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小規模屋外貯蔵タンクの津波・水害対策はどう進めるのか|CFRPで固定する2つの工法と施工の手続きを解説

小規模屋外貯蔵タンクの津波・水害対策はどう進めるのか|CFRPで固定する2つの工法と施工の手続きを解説

沿岸部や河川のそばに置かれた小さな屋外貯蔵タンク。
東日本大震災では、こうした小規模なタンクが津波で滑って倒れる被害が起きました。
近年は台風や豪雨による浸水でも、同じようにタンクが浮き上がったり滑ったりする事故が起きています。
消防庁が示したのは比較的安価に施工できる2つの津波・水害対策工法です。

うちにも小さな屋外タンクがあるのですが、津波や水害の対策はどこまでやればいいのでしょうか。

消防庁が令和4年に、500キロリットル未満の小規模なタンク向けの対策工法ガイドラインを示しました。
比較的安価な工法で施工できます。

うちのタンクも対象になるのか、まず知りたいです。

対象の条件と2つの工法、そして施工の手続きまで順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 対象は500キロリットル未満で、底板が地盤に接する縦置き円筒型のタンクです
  • ハザードマップの域外でも対策をとることが望ましいとされています
  • 工法はCFRPで面的に固定する方法とワイヤーで緊結する方法の2つから選べます
  • アンカーボルトを撤去する場合は消防法上の変更許可が必要です
  • 施工前にタンクの中身を完全に抜き取っておくことが求められます

小規模屋外貯蔵タンクの津波・水害対策の4ステップを示した図解

小規模屋外貯蔵タンクの津波・水害対策はなぜ求められているのか

津波が迫るなか小規模な屋外貯蔵タンクが基礎から滑り出そうとしているイメージ
東日本大震災では、小規模な屋外貯蔵タンクが津波で滑ったり倒れたりする被害が起きました。
近年は洪水などの浸水でも、同じような事故が繰り返されています。
「小規模屋外貯蔵タンクの津波・水害対策について」(令和4年3月30日付け消防危第63号 消防庁危険物保安室長) 消防庁では令和2年度から「屋外貯蔵タンクの津波・水害による流出等防止に関する調査検討会」を開催し、500キロリットル未満の小規模な屋外貯蔵タンクを対象とした津波・水害対策について検討を行ってきました。今般、消防庁では当該検討を踏まえ、小規模屋外貯蔵タンクの津波・水害対策工法に係るガイドラインを策定しましたので、下記の事項に留意の上、執務上の参考とされるようお願いいたします。
事故のあとに対策が示されたという通達です。
平成23年の東日本大震災では、小規模な屋外貯蔵タンクが津波で滑動・転倒する事故が発生しました。
その後も台風や豪雨による浸水で、タンクが浮き上がったり滑ったりする被害が続いています。
大規模タンク向けにはすでに対策がありますが、コストが高く小規模なタンクには手が回りにくいという事情がありました。
そこで消防庁の検討会が比較的安価に施工できる工法をまとめ、令和4年にガイドラインとして示したのがこの通達です。

うちのタンクは古いので、地震や水害のとき大丈夫か気になっていました。

東日本大震災をきっかけに、小規模なタンク向けの対策工法がまとめられました。
まずは対象になるかどうかを確認しましょう。

どのタンクが対象になるのか

小規模な屋外貯蔵タンクとハザードマップの標識を並べたイメージ
このガイドラインは、すべての屋外貯蔵タンクを対象にしているわけではありません。
容量とタンクの構造、そして立地で対象が絞られています。
本ガイドラインでは、500キロリットル未満の小規模な屋外貯蔵タンクで、底板を地盤面に接して設置される縦置き円筒型タンク(以下「小規模屋外貯蔵タンク」という。)を対象とする。沿岸部や河川等の周辺に設置されている小規模屋外貯蔵タンクのうち、所有者等が津波・水害対策の自主保安として施工を希望するタンク。なお、所有者等がハザードマップ等を活用してタンクへの影響を確認し、判断することとなるが、ハザードマップの域外のタンクについても対策をとることが望ましい
義務ではなく自主保安の対策です。
対象は500キロリットル未満で、底板が地盤に直接接する縦置き円筒型のタンクに限られます。
沿岸部や河川の近くにあるタンクが主な対象ですが、ハザードマップの域外でも対策をとることが望ましいとされました。
あくまで所有者が自主保安として希望する場合に施工する仕組みで、義務づけられているわけではありません。
まずは自社のタンクが500キロリットル未満の縦置き円筒型かどうか、そしてハザードマップ上の位置を確認するところから始まります。

500キロリットル未満というのは、うちの規模だと当てはまりそうです。

ハザードマップの外でも対策をとることが望ましいとされています。
まずは自社の敷地とタンクの構造を照らし合わせてみてください。

どんな対策工法が用意されているのか

CFRPで固定する工法とワイヤーで緊結する工法の2つを示したイメージ
対象になったタンクには、2つの対策工法のどちらかを選んで施工します。
どちらもCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を使う点は共通です。
対策工法1 小規模屋外貯蔵タンクと基礎を炭素繊維強化プラスチック(以下「CFRP」という。)で面的に固定する工法。対策工法1の設置条件 ・基礎が周囲より200mm以上の高さを有していること。・基礎形状が円形であること。対策工法2 小規模屋外貯蔵タンクの側板中間段にワイヤーを接続するための接続孔(以下「アイ」という。)が溶接されたプレートをCFRPで固定し、防油堤内に設けられたアンカーとアイをワイヤーで緊結固定する工法
どちらも既存タンクに後付けできる工法です。
工法1は、タンクの側板と基礎をCFRPで面的に固定し、基礎ごと動かないようにする方法です。
工法2は、タンクの側板にワイヤーをつなぎ、防油堤の中に設けたアンカーへワイヤーで緊結する方法です。
工法1は基礎の高さと形状に条件があり、工法2は防油堤内にワイヤーを張るスペースが必要になります。
どちらを選ぶかは、タンクの基礎形状や防油堤の広さといった敷地条件によって変わってきます。

