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関係者不在の宿泊施設はなぜ防火安全対策ガイドラインの対象になるのか|自動チェックインが広がる宿泊施設に必要な5つの対策を解説

夜のブティックホテルの外観写真

宿泊施設を経営していると、フロントに人が常にいるとは限らない時間帯があると思います。
自動チェックインやリモート対応が広がる一方、消防庁は令和7年3月、こうした「関係者不在」の時間帯がある宿泊施設に向けた防火安全対策ガイドラインをまとめました。
対象になるのは、消防法施行令別表第一(5)項イの宿泊施設です。
消防庁は、利用者への情報提供から訓練まで、5つの柱で対策を求めています。

うちのホテル、夜間はフロントに誰もいない時間があります。

実は消防庁もその時間帯を心配しています

関係者がいない時間の火災対応が不安なんです。

はい。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防庁は令和7年3月、「関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドライン」を新たにとりまとめました。
  • 対象は、営業時間中に施設従業員が不在となる時間帯がある宿泊施設(消防法施行令別表第一(5)項イ)です。
  • ガイドラインは情報提供・平時予防・応急対策・教育訓練・デジタル技術活用の5つの柱で対策を示しています。
  • 利用開始前の予約時点から、関係者不在であることを利用者に周知することが求められています。
  • 自動火災報知設備と連動した火災通報装置の設置は、消防機関ごとに運用が異なるため事前協議が必要です。

関係者不在の宿泊施設に求められる4つの防火対策の流れを示す図解

関係者不在の宿泊施設はなぜガイドラインの対象になったのか

自動チェックイン端末とホテルの建物を並べた図
自動チェックインやリモート対応が広がり、フロントに人がいない時間帯を持つ宿泊施設が増えています。
消防庁はこの流れを踏まえ、初動対応が遅れる危険性に注目しました。
近年、デジタル技術を用いて労働人口減少等の様々な課題の解決に取り組む社会的な動きが加速しています。宿泊施設においては、国内外からの宿泊者数が増加傾向にあり、自動チェックインや問い合わせのリモート対応等により、従業員等が常駐することなくサービスを提供する事業形態が見られるようになってきています。(「関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドラインについて」令和7年3月28日付け消防予第135号)
不特定多数が利用する宿泊施設は、消防法上もともと人命危険が高い施設です。
消火・通報・避難という初動対応が遅れれば、被害は大きくなります。
消防庁は「令和6年度予防行政のあり方に関する検討会」で検討を重ね、このガイドラインをとりまとめました。
働き手不足という社会的な事情と、火災時の安全確保は、両立させなければならない課題です。

うちも夜間は無人になる時間があります。

だからソフト面の対策が重要になったんです。

どんな宿泊施設がこのガイドラインの対象になるのか

全室タイプと部分タイプの宿泊施設の建物を並べた図
対象になるかどうかは、まず建物の用途区分と営業の実態で決まります。
延べ面積の大小そのものは基準になりません。
本ガイドラインは、消防法施行令別表第1(5)項イに掲げる宿泊施設(同表(16)項イに掲げる防火対象物のうち、当該用途に供される部分が存するものを含む。)で、営業時間中に施設従業員が不在となる時間帯があるものを対象とします。(前掲通知 別添「関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドライン」2「対象とする防火対象物」)
(五) イ 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの(消防法施行令別表第一)
想定するタイプは3つあります。
宿泊施設が建物のほぼ全てを占める全室タイプ、建物の一部だけで営業する部分タイプ、独立した小規模な建物である小規模独立タイプです。
複合用途ビルの一部が宿泊施設になっている場合(別表(16)項イ)も対象に含まれます。
自分の施設がどの区分に当たるかは、用途と営業実態から判断します。

うちは雑居ビルの一部にある小さな宿ですが、対象になりますか。

はい。
部分的な営業でも対象に含まれます

ガイドラインは具体的に何を求めているのか

客室の案内表示とスマートフォンの通報アイコンを並べた図
求められる対策は、大きく5つの柱に整理されています。
どれも消防計画に落とし込むことが前提です。
火災発生時に利用者の安全が確保されるよう、施設情報や火災発生時の行動に関する情報を確実に提供することが必要です。(略)施設関係者が不在となる旨やその時間帯についての施設情報を、利用者に周知しましょう。なお、宿泊施設の利用開始時に周知するほか、利用者が事前の段階で関係者不在となることを認識しづらい施設形態の場合には、予約時等にも周知することが適当と考えられます。(前掲別添 3⑴「利用者に対する情報の提供」)
柱は「利用者への情報提供」「平時の火災予防」「火災発生時の応急対策」「教育・訓練」「デジタル技術等による実効性向上」の5つです。
応急対策はさらに避難誘導・通報・初期消火・消防隊への情報提供の4項目に分かれます。
自動火災報知設備と連動した火災通報装置の設置など、遠隔での覚知手段も対策の例として挙げられています。
これらをチェックリスト形式で消防計画に反映させることが求められます。

