屋外タンク貯蔵所の底板を補修すると、これまでは水を満たして応力をかける「水張検査」を受ける必要がありました。
消防庁は令和元年8月27日、消防危第117号で水張検査の代替に関する運用を示しました。
規則改正により、構造への影響が軽微な溶接部補修に限って、水張検査を別の検査で代えられるようになったためです。
この記事では、代替が認められる3つの条件と、実務で見落としやすい注意点を解説します。
うちの屋外タンクも古いので、いつか底部の補修が必要になりそうです。
そのたびに水張検査が要るなら大がかりになりそうですね。
補修の内容によっては、水張検査をしなくてよい場合があります。
令和元年の改正で、その条件が整理されました。
どんな補修なら対象になるのか、順番に教えてください。
もちろんです。
順番に確認していきましょう。
- 令和元年8月27日、消防危第117号により屋外タンク貯蔵所の水張検査の代替に関する運用が示されました
- 構造上の影響を与える有害な変形がなく、ぜい性破壊のおそれもない底部の溶接部補修に限って対象になります
- 対象工事はタンク底部の溶接部補修のうち、タンク本体の変形に対する影響が軽微なものに限られます
- 水張検査の代わりに漏れ試験と溶接部検査を実施することで確認します
- 補修方法の評価には破壊力学に基づく高度な専門技術が必要で、第三者機関の活用が望ましいとされました
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目次
屋外タンク貯蔵所の水張検査はなぜ底部の補修だけなら不要になったのか

なぜ、この重い検査を省略できる場合が新たに認められたのでしょうか。
水張検査は、工事後のタンクに実際に水を満たして応力をかけ、漏れと変形の有無を確認する重い検査です。
これまでは、ノズルやマンホールの取付け、屋根の工事などに限って水張検査の基準を除外できましたが、底部の溶接部補修は対象外でした。
「屋外タンクの検査技術の高度化に係る調査検討会」の報告書を踏まえ、板の取替えを伴わない部分的な補修であれば、条件を満たすことで水張検査を代替できるようにしたのが今回の改正です。
次は、実際にどんな工事のどの範囲が対象になるのかを見ていきます。
そのたびに水張検査が必要だと大がかりになりそうですね。
補修の内容によっては、水張検査をしなくてよい場合があります。
次はどんな工事が対象になるのか見ていきましょう。
どんな補修工事のどの範囲が対象になるのか

対象になる工事の範囲は、規則の条文で細かく線引きされています。
側板や底板そのものを取替える工事や、側板の段を追加・削減する工事は、これまでどおり水張検査が必要です。
逆にノズルやマンホールの取付け、屋根に係る工事はもともと水張検査の対象外でした。
つまり今回の改正で新たに対象が広がったのは、「底部の溶接部の補修」という限定された一点だけだということです。
次は、水張検査をしない代わりに何を確認するのかを見ていきます。
補修する場所や範囲によって、扱いが変わるということですね。
はい、底部の一部補修に限られます。
次は代わりに何を確認するのか見ていきましょう。
水張検査をしない代わりに何を確認するのか

代わりに満たすべき条件が細かく定められています。
①タンクの本体や基礎に構造上の影響を与える有害な変形がないこと、②危険物を満たしたときの応力でぜい性破壊を起こすおそれがないこと、③補修工事が適切な方法で行われていることの3点です。
②の判定には、日本溶接協会規格WES2805に基づく破壊力学の評価が使われます。
そのうえで、補修した箇所には水張検査の代わりに漏れ試験と溶接部検査を実施し、亀裂や漏れが無いことを確認します。
次は、この仕組みで実務者が見落としやすい落とし穴を見ていきます。
水を満たさない代わりに、専門的な検査に置き換わるということですか。
そのとおりです。
次は実務で見落としやすい注意点を見ていきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

特に見落としやすい2つを確認します。
水張検査を行わない分、水で応力をかけずに危険物をそのまま充てんすることになるため、供用開始後24時間程度は漏れや変形がないか特に注意が必要です。
もう一つの見落としが、判定に必要な専門知識の高さです。
破壊力学のシミュレーションや溶接施工の評価には高度な専門技術が必要で、タンクについて知見を持つ第三者機関の活用が望ましいとされました。
次は、明日から実際に何を確認すればよいかをまとめます。
検査が軽くなる分、現場での注意が増えるということですね。
はい、特に供用開始直後は気を抜けません。
最後に確認の手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

順番に見ていきましょう。
次に、ぜい性破壊のおそれがないかをWES2805に基づく評価で確認し、補修方法が継手形状や鋼材、溶接層数などの基準に適合しているかを確認します。
補修が終わったら、水張検査の代わりに漏れ試験と溶接部検査を実施し、その記録を残してください。
供用を開始したあとの24時間程度は、漏れや変形がないかを特に注意して見ておくことが欠かせません。
判断に迷う場合は、タンクに知見のある第三者機関や所轄の消防署に相談するのが確実です。
工事の前と後、両方で確認することがあるんですね。
はい、順番に確認すれば大丈夫です。
迷ったときは専門機関にも相談してください。
よくある質問
まとめ
補修の範囲と代わりの検査さえ分かれば、大がかりな検査にならずに済むと分かりました。
次の補修のときに確認してみます。
判断に迷ったら第三者機関や所轄の消防署にも相談してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「屋外タンク貯蔵所に係る水張検査の代替に関する運用等について」(令和元年8月27日付け消防危第117号 消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第11条第6項・第8条の2第5項
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第22条の4第1項第9号・第20条の9第1号
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





