タンクローリーを買い替えたり、車庫を別の市町村に移したりするとき、まず頭に浮かぶのは車検や保険のことかもしれません。
実は移動タンク貯蔵所には、車庫(常置場所)を変えるたびに消防への手続が必要という、見落とされがちなルールがあります。
しかも車庫の変更先が別の市町村になると、旧許可書やタンク検査済証まで持ち歩く必要が出てきます。
売買や移設の話が出た時点で、まず常置場所の手続から確認しておきましょう。
系列のガソリンスタンドが移転するので、タンクローリーの車庫もそちらに移すことになりました。
車検証の住所を直せば済むと思っていたのですが。
それとは別に、消防への変更許可申請が要ります。
移動タンク貯蔵所は車庫の位置そのものが許可の中身に入っているんです。
移転先はお隣の市になるので、消防署の管轄も変わります。
その場合はもっと面倒になったりしますか。
行政庁が変わる場合は、持っていく書類が増えます。
今日はその中身と、譲渡や引渡が絡む場合の届出まで順番に見ていきましょう。
- 移動タンク貯蔵所の常置場所を移すときは、原則として変更許可申請が必要です
- 同一敷地内での移動であれば、資料提出だけで済む軽微な変更として扱われます
- 車庫の管轄が別の市町村に変わる場合は、旧許可書・タンク検査済証・完成検査済証の写しを添えて申請します
- 売買などで譲渡や引渡があったときは、変更許可とは別に遅滞なく届け出る義務があります
- 行政庁どうしの連絡は簡素化されており、ファクシミリでの通知も認められています
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目次
移動タンク貯蔵所の手続はなぜ全国で統一されたのか

その負担をなくすために、手続を一本化する通知が出されています。
この通知が出るまでは、昭和37年・47年・54年に出された3本の古い通知で運用されていましたが、行政庁によって解釈の幅が生まれていました。
そこで消防庁は、手続と添付書類を事務の簡素合理化の観点から必要最小限のものに絞り、全国どこでも同じ書類で済むように整理し直しました。
つまりこの後に出てくる「同一敷地内は軽微な変更」「行政庁が変わる場合は写しを添付」といったルールは、どの市町村でも共通の基準として扱われるということです。
逆に言えば、窓口ごとの慣習に振り回される必要はなく、この運用指針を手元に持っておけば話が早く進みます。
窓口によって言うことが違うのは、担当者の裁量だと思っていました。
もとから全国統一の指針があったんですね。
はい、平成9年からこの指針で統一されています。
次は、その中身である常置場所の変更ルールを見ていきましょう。
常置場所を変えるといつも変更許可がいるのか

ただし、どんな移動でも同じ重さの手続になるわけではありません。
常置場所は許可申請書に必ず書く項目なので、場所を変える=許可の内容を変えることになり、原則として変更許可申請が要ります。
ただし同じ敷地の中で駐車位置を変える程度であれば、資料を提出するだけの軽微な変更として扱われ、正式な審査待ちにはなりません。
一方で敷地の外、とくに別の市町村へ移す場合は、次に説明する「行政庁が変わる常置場所の変更」という重いパターンに入ります。
自社の移動が敷地内で収まるのか、それとも管轄をまたぐのかを、まず地図で確認しておくと話が早くなります。
同じ敷地の中で車庫の位置を変えるだけなら、そこまで身構えなくてよいのですね。
そのとおりです。
今回のように別の市町村へ移す場合は、次にお話しする書類が必要になります。
行政庁が変わる常置場所の変更では何を添えて出すのか

そこで、これまでの許可の経緯を証明する書類一式を持ち込む必要があります。
旧行政庁が交付した許可書、そのときに一緒に返ってきた申請図書(常置場所に関する図面は除く)、そしてタンク検査済証と完成検査済証の写しです。
新しい行政庁はこれらの写しと、危険物の規制に関する政令が定める技術上の基準に照らして、そのタンクローリーが基準どおりのまま維持されているかを確認します。
なお通知は写しでよいとしつつ、原本を添付して許可書に一緒に綴じて返す運用も認めており、どちらの形で用意するかは窓口に確認しておくと二度手間になりません。
これらの書類は普段の点検では出番が少ないため、車両に積む書類ケースにまとめて保管しておくと、いざという時に慌てずに済みます。
タンク検査済証なんて、普段は車両に積みっぱなしで中身をあまり見ていませんでした。
移設や売買の話が出た時点で、一度中身を確認しておくと安心です。
次は、売買そのものに関わる届出の話です。
譲渡や引渡があったときの届出を後回しにしていないか

タンクローリーを売買した場合には、もうひとつ別の届出義務が発生します。
法律上、売買や引渡があった瞬間に許可を受けた者としての地位は買い手側に移りますが、それとは別に遅滞なく市町村長等へ届け出る義務が課されています。
届出書には、売り手と買い手の双方が証明した書類を添付する必要があり、片方だけの申告では受理されません。
常置場所の変更が同時に起きるときは、この譲渡引渡届出と変更許可申請の両方を並行して進めることになり、どちらか一方だけで終わらせてしまう例が見られます。
「車庫の変更許可は出した、でも譲渡の届出は忘れていた」という状態にならないよう、売買契約を結んだ時点で両方を同時にチェックリストに入れておくのが確実です。
地位が自動で引き継がれるなら、届出まで急ぐ必要はないのかと思っていました。
そこが誤解されやすいところです。
最後に、この届出が行政庁どうしでどうやりとりされるかを見ておきましょう。
新旧の行政庁への連絡は今どう簡単になっているのか

この連絡方法は、後になって簡素化されています。
もともと平成9年の運用指針では、新行政庁から旧行政庁への通知は文書での様式によることとされていましたが、平成14年の改正でこの部分だけが簡素化されました。
この連絡自体は行政庁どうしで行うものなので、事業者側が直接手を動かす場面ではありません。
ただし、この連絡が済むまでは変更許可の審査が完了しないことがあるため、行政庁が変わる移設や売買では余裕を持った日程を組んでおく必要があります。
売買を伴う場合は、譲渡引渡届出を旧行政庁と新行政庁のどちらに先に出すのかという進め方も複数用意されているので、窓口で「今回はどちらの方法で進めるか」を早い段階で確認しておくと手戻りがありません。
役所どうしの連絡待ちで日程が延びることもあるんですね。
早めに窓口へ相談しておきます。
それが一番確実です。
最後によくある質問をまとめておきます。
よくある質問
まとめ
車検証だけ直せばよいわけではないと分かりました。
売買が決まったら、まず窓口に相談してみます。
売買契約の前に手続の見通しを立てておくと、当日の混乱を防げます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「移動タンク貯蔵所の規制事務に係る手続及び設置許可申請書の添付書類等に関する運用指針について」(平成9年3月26日付け消防危第33号 消防庁危険物規制課長)
- 「移動タンク貯蔵所の規制事務に係る手続及び設置許可申請書の添付書類等に関する運用指針の一部改正について」(平成14年2月26日付け消防危第28号 消防庁危険物保安室長)
- 消防法第11条第6項
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第6条第1項第3号
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第7条・別記様式第15
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





