給水設備及び排水設備の定期検査は、告示の検査結果表に並ぶ22項目をただ順番にこなすだけの作業ではありません。
検査の対象範囲は誰がどう決まるのか、雑用水の用途のような項目まで毎回全数を確認する必要があるのか、他の資格者による点検記録は使い回せるのか——実務では制度そのものへの疑問も少なくありません。
これらを知らずに検査に臨むと、対象範囲を取り違えたり、判定に迷って必要以上に厳しい指摘をしてしまったりすることがあります。
この記事では、検査対象の決まり方から抽出検査の仕組み、自主点検記録の活用、検査前の準備から当日の手順まで給水設備及び排水設備定期検査の基本ルールを整理して解説します。
うちのビル、給排水設備の検査で「対象になるのは特定行政庁が指定するものだけ」と言われました。
普通の検査と何が違うんでしょうか。
はい、給排水設備の検査は特定行政庁が指定する範囲に限られます。
国土交通大臣の認定を受けた給水設備や排水設備は、また別の方法で検査することになっています。
雑用水の用途みたいな項目まで、毎年全部確認しているわけではないとも聞きました。
本当なんでしょうか。
はい、一部の項目は1年から3年までの間隔での抽出検査が認められています。
対象の決まり方から検査当日の手順まで順番に見ていきましょう。
- 検査対象となる給水設備及び排水設備は「特定行政庁が指定するもの」とされ、国土交通大臣の認定を受けた給水設備・排水設備・装置等は申請時提出図書の方法で検査する
- 排水再利用配管設備の雑用水の用途は1年から3年までの間隔での抽出検査が認められている
- 一級建築士・二級建築士・建築設備検査員が実施した検査の記録は全ての項目で活用でき、建築物における衛生的環境の確保に関する法律にもとづく点検記録も一部項目で活用できる
- 著しい腐食は巻末の参考資料、異常な音・異常な振動は通常と違うかどうかで判定する
- 検査前には設計図書・前回の指摘・保守管理状況を確認し、総合的な維持保全計画書の策定を求める
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目次
給排水設備の検査はどこまでを対象にしているのか

まずは検査に入る前に押さえておきたい対象の考え方を確認します。
検査対象となるのは、特定建築物に設けられる飲料用の配管設備及び排水設備のうち特定行政庁が指定するものに限られます。
自分の建物のどの設備が対象かは、まず所管の特定行政庁の担当課に確認する必要があります。
また型式や構造方法について国土交通大臣の認定を受けた給水設備・排水設備・装置等は、告示の検査方法ではなく認定申請時に提出した図書に記載の方法で検査します。
自分の建物がどの指定・認定に該当するかわからないときは、検査を依頼する建築設備等検査員にまず相談するのが確実です。
対象になるのは「特定行政庁が指定するもの」ってどこで確認できるんでしょうか。
うちのビルだと何を見ればいいですか。
所管の特定行政庁の窓口か、検査を依頼する建築設備等検査員に確認するのが確実です。
建築確認済証や完成図書も手元に用意しておきましょう。
1年から3年まで間隔をおける検査項目にはどんなものがあるのか

どのような仕組みで検査の頻度が決まっているのか見ていきましょう。
施行規則第6条第1項は報告の時期をおおむね六月から一年までの間隔とするのが原則ですが、そのただし書きにより大臣が定める項目だけは1年から3年までの間隔でよいとされています。
給水設備及び排水設備では、排水再利用配管設備の雑用水の用途がこの抽出検査の対象です。
抽出検査を選ぶ場合は、定期検査報告書の第一面・第二面の該当欄に抽出検査を行った旨を明記し、実施内容を記載したリスト等の資料を添付しなければなりません。
毎年どの系統を検査したかを記録に残しておくと、次回の抽出計画も立てやすくなります。
抽出検査を選んだら、書類にはただ「抽出しました」と書けばいいんですか。
それとも詳しく書く必要があるんでしょうか。
いいえ、実施内容を記載したリストの添付まで必要です。
報告書の欄に明記することも忘れないようにしましょう。
自主点検の記録はどこまで検査に活用できるのか

その記録をそのまま活用できる項目があるのかを確認しましょう。
一級建築士・二級建築士・建築設備検査員が実施した検査の記録は、すべての検査項目で活用できます。
給水タンクや排水槽の腐食・漏水、通気の状況、阻集器や通気管の状況などは、建築物における衛生的環境の確保に関する法律にもとづく点検記録も活用できます。
記録にあっては、他の法令による検査記録は3か月以内、自主点検の記録は1か月以内に実施されたものが望ましいとされています。
検査を依頼する前に、直近のビル管理法にもとづく点検記録が手元にあるかを確認しておくと、当日の検査がスムーズになります。
うちはビル管理法の点検も定期的に受けているので、その記録が使えるなら助かります。
古い記録でも大丈夫でしょうか。
直近1か月以内の記録が望ましいとされています。
古い記録しかない項目は、あらためて検査することになります。
判定に迷う項目はどう判断すればよいのか

判定に迷ったときの考え方を確認しましょう。
著しい腐食かどうかは巻末の参考資料「腐食状況の判定基準」と見比べて判定します。
異常な音・異常な振動は配管や機器ごとに正常な状態が違うため、普段の状態との違いがあるかどうかで判断します。
要是正の判定が出た場合は「要是正(法不適合)」の指摘を行いますが、建築着工時の法令に適合すると判断される場合は「既存不適格」を併せて指摘します。
配管の隠蔽部分・埋設部分は原則として検査対象外ですが、点検口等から容易に検査できる範囲は検査の対象になります。
「著しい」とか「異常な」とか、感覚で判断されているみたいで不安です。
基準はちゃんとあるんでしょうか。
はい、巻末の参考資料や配管・機器ごとの特性を踏まえた基準があります。
感覚だけで判定しているわけではありませんのでご安心ください。
検査当日はどんな準備と手順で進めるのか

事前にどこまで準備しておくべきかを確認します。
建築確認済証や給水設備・排水設備完成図書を閲覧し、給排水の系統と配管の経路、給水タンクや排水槽の位置をあらかじめ頭に入れておくことで、現地での確認がスムーズになります。
前回の検査記録の指摘事項が改善されているかも忘れずに確認し、保守管理の状態は所有者等からの聴取と保守日誌等の資料閲覧の両方で把握します。
検査当日は、まず変更や設備改修の有無を確認し、書類による対象物の確認、外観検査、性能検査という順序で進めます。
検査終了後は、全てを元の正常状態に戻したことを確認し、その旨を所有者等の責任者に報告して初めて一連の検査が完了します。
維持保全計画書というものを作った覚えがありません。
作っていないと検査に通らないんでしょうか。
検査項目そのものではなく、策定を促す対象という位置づけです。
この機会に建物の規模に応じて整えておきましょう。
よくある質問
まとめ
検査の対象範囲まで特定行政庁ごとに違うとは知りませんでした!
次の検査までに維持保全計画書も確認しておきます!
それが確実な備えです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第3項・第68条の25・第68条の26
- 建築基準法施行規則第6条
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)
- 平成20年国土交通省告示第285号 別表第四 給水設備及び排水設備
※本記事は建築基準法及び関係告示の現行規定にもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。個別の建物における検査対象の指定や検査方法の適用については、所管の特定行政庁又は検査を担当する建築設備等検査員に必ずご確認ください。





