屋外にある浮き屋根式のタンクは、地震のたびに中の危険物が揺れて浮き屋根を傷めることがあります。
実はこの弱点を突いた事故をきっかけに、国は浮き屋根そのものを改修させる基準を作りました。
問題は、その改修には期限が切られていて、多くのタンクではその期限がすでに過ぎていることです。
自社のタンクが対象かどうかを、届出と工事の記録から今すぐ確認できるようにしておきましょう。
屋外タンクの浮き屋根って、点検のたびに古いタンクほど気になってたんです。
まさか地震で改修が求められる基準まであるとは知りませんでした。
実際に地震で浮き屋根が壊れて火災になった事例があって、それを受けて技術基準が整備されたんです。
今日はその中身と、見落としがちな期限の話をします。
うちのタンクは古いので、たぶん対象になりそうな気がします。
でも改修したという記録は見た覚えがなくて、ちょっと不安です。
その不安、放置しないほうがいいです。
改修の経過措置の期限はすでに過ぎているので、記録が無ければ今の状態を確認する必要があります。
- 浮き屋根タンクの改修基準は、平成15年の十勝沖地震で発生した浮き屋根式タンクの火災を受けて整備されました
- 対象は、危険物の規制に関する規則第20条の4第2項第3号の技術基準に適合しない既設の浮き屋根です
- 改修方法は溶接部の強化とL形鋼による補強が柱で、区域と容量に応じて必要な本数の目安も示されています
- 経過措置には届出期限と改修完了期限があり、改修完了期限はすでに平成29年3月31日を過ぎています
- 次の保安検査までに、届出と改修工事の記録が残っているかを確認しておく必要があります
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目次
浮き屋根タンクの改修はなぜ地震のあとに求められたのか

実際に大きな被害を出した地震がきっかけで、国は浮き屋根の耐震性を見直しました。
タンクの中の危険物は地震の揺れに合わせて表面が大きく波打ち、浮き屋根がその動きに耐えられずに壊れることがあります。
壊れた浮き屋根の隙間から蒸気が漏れると、静電気などをきっかけに火災につながる危険があります。
この現象は「やや長周期地震動」と呼ばれる、ゆっくり長く続く揺れで特に起きやすいとされています。
そこで国は、浮き屋根そのものに液面の揺れに耐える構造を求める基準を新たに設けました。
地震で火が出るとしたら、タンクが倒れるような揺れを想像してました。
浮き屋根が波打つだけで火災につながるとは思いませんでした。
ゆっくり大きく続く揺れほど液面を波立たせやすいんです。
次は、どんなタンクの浮き屋根が対象になるのか見ていきましょう。
どのタンクの浮き屋根が改修の対象になるのか

まず自社のタンクがどの区域に立地しているかを確認する必要があります。
危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示第4条の20第2項第3号イからハまでに規定する区域に立地する既設の特定屋外貯蔵タンクが、主な対象になります。
この区域はやや長周期地震動の影響を受けやすい地域として指定された区域で、こうした区域では既設の浮き屋根の多くが新しい基準に適合していないと考えられています。
逆に、この区域の外にあるタンクは液面が揺れる影響が小さいため、改修が不要なケースがほとんどです。
自社のタンクがどちらに当たるかは、設置許可を受けた際の届出書類か、所轄の消防で確認できます。
区域によって扱いが違うんですね。
自分のタンクがどっちなのか、届出書類を見ればわかりますか。
設置許可の申請書類か、所轄消防への照会でわかります。
対象と分かったら、次は実際の改修方法の話です。
改修の基準は何を求めているのか

柱になるのは溶接方法の指定と、補強材の追加です。
浮き屋根の浮き部分(内部が空洞になっている外周のリング状の構造)の上板と下板にL形鋼を溶接して、液面が揺れたときの力に耐えられるようにします。
溶接する部位ごとに溶接方法まで細かく指定されており、既存の溶接をやり直す部分と、新しく足す部分が区別されています。
タンクの容量が大きいほど、必要になるL形鋼の列数も増える仕組みです。
補強材の位置や本数は現場ごとに計算が必要なので、実際の設計は専門業者に依頼することになります。
浮き屋根をまるごと交換するのかと思っていました。
補強で済むなら、そこまで大掛かりな工事ではないんですね。
ただ、タンクの内部を開放する工事にはなるので、日程の調整は必要です。
ここで見落としやすいのが、この改修の期限です。
改修の期限はもう過ぎているのではないか

ただしその経過措置には、はっきりした期限が付いています。
平成19年3月31日までに市町村長等へ実態調査と改修計画の届出をしたタンクは、平成29年3月31日まで(休止中なら再開の前日まで)は従来のままでもよいとされていました。
つまり届出をしたタンクであっても、その期限までに改修工事を終えていなければ現在は基準不適合のままということになります。
届出をした記憶があっても、その後の改修工事が実際に完了しているかは別の話として確認する必要があります。
「届出をしたから大丈夫」で止まっていると、期限が過ぎたことに気づかないまま稼働を続けてしまう恐れがあります。
届出さえしておけば、それで対応は終わりだと思っていました。
工事そのものの記録まで確認するという発想がありませんでした。
届出と工事は別の書類として残っていることが多いです。
最後に、明日からできる確認の手順をまとめておきますね。
浮き屋根タンクの管理者は明日何を確認すればよいのか

特別な工事の知識がなくても、書類の有無を確かめることから始められます。
対象区域にあると分かったら、平成19年3月31日までの実態調査・改修計画の届出記録が社内に残っているかを探します。
届出記録があれば、続けて改修工事が完了した記録(工事完了報告や保安検査の記録)まで揃っているかを確かめます。
どちらかの記録が見当たらない場合は、先送りにせず所轄消防へ相談して現在の状況を伝えることが必要です。
次の保安検査は、こうした過去の経緯を整理しておくほど当日の説明がスムーズになります。
まずは所轄消防に区域を聞くところからなんですね。
社内の書類を探すより先に動けそうです。
はい、それが一番早いです。
最後によくある質問をまとめておきます。
よくある質問
まとめ
届出だけで安心せず、工事の記録まで確認してみます!
記録の整理や所轄消防への相談で迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の改修等について」(平成19年3月28日付け消防危第64号、平成19年10月一部改正:消防危第242号 消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第20条の4第2項第3号・第62条の4
- 危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成17年総務省令第3号)附則第3条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





