建築設備の定期検査というと、すでに設置されている換気設備をどう検査するかにばかり目が向きがちです。
しかし実務では、そもそも検査対象となる換気設備を設けなくてよい部屋があることも知っておく必要があります。
小さな調理室や火気使用室では、発熱量や部屋の広さによって設置義務そのものが変わり、思わぬ見落としにつながることがあります。
この記事では、建築基準法施行令第20条の3が定める換気設備の設置が免除される条件と、免除されない場合に必要な煙突などの措置を解説します。
うちのビルの給湯室、小さいコンロが1台あるだけなんですが。
こんな部屋にも換気設備は必要なんでしょうか。
発熱量や部屋の広さ次第では設置そのものが不要になる場合があります。
建築基準法施行令が定める線引きを見ていきましょう。
逆に、風呂釜みたいに火力の強い設備があるとどうなりますか。
その場合は原則として煙突の設置が義務付けられます。
例外もあるので順番に確認しましょう。
- 火を使用する設備・器具を設けた室には建築基準法第28条第3項により換気設備の設置が原則義務付けられる
- 床面積100平方メートル以内の住宅の調理室は、発熱量の合計が12キロワット以下で一定の開口部があれば設置を要しない
- 調理室以外の火気使用室は6キロワット以下という、より厳しい基準で設置要否が判断される
- 風呂釜や発熱量が12キロワットを超える設備には原則として煙突の設置が必要になる
- 換気設備の代わりに室内の酸素濃度をおおむね20.5パーセント以上に保つ大臣認定を受ける方法もある
▼

目次
そもそも火を使用する室にはなぜ換気設備が必要なのか

まずはこの原則と、対象外になる設備の範囲を確認します。
密閉式燃焼器具等とは、給排気を専用の給排気筒で屋外と直接やり取りし、室内の空気と混じらない構造の機器を指します。
給排気を室内から取り込む開放式・半密閉式の燃焼器具を使う室は、原則どおり換気設備の対象になります。
この後の項目で見る発熱量による例外は、あくまで密閉式燃焼器具等以外の設備・器具を使う室が対象です。
検査の現場では、まず設置されている燃焼器具が密閉式かどうかを確認することが最初の一歩になります。
密閉式かどうかって、見た目だけで分かるものなんでしょうか。
給排気の配管が壁を貫通して屋外に直接つながっているかを確認すれば分かります。
迷ったときは検査員にご確認ください。
住宅の調理室が換気設備なしで済むのはどんなときか

どのような条件で例外が認められるのか確認しましょう。
発熱量の合計が12キロワット以下のコンロ等を使う調理室で、床面積の10分の1以上(最低0.8平方メートル)の窓などの開口部があれば、換気設備の設置義務そのものが生じません。
発熱量の合計は、密閉式燃焼器具等や煙突を設けた設備・器具を除いて計算する点に注意が必要です。
古い戸建て住宅で換気扇の無い調理室を見かけたら、まずこの例外に該当していないかを確認します。
該当していれば法令違反ではなく、そもそも検査対象の換気設備が存在しない部屋ということになります。
うちは築40年近い戸建てで、台所に換気扇が無いんですが違反なんでしょうか。
発熱量や窓の大きさ次第では例外に該当している可能性があります。
一度現地で確認させてください。
調理室以外の火気使用室はなぜ6キロワットで線引きされるのか

なぜ基準の数値が変わるのか見ていきましょう。
住宅の調理室が発熱量12キロワット以下まで例外を認められるのに対し、調理室以外の部屋は6キロワット以下にとどまります。
調理室が窓や換気扇を備えやすい構造である一方、応接室や作業場などに置かれた小型のストーブ等は換気の余地が乏しいことを踏まえた基準と考えられます。
床面積100平方メートルという住宅の調理室のような広さの条件は付いておらず、部屋の用途を問わず発熱量だけで判断される点も異なります。
石油ストーブなど小型の暖房器具であっても、発熱量の合計が6キロワットを超えていないかを必ず確認します。
ストーブ1台なら、だいたい大丈夫そうな気がしますが。
複数の器具がある部屋は発熱量を合計して判断します。
台数が多い部屋は特に注意が必要です。
風呂釜や12キロワットを超える器具になぜ煙突が必要になるのか

どのような場合に煙突が必須になるのか確認します。
基準は12キロワットを超える設備又は器具、あるいは風呂釜そのもので、通常の給排気口だけでは廃ガスを安全に排出しきれないためです。
建物の構造上どうしても煙突を設けられない場合に限り、排気フードを有する排気筒で代替することが認められています。
検査の現場では対象設備の発熱量を確認したうえで、煙突が省略されている場合は排気フードの有無と構造を確認します。
古い建物で風呂釜の煙突が撤去されたまま換気扇だけになっているケースは、要是正の対象になり得ます。
うちの風呂釜、煙突が無くて換気扇だけなんですが大丈夫でしょうか。
排気フードを有する排気筒で代替されている可能性があります。
検査で構造を確認しましょう。
換気設備の代わりに酸素濃度で認められる方法はあるのか

最後に、この性能規定の仕組みを確認しましょう。
室内の酸素濃度をおおむね20.5パーセント以上に保てることが認められれば、給気口や排気口の位置・面積といった従来の構造方法によらずに大臣の認定を受けられます。
この性能規定化は平成12年6月1日から導入されたもので、それ以前の建物では構造方法による基準しかありませんでした。
認定を受けた設備かどうかは、設計図書や認定書の写しで確認するのが確実です。
検査でこのタイプの設備に行き当たったときは、通常の給気口・排気口の寸法基準ではなく認定の条件に適合しているかを確認します。
濃度で管理する方法もあるなんて知りませんでした。
建物ごとに認定の内容が異なります。
該当する設備があれば図書を確認させてください。
よくある質問
まとめ
設備の有無だけでなく、免除の条件まで知っておく必要があるんですね!
今度の検査で確認してもらいます!
それが確実な備えです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第28条第3項
- 建築基準法施行令第20条の2
- 建築基準法施行令第20条の3
※本記事は建築基準法及び関係政令の現行規定にもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。個別の建物における換気設備の設置要否の判断については、所管の特定行政庁又は検査を担当する建築設備等検査員に必ずご確認ください。





