民泊や小規模な宿泊施設のように、宿泊者以外の関係者が常駐しない宿泊施設が増えています。
こうした施設でも延べ面積500平方メートル以上の(5)項イ用途なら、消防機関へ通報する火災報知設備の設置が原則として義務づけられます。
けれども実は、宿泊させる間だけ関係者が不在になる施設向けに、一定の条件を満たせば設置を免除できる行政実例が示されています。
結論から言うと、四つの要件をすべて満たせば消防法施行令第32条の規定を適用し、設置を免除してもよいとされています。
うちの宿泊施設、夜間は誰も常駐していないんですが、火災通報装置は絶対に必要なんでしょうか。
実は消防庁の行政実例が、関係者不在の宿泊施設向けに免除の条件を示しているんです。
免除してもらえるなら助かりますが、なにか厳しい条件があるんですよね。
はい。
この記事で四つの要件を順番に確認していきましょう。
- 延べ面積500平方メートル以上の(5)項イ用途は、消防機関へ通報する火災報知設備の設置が原則義務です。(消防法施行令第23条第1項第2号)
- 宿泊させる間だけ関係者が不在となる施設は、四つの要件を満たせば設置を免除できます。
- 要件のひとつは、自動火災報知設備の信号と連動するなどして関係者へ迅速に伝える設備を備えることです。
- 消防隊が関係者より先に到着した場合に備え、受信機設置室の施錠扉に破壊用小窓を設けるなどの措置が必要です。
- 自動火災報知設備等と連動させる場合は、蓄積式の感知器など非火災報防止対策もあわせて講じます。
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目次
宿泊施設の火災通報装置はなぜ免除の対象になり得るのか

延べ面積500平方メートル以上の(5)項イ用途は、消防機関へ通報する火災報知設備の設置が原則として義務づけられています。
けれども民泊や小規模な宿泊施設では、宿泊させる間ずっと関係者が建物に常駐しているとは限りません。
旅館やホテルなど(5)項イ用途は、規模が一定以上なら火災通報装置が原則必須です。
ここでいう(5)項イは旅館・ホテル・宿泊所などを指し、延べ面積500平方メートル以上が基準になります。
自動火災報知設備とは別に、ボタン一つで消防機関へ直接つながる専用の設備を備えるという発想の規定です。
ところが小規模な宿泊施設や民泊では、深夜だけ関係者が不在になる運用も珍しくありません。
そこで実務に合わせて設置を免除できる行政実例が示されました。
うちは民泊で、夜間は誰も建物にいないんですが、それでも火災通報装置は要るんでしょうか。
延べ面積によっては原則必要です。
ただし関係者不在の運用向けに免除の実例があります。
この免除の対象になるのはどんな宿泊施設か

免除を検討できるのは、すべての宿泊施設ではありません。
行政実例は対象となる施設の条件を、通報設備の設置義務を前提にしたうえで限定しています。
対象は、宿泊させている間だけ宿泊者以外の関係者が不在になる(5)項イの宿泊施設です。
昼間はフロントに人がいても、夜間だけ誰もいなくなる運用や、そもそも常駐スタッフを置かない民泊型の施設が想定されています。
宿泊者自身は関係者に含まれないため、宿泊客がいるだけでは関係者不在の扱いは変わりません。
免除は自動的に認められるわけではなく、消防法施行令第32条の規定を適用する消防長・消防署長の個別の判断が前提になります。
うちは日中は受付にスタッフがいますが、夜間だけ誰もいなくなります。
これも対象になりますか。
はい。
宿泊させる間の一部でも関係者が不在になれば対象です。
免除を受けるにはどんな体制を整える必要があるのか

免除の要件は四つありますが、そのうち三つは体制づくりに関するものです。
設備を単に外すのではなく、人と手順で安全を補う考え方になっています。
要件は、伝達・通報体制・現場対応の三段構えで安全を確保する仕組みです。
まず自動火災報知設備と連動する伝達設備で、警備会社などの関係者へ火災の発生を迅速に知らせます。
連絡を受けた関係者は、消防機関への通報と現場への急行の両方を行い、非火災報だとわかれば直ちにその旨も消防機関へ伝える体制を持つ必要があります。
さらに、関係者より先に消防隊が到着する事態も想定し、受信機設置室の施錠扉に破壊用小窓を設けるなどの物理的な備えまで求められます。
体制と設備、両方がそろって初めて免除の土台が整います。
施錠された部屋の扉に小窓まで用意するんですね。
細かいところまで見られるんですね。
はい。
消防隊が先に到着する場合まで想定されています。
実務で見落としやすいのはどこか

四つ目の要件は、他の三つと少し性質が違います。
条件つきの要件なので、読み飛ばすと対応が漏れやすいところです。
四つ目は「自動火災報知設備等と連動するものにあっては」という条件つきの要件です。
要件1で求められる伝達設備は、実務上ほとんどの場合自動火災報知設備と連動させて組むため、四つ目もあわせて必要になるケースが大半です。
非火災報防止対策は四つの方法のうちいずれか一つを選べば足り、すべてを重ねて設置する必要はありません。
そして見落としやすいのは、要件が四つすべてそろって初めて免除が成立する点です。伝達設備と体制だけ整えても、受信機室の備えが抜けていれば免除の前提が崩れます。
うちは非火災報対策までは考えていませんでした。
伝達設備さえあれば大丈夫だと思っていました。
そこが見落としやすい点です。
四つの要件は全部そろって初めて免除されます。
明日からなにを確認すればよいのか

ここまでの要件を、実際の施設でどう確認すればよいか整理します。
書類と現地の両方を見ながら、順番に点検していきましょう。
確認は、対象施設の判定・伝達体制・受信機室の備えという三段階で進めます。
まず自施設が(5)項イ用途で延べ面積500平方メートル以上かを確認し、宿泊させる間に関係者が不在になる時間帯があるかを洗い出します。
次に、自動火災報知設備と連動する伝達手段(警備会社契約等)と、連絡を受けた関係者が現場へ駆けつけられる体制を書面で整理します。
最後に、受信機設置室の施錠扉に破壊用小窓があるかなど消防隊が先着した場合の備えを確認し、非火災報防止対策もいずれか一つ講じます。
自分の施設で免除が使えるか判断がつかない場合は、体制図を持って所轄消防に事前相談するのが確実です。
確認することが四つあるんですね。
これなら順番に整理できそうです。
はい。
判断に迷ったら、体制図を持って所轄消防に相談してください。
よくある質問
まとめ
これで民泊でも通報設備の免除が使えるか整理できました!
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第23条(消防機関へ通報する火災報知設備に関する基準)
- 消防法施行令第32条(消防長又は消防署長の個別判断による基準の特例)
- 消防庁「関係者が不在となる宿泊施設における消防機関へ通報する火災報知設備の設置免除について」(平成30年3月15日消防予第83号)
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※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





