね。
はい。
対象は自走式(ランプウェイ型)に限られます。
通知はどんな初動対応を求めているのか

既存の体制と訓練の中身を見直すことが中心です。
訓練の重点は受信機の監視体制・119番通報の要領・移動式粉末消火設備の位置と使い方・利用者の避難誘導と進入制止の4つです。
どれも新しい設備を導入する話ではなく、今ある設備と体制を確実に使えるようにすることに重点が置かれています。
移動式粉末消火設備の取扱い方法は消防庁が動画も公開しており、訓練の際に活用するよう案内されています。
訓練で何を確認すればいいのか、具体的に分かっていませんでした。
受信機・通報・消火設備・避難誘導の4つが重点です。
実務で見落としやすいのはどこか

既存の消防法令違反を洗い出す機会としても位置づけられています。
防火管理者が選任されているか、消防計画が実態に合っているか、消防用設備等に不備がないかを、この機会にあらためて確認するよう求められています。
「訓練さえやれば足りる」と捉えると、選任状況や設備の不備という土台の部分を見落とすおそれがあります。
消防隊側にも、車両火災での早期の包囲体形の構築や近隣応援の検討という留意事項が別に示されています。
訓練の話だと思っていたら、選任状況まで見られるんですね。
そうです。
是正指導とセットだと考えてください。
明日から何を確認すればよいのか

管理する駐車場を思い浮かべながら見ていきましょう。
次に炎感知器や防犯カメラなど、早期に火災を覚知できる手段が個別の駐車場に見合っているかを点検します。
そのうえで、防火管理者の選任状況・消防計画の記載内容・消防用設備の不備の有無をあらためて確認してください。
車両火災予防運動(毎年3月1日から3月7日まで)の機会に、利用者向けの広報啓発もあわせて検討するとよいでしょう。
今日中に、うちの駐車場が対象かどうか確認してみます。
はい。
その一手間が、被害の拡大を防ぎます。
よくある質問
まとめ
4項目の訓練内容を確認するところから始めればいいと分かりました。
今日中に見てみます。
受信機、通報、消火設備、避難誘導。
この4つを確認すれば、対象かどうか大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「自走式駐車場における防火対策の徹底等について」(令和5年12月26日付け消防予第696号・消防消第444号 消防庁予防課長・消防庁消防・救急課長)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条第1項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(13)項イ
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





