危険物施設の予防規程には、地震と津波への備えを書く欄があります
けれど「地震」と「津波」を同じことだと思って、まとめて一言で済ませていないでしょうか
規則はこの2つを分けて求めており、消防庁は施設や資機材ごとの対策例まで示しています
本記事では、この地震・津波対策の条文と、具体的な対策例を整理します。
うちの予防規程、地震のところは「災害時に適切に対応する」としか書いてません。
それだけでは規則が求める内容を満たせていないかもしれません。
地震と津波、分けて書く必要があるんですか。
はい、規則は地震と、地震に伴う津波を分けて、点検と応急措置を求めています。
- 危険物施設の予防規程は、消防法第14条の2第1項に基づき市町村長等の認可を受けなければならない
- 地震が発生した場合、および地震に伴う津波が発生し又は発生するおそれがある場合の点検・応急措置等は、危険物の規制に関する規則第60条の2第1項第11号の2が定める項目
- 想定する津波は、発生頻度は高いが被害が比較的小さいものと、発生頻度は低いが甚大な被害をもたらす最大クラスのものの2段階に分けて備える
- 消防庁は施設・資機材ごとの対策例(防油堤の土のう、給水施設の環状化、非常通報設備の停電対策等)を公表している
- 可搬式の資機材は浸水しない場所への保管や移動の方法を事前に定めておく必要がある
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目次
予防規程になぜ地震と津波を分けて書くのか

その記載事項の一つに、地震と津波に絞った条項があります。
同じ第1項には「災害その他の非常の場合に取るべき措置に関すること」という第11号もありますが、これは災害全般を対象にした一般条項です。
第11号の2は、東日本大震災の被害を踏まえて地震と津波を名指しで追加された、より具体的な条項です。
つまり予防規程には、災害全般の一般的な対応とは別に、地震と津波にしぼった点検・応急措置の項目を用意する必要があります。
まず押さえておきたいのは、この号が指すのが「地震そのもの」と「地震に伴う津波」の両方だという点です。
「災害その他の非常の場合」の号だけじゃ足りないんですね。
はい、第11号の2は地震と津波専用に、後から追加された項目です。
どんな地震や津波を想定して備えるのか

そこでは津波を、性質の異なる2つのレベルに分けて考えることになっています。
- 発生頻度が高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波 大津波警報等が解除され、瓦礫や汚泥が除去されて施設内に立ち入れるようになった後、施設・資機材をすみやかに復旧できるようにする
- 発生頻度は極めて低いが、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波 機能が維持されなくてもやむを得ないが、応急措置または代替措置により、被害発生前と同程度の機能を速やかに回復できるよう計画しておく
頻度の高い津波は「壊れない・止めない」ことを目指し、最大クラスの津波は「壊れても速やかに戻す」ことを目指します。
どちらも災害対策基本法に基づく防災基本計画の津波災害対策編に示された考え方で、消防庁はこれを危険物施設向けに具体化しています。
自施設がどちらのレベルまで想定しているのか、予防規程の記載を見ただけで区別できるようにしておくことが実務では重要です。
想定を混同したまま書くと、応急措置なのか復旧計画なのかが読み手に伝わらなくなります。
うちの規程、津波はひとまとめにしか書いてないかもしれません。
2つのレベルで目指す状態が違うので、分けて書いておくと運用しやすくなります。
施設や資機材ごとにどんな対策例が示されているのか

消防庁の資料は、施設・資機材の種類ごとに具体的な対策例を挙げています。
- 流出油等防止堤 土のう等の応急措置用資機材をあらかじめ準備しておく
- 消火用屋外給水施設 配管の環状化や水源の複数化を検討し、補修バンド等の応急資機材を準備する
- 非常通報設備 停電時は非常電源や可搬式設備、回線断線時は無線設備を用意する
- 特定通路等 迂回できる通路配置とし、鉄板や砕石等の応急資機材を準備する
- 消防自動車その他の防災資機材等 浸水しない場所を保管場所とするか、高い場所へ移動させる方法を定める
- オイルフェンス 通常時の使用を優先しつつ、津波の影響が少ない場所への保管を検討する
災害が起きてから資機材を探すのではなく、土のうや補修バンド、無線設備をあらかじめ決めた場所に置いておくことが前提になっています。
どの項目も、壊れたら終わりではなく応急的に機能を保つための備えという共通点があります。
自施設に当てはめるときは、この6分野をそのまま予防規程のチェック項目として使うと整理しやすくなります。
全部そろえないと予防規程が認められないんですか。
あくまで対策例です。
自施設にある設備に合わせて選べば大丈夫です。
対策を書くだけで実効性は保てるのか

規則は、地震・津波の項目とあわせて他の号も定めています。
五 危険物の保安のための巡視、点検及び検査に関すること(略)。
十二 危険物の保安に関する記録に関すること。(危険物の規制に関する規則第60条の2第1項第4号・第5号・第12号)
たとえば可搬式の排水ポンプを地面に置いたままでは、津波や高潮で水につかり使えなくなります。
高い場所へ移す、または高台に保管するという一歩踏み込んだ対策まで決めておかないと、対策例を並べただけの規程になってしまいます。
第4号の保安教育、第5号の巡視・点検、第12号の記録とあわせて運用してはじめて、地震・津波の対策は実効性を持ちます。
資機材を用意して終わりにせず、誰が・いつ・どう動かすのかまで、他の号と結び付けて書いておくことが実務では欠かせません。
資機材を置くだけじゃ足りないんですね。
教育・点検・記録とセットで、はじめて対策が生きてきます。
明日から何を確認すればよいのか

特別な準備をしなくても、規程を開いて突き合わせるところから始められます。
- 予防規程を開き、第11号の2に相当する地震・津波の条項があるかを確認する
- 頻度の高い津波と最大クラスの津波を分けて記載しているかを見直す
- 自施設にある防油堤・給水施設・通報設備・通路・車両等・オイルフェンスを、対策例の6分野と照らし合わせる
- 可搬式の資機材の保管場所が浸水想定区域に入っていないかを確認する
- 保安教育・巡視点検・記録の号と結び付いた運用になっているかを点検する
号の数が多いため見落としやすいですが、地震・津波の項目は東日本大震災を踏まえて追加された比較的新しい号です。
古いひな形のまま更新されていない予防規程では、この号自体が抜けていることもあります。
既存の規程と条文を突き合わせるだけでも、抜け漏れのおおよその見当がつきます。
気になる点があれば、所轄の消防署に相談しながら見直しを進めましょう。
うちの規程も、まず第11号の2があるか見てみます。
号の条文番号を知っておくだけでも、見直しの精度は上がります。
よくある質問
まとめ
第11号の2があるか、帰ったらすぐ確認します。
資機材の保管場所の見直しまで、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第14条の2
- 危険物の規制に関する規則第60条の2
- 消防庁「危険物施設の震災等対策ガイドライン」
- 防災基本計画(津波災害対策編)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





