病院や診療所のスプリンクラー設備は、延べ面積に関係なく設置しなければならない代表的な設備だと言われます。
しかし実際には、建物の造り次第でその義務そのものが外れることがあります。
消防法施行令は、面積を問わない原則とは別に、区画の強さで判断する例外を用意しています。
条文をたどると、「延焼を抑制する構造」という言葉が指す具体的な中身が見えてきます。
うちは有床の診療所なので、面積に関係なくスプリンクラーが要りますよね。
原則はそのとおりです。
ただし例外の条件もあります。
例外というと、どんな条件なんでしょうか。
建物の区画の造りです。
順番に見ていきましょう。
- 病院や診療所((6)項イ(1)(2)・ロ)のスプリンクラー設備は原則として延べ面積を問わず設置義務が生じます
- ただし建物が火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造を満たす区画になっていれば、その部分は義務から除外されます
- 除外の条件は延べ面積(基準面積)1,000平方メートルを境に変わり、未満なら準耐火構造、以上なら耐火構造の区画などが求められます
- 除外は区画された部分ごとに判定されるため、条件を満たさない部分にはスプリンクラー設備が必要です
- 延べ面積100平方メートル未満の小規模な施設には、区画とは別の緩和ルートも用意されています
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目次
病院や診療所のスプリンクラーはなぜ面積を問わず必要になるのか

しかし病院や診療所には、規模を問わない特別な扱いがあります。
多くの用途では床面積の基準を超えて初めて義務が生じますが、この号にはその基準がありません。
唯一の抜け道は、条文が定める構造を備えているかどうかです。
次の章から、その構造の中身を具体的に見ていきます。
うちは小さな診療所なので、免除されると思っていました。
面積では免除されません。
建物の構造で判断します。
延焼を抑制する構造とはどんな区画を指すのか

中身は、壁や防火戸まで細かく決められた区画の条件です。
イ 当該防火対象物又はその部分の居室を準耐火構造の壁及び床で区画したものであること。
ハ 区画する壁及び床の開口部の面積の合計が八平方メートル以下であり、かつ、一の開口部の面積が四平方メートル以下であること。
ホ 区画された部分すべての床の面積が百平方メートル以下であり、かつ、区画された部分すべてが四以上の居室を含まないこと。
居室を準耐火構造(一定規模以上は耐火構造)の壁と床で囲い、内装は不燃性の高い材料にし、開口部の広さと防火戸の性能まで細かく指定されています。
さらに区画された部分の床面積は百平方メートル以下と上限があり、居室も四室までしか含められません。
どれか一つでも欠けると、この区画は認められません。
壁を頑丈にするだけでは足りないんですね。
はい、五つの条件すべてが必要です。
一つでも欠けると認められません。
基準面積が1,000平方メートルを境に何が変わるのか

分かれ目になっているのが延べ面積の大きさです。
床面積の上限も変わり、未満の区画は百平方メートル以下、以上の区画は二百平方メートル以下が上限です。
基準面積とは、対象になる用途に供される部分の床面積の合計のことです。
自分の建物がどちらの号に当てはまるかは、まずこの合計面積を出すところから始まります。
面積が大きい病院ほど、壁も頑丈にしないといけないんですね。
そのとおりです。
1,000平方メートルが分かれ目です。
小規模な施設にはどんな緩和ルートがあるのか

考え方は区画ではなく、逃げやすさそのものを見る方式です。
二 (略)入居者、入所者又は宿泊者の避難に要する時間として消防庁長官が定める方法により算定した時間が、火災発生時に確保すべき避難時間として消防庁長官が定める時間を超えないもの。
条件は、煙感知器の設置や外へ容易に開けられる開口部の確保など、区画とは違う切り口の要件です。
避難時間の算定は消防庁長官が定める方法によるため、専門的な計算が必要になります。
どちらのルートを使うかは、建物の状況に合わせて所轄消防署と相談しながら決めることになります。
区画の工事をしなくてもいい方法があるんですか。
ごく小規模な施設に限られます。
避難時間の算定が条件です。
明日から何を確認すればよいのか

まずは自分の建物の図面を確認するところから始めます。
候補が見つかったら、壁・内装・開口部・防火戸・床面積の五条件を一つずつ現地で照らし合わせます。
区画が難しい小規模な施設では、避難時間の算定による道も検討の対象になります。
他の消火設備で代替する道もあわせて条文に用意されているため、判断に迷う場合は図面を持って所轄消防署または㈱防災屋にご相談ください。
まずは図面を出して、区画の条件と照らし合わせてみます!
その進め方で大丈夫です。
迷ったら所轄消防署にも確認しましょう。
よくある質問
まとめ
うちの区画の造り、あらためて図面で確認してみます!
面積と区画、両方をあわせて確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第12条
- 消防法施行規則第12条の2
- 消防法施行令別表第一
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