うちの防油堤、ワイヤーを張るスペースがあるか自信がありません。

それなら、まず基礎の形状と防油堤の広さを実測してみましょう。
条件に合う工法が自然と絞れてきます。

施工するときに見落としやすいのはどこか

タンクの中身を抜き取ってから施工の手続き書類を確認することを示したイメージ
工法が決まっても、そのまま工事に入れるわけではありません。
対策工法を施工する場合の手続きが、あらかじめ通達で示されています。
対策工法を施工する場合の手続きについて ガイドラインに記載される津波・水害対策工法を適用する場合は、⑴又は⑵の手続きが必要となること。⑴ アンカーボルトにより基礎に固定されているタンクで、対策工法の施工に伴いアンカーボルトを撤去する場合は、消防法第11条第1項後段の規定による変更許可を要するものであること。⑵ ⑴に記載する場合以外の場合は、軽微な変更工事として取り扱うこととするが、事前に工事内容に関する資料を提出させ、対策工法が適切に施工される計画となっていることを確認すること。なお、いずれの手続きによることとなった場合においても、危険物の規制に関する政令の規定にかんがみ、タンク内容液を完全に除去した後に施工すること。
アンカーボルトを外すかどうかで手続きが変わります
既存のアンカーボルトを撤去して工法を施工する場合は、消防法第11条第1項後段にもとづく変更許可が必要です。
撤去を伴わない場合は軽微な変更工事として扱われますが、それでも事前に工事内容の資料を提出し、施工計画を確認してもらう必要があります。
さらに、どちらの手続きであってもタンクの中身を完全に抜き取ってから施工するという前提があります。
「軽微な変更だから届出だけで済む」と考えて中身が入ったまま業者に発注してしまうと、あとで手戻りが起きます。

軽微な変更なら、届出も要らないと思っていました。

軽微な変更でも事前に資料を出して確認を受けます
着工前に所轄消防署へ相談しておくと安心です。

施工したあとは何を確認すればよいのか

点検員がCFRPを施工したタンクをチェックリストで点検しているイメージ
工事が終われば対策は完了、というわけではありません。
CFRPを使った工法は、施工後の点検と補修のルールまで示されています。
5 維持管理 ⑴ 対策工法1を施したタンクについては、次の表を参考に点検を行うこと。(点検内容:塗装状況、変形、損傷又は亀裂等の有無、膨れ、浮き又は剥離等の有無。点検方法:目視及び打診テスト等による。) ⑵ ⑴の点検の結果、不具合箇所が確認された場合は、塗装状況の不具合は再塗装をすることにより、それ以外のCFRPの不具合は補修方法により補修を行うこと。
施工して終わりではなく、点検が前提の工法です。
点検では、塗装の状態と、変形・損傷・亀裂の有無、膨れや浮き、剥離の有無を目視と打診テストで確かめます。
塗装の不具合は再塗装で直せますが、CFRP本体の膨れや剥離は所定の補修方法にしたがって補修する必要があります。
CFRPの施工そのものも、専門的な技術と経験を持つ技術者による施工・管理が望ましいとされています。
工事を発注する段階で、施工後の点検体制まで含めて業者と取り決めておくと、あとで慌てずに済みます。

施工して終わりではなく、点検までセットなんですね。

年に一度は目視と打診テストで確認してください。
気になる箇所があれば、早めに㈱防災屋にご相談ください。

よくある質問

Qこのガイドラインの対策工事は義務ですか?
A回答は、所有者等が津波・水害対策の自主保安として施工を希望する場合に用いるものとされており、義務ではありません。ハザードマップの域外でも対策をとることが望ましいとされています。
Q対策工法を選ぶ基準はありますか?
A回答は、工法1は基礎が周囲より200mm以上の高さを持ち基礎形状が円形であることが条件で、工法2は防油堤内にワイヤーを張るスペースが必要とされています。敷地の条件で選びます。
Qアンカーボルトを外さなければ手続きは不要ですか?
A回答は、アンカーボルトを撤去しない場合でも軽微な変更工事として扱われ、事前に工事内容の資料を提出し施工計画の確認を受ける必要があるとしています。
Q施工後の点検はどのくらいの頻度で行えばよいですか?
A通達に具体的な頻度の定めはありませんが、塗装状況や膨れ、剥離の有無を目視と打診テストで定期的に確認することが示されています。

まとめ

東日本大震災を機に、小規模な屋外貯蔵タンクの津波・水害対策がまとめられました
対象は500キロリットル未満の縦置き円筒型タンクです
ハザードマップの域外でも対策をとることが望ましいとされています
工法はCFRPで固定する方法ワイヤーで緊結する方法の2つです
アンカーボルトを撤去するときは消防法上の変更許可が必要です
施工前にはタンクの中身を完全に抜き取ります
施工後は塗装状況や剥離の有無を定期的に点検します

まず自社のタンクが対象になるか確認してみます

はい、対象条件と工法の選び方から一緒に確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 小規模屋外貯蔵タンクの津波・水害対策について(令和4年3月30日付け消防危第63号 消防庁危険物保安室長)
  • 消防法第11条第1項
  • 危険物の規制に関する政令第11条第1項第5号
  • 危険物の規制に関する政令第24条第1項

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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