認知症高齢者グループホームや有床診療所のような施設で消防法施行令第十二条第一項第一号ハの対象になると、通常は準耐火構造の壁や床で居室を区画する工事が必要になります。
しかし延べ面積が小さく、居室が避難階だけに集まっている施設には、その区画工事そのものを省ける道が別に用意されています。
この道は、以前ご紹介した避難時間を計算するルートとは別物で、壁と天井の仕上げ材料さえ満たせば足りるという、もっと単純な条件になっています。
この記事では、区画工事を省ける仕上げだけのルートの対象と条件、見落としやすい点をわかりやすく解説します。
うちのグループホームは平屋で延べ面積も小さいんですが、それでも壁を準耐火構造にする工事が必要なんでしょうか。
条件次第では、仕上げ材料を満たすだけで工事を省ける場合があります。
まずは、なぜこの道が用意されているのかを見てみましょう。
避難時間を計算するルートとは、また別なんですね。
はい、条文の中身を順番に確認していきましょう。
- 消防法施行規則第十二条の二第二項の定めにより、延べ面積100平方メートル未満で居室が避難階のみに存する小規模施設には、通常の区画工事をしなくてもよい緩和ルートが用意されています。
- 対象になるのは、令別表第一(六)項イ(1)及び(2)並びにロに掲げる防火対象物のうち、延べ面積100平方メートル未満で居室が避難階のみのものに限られます。
- このルートを選べば、耐火性能を持つ壁や床で区画する工事をしなくても、壁と天井の仕上げ材料を廊下等は準不燃材料、その他の部分は難燃材料にするだけで足ります。
- すでに通常の区画工事を終えている施設や、避難時間の算定という別ルートを選んでいる施設は、この仕上げだけのルートを重ねて使うことはできません。
- 実際に要件を満たしているかどうかは、最終的に所轄消防署の確認が必要です。
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目次
なぜ延べ面積100平方メートル未満の施設に区画とは別の道が用意されているのか

まずは、区画という仕組みそのものが何のためにあるのかを確認しましょう。
ハ 別表第一(六)項ロ(二)、(四)及び(五)に掲げる防火対象物(介助がなければ避難できない者として総務省令で定める者を主として入所させるもの以外のものにあつては、延べ面積が二百七十五平方メートル以上のものに限る。)
「延焼を抑制する機能を備える構造」の中身を定めているのが消防法施行規則第十二条の二で、通常は準耐火構造や耐火構造の壁及び床で居室を区画する工事が求められます。
ところが同じ条文の中に、延べ面積が小さく居室が避難階だけに集まっている施設向けの、もっと簡単な代替ルートが用意されています。
次の章で、どんな施設が対象になるのかを見ていきましょう。
区画の工事にはそんな意味があったんですね。
はい。
次は、その代替ルートの対象になる条件を確認しましょう。
どんな施設のどんな条件でこの緩和ルートが使えるのか

条文が指定する三つの条件を確認しましょう。
一つ目は用途で、病院・有床診療所・グループホーム等(令別表第一(六)項イ(1)(2)並びにロ)であること。
二つ目は入居者や入所者が使う居室が避難階のみに存すること(上の階に居室があると対象外です)。
三つ目は延べ面積が100平方メートル未満であること。
さらに、すでに通常の区画工事を終えている施設はこのルートの対象から除かれます。次の章で、実際に満たすべき中身を見ていきましょう。
用途と面積だけじゃなくて、居室の階まで見られるんですね。
そのとおりです。
次は具体的に何を満たせばよいかを見ましょう。
具体的に何を満たせば区画をつくらなくてよいのか

実際に何を求めているのかを確認しましょう。
【同条第一項第一号ロ】壁及び天井(天井のない場合にあつては、屋根)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを地上に通ずる主たる廊下その他の通路にあつては準不燃材料で、その他の部分にあつては難燃材料でしたものであること。
地上に通ずる主たる廊下は準不燃材料、それ以外の部分は難燃材料で仕上げれば足り、通常の区画で必要になる準耐火構造の壁及び床、開口部面積の制限、防火戸の設置は要求されません。
号一が指すのは前項第一号「ロ」の本文だけで、ロのただし書きやイ・ハ・ニ・ホの各要件は含まれない点に注意してください。
壁を燃えにくい材料で仕上げるだけで済む、区画工事に比べてかなり軽い条件だとわかります。
仕上げ材料を変えるだけなら、うちでもすぐ確認できそうです。
ただし、見落としやすい落とし穴もあります。
次の章で確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

順番に確認しましょう。
同じ第二項の号二には、煙感知器の設置や避難時間の計算を条件にする別の道があり、対象面積の考え方や求められる設備が仕上げのルートとはまったく異なります。
号一の仕上げルートと号二の避難時間ルートは、いずれか一方しか使えません。
二つ目は、条文の「区画を有するものを除く」という一文で、すでに通常の区画工事を終えている施設はこの緩和ルートに切り替えることができない点です。
避難時間のルートと混同したら、要件がまったく違ってきそうですね。
そのとおりです。
最後に、明日から確認すべきことをまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

図面を用意してから相談すると話が早くなります。
- 自施設が令別表第一(六)項イ(1)(2)並びにロのいずれに該当するか、用途区分を確認する
- 入居者等の利用に供する居室がすべて避難階に存するか、平面図で確認する
- 延べ面積が100平方メートル未満かどうか、実測または設計図書で確認する
- すでに準耐火構造等の区画工事を終えていないか確認する(終えていれば対象外)
計画は所轄消防署への相談を経てから進め、避難時間の算定ルートと比べてどちらが実情に合うかもあわせて確認すると判断がしやすくなります。
今度、消防署に図面を持っていって相談してみます。
それがよいと思います。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
うちの施設が対象になるかどうか、図面を見ながらもう一度確認してみます。
それがよいと思います。
その際は図面もご用意のうえ、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第十二条第一項第一号
- 消防法施行規則第十二条の二第一項第一号・第二項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