5つも柱があると、何から手をつければいいのか迷います。

まずは利用者への周知から着手するのが近道です。

実務で見落としやすいのはどこか

遠隔監視画面を見る従業員と火災報知設備を並べた図
見落としの多くは「気づいたときにはもう遅い」という周知不足から生まれます。
遠隔での通報体制にも注意が必要です。
自動火災報知設備の遠隔移報装置を経由して通報する方法、遠隔監視(共用部に設置したカメラ)等により関係者が早期に火災を覚知し通報する方法のほか、自動火災報知設備と連動した火災通報装置を設置する方法もあります。(略)自動火災報知設備と火災通報装置を連動させて通報することについては、消防機関により運用が異なる場合があるため、事前に管轄する消防機関と協議してください。(前掲別添 3⑶「火災発生時の応急対策」表2-4備考)
一番の見落としは、館内掲示だけで周知が済んだと思い込むことです。
関係者不在であることを利用開始前から認識しづらい施設もあり、予約時のWeb案内やメールでの案内も必要です。
遠隔連動での通報体制は、消防機関ごとに運用が異なるため、必ず事前に所轄消防署と協議しなければなりません。
訓練は関係者がいる時間帯といない時間帯の両方を想定して行う必要があります。

ホームページに載せておけば十分だと思っていました。

予約時点での周知まで意識してくださいね。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストと消火器を並べた図
まず確かめてほしいのは、自分の施設が対象になるかどうかです。
そこから先は、5つの柱に沿って一つずつ点検していきます。
宿泊施設の管理権原者は、消防法第8条の規定に基づき、平時における火気管理、消防用設備等や避難施設、防火上の構造等の維持管理、自衛消防の組織の整備、従業員への教育、定期的な訓練とともに、火災等の発生時における消火活動、通報連絡及び避難誘導の適切な実態に関する防火管理上の責任を果たすことが求められます。このことを踏まえ、消防計画の作成や、教育・訓練の際に本ガイドラインを活用し、安全対策に万全を期するようお願いします。(前掲通知 別添1「はじめに」)
最初に、営業時間中に従業員が不在となる時間帯があるかを確認しましょう。
該当すれば、利用者への周知方法(予約時・客室掲示・チェックイン時)を決めて消防計画に落とし込みます。
遠隔通報や自動チェックインの体制を導入している場合は、所轄消防署に運用を相談しておくと安心です。
判断に迷ったときは、専門家に一度現場を見てもらうのが近道です。

今日中に、うちの営業時間と周知方法を見直してみます。

はい。
その一つの確認が大きな違いになります。

よくある質問

Q従業員が常駐している時間帯だけの宿泊施設も対象になりますか?
A本ガイドラインの対象は営業時間中に施設従業員が不在となる時間帯がある宿泊施設ですが、常時従業員がいる施設でも、省人化した人員体制に応じた安全対策を参考にすることが望ましいとされています。
Q民泊も対象に含まれますか?
Aはい。ガイドラインは全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会や一般社団法人日本民泊協会にも通知されており、消防法施行令別表第一(5)項イに該当する施設であれば民泊も対象になります。
Q遠隔監視カメラを設置すれば火災通報装置は不要になりますか?
Aいいえ。遠隔監視は覚知の手段の一つにすぎません。火災通報装置の要否は別の基準で判断されるため、設置の要否は所轄消防署に確認してください。
Qこのガイドラインに従わないと罰則がありますか?
A本ガイドラインは消防組織法第37条に基づく助言として発出されたもので、ガイドライン自体に罰則はありません。ただし、消防法第8条に基づく防火管理上の義務は別途存在します。

まとめ

消防庁は令和7年3月、「関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドライン」(消防予第135号)を発出しました。
対象は、営業時間中に施設従業員が不在となる時間帯がある宿泊施設(消防法施行令別表第一(5)項イ)です。
想定するタイプは全室タイプ・部分タイプ・小規模独立タイプの3つです。
対策の柱は、情報提供・平時予防・応急対策・教育訓練・デジタル技術活用の5つです。
予約時点からの周知が、利用開始時の周知とあわせて求められています。
遠隔連動での通報体制は、消防機関ごとに運用が異なるため事前協議が必要です。
訓練は関係者がいる時間帯・いない時間帯の両方を想定して行います。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドラインについて」(令和7年3月28日付け消防予第135号 消防庁予防課長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(5)項イ・(16)項イ
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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