複数のテナントが入る雑居ビルやオフィスビルでは、自分のフロアさえきちんと点検していれば表示マークを掲げられると考えていないでしょうか。
実は消防法は、管理権原が分かれた建物について、単独の建物とは違う判定の仕方を定めています。
自分の区画が点検基準に適合していても、それだけでは足りないことがあります。
この記事では消防法第八条の二の二・第八条の二の三をもとに、管理権原が分かれた建物で表示マークを掲げるための条件を整理します。
うちのビルは各階に別のテナントが入っているんですが、自分のフロアさえ点検していれば表示マークを掲げられますよね。
実はそれだけでは足りないことがあります。
建物全体で見る決まりがあるんです。
隣のテナントの点検状況まで、うちが気にする必要があるんですか。
あります。
順番に条文を見ていきましょう。
- 管理権原が分かれた建物は、自分の区画ではなく建物全体で点検基準への適合を判定する
- 特例認定を受けている部分は、点検の対象からあらかじめ除外される
- 優良認定証は管理権原者全員が特例認定を受けていなければ掲げられない
- 特例認定を受けていない部分のうち一つでも基準に適合しないと建物全体で表示できなくなる
- 正規の手続きによらない表示や紛らわしい表示は、除去や消印を命じられることがある
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目次
なぜ管理権原が分かれた建物では表示の判定が一段厳しくなるのか

ところがテナントビルではそうはいきません。
条文はかっこ書きで「その管理について権原が分かれている防火対象物にあつては、当該防火対象物全体」と読み替えを指示しており、自分のフロアだけが基準に適合していても、それだけでは表示の条件を満たしたことになりません。
テナントビルの管理権原者は、隣の区画の点検状況にも無関心ではいられないということです。
まずはこの「単位が建物全体になる」という原則を押さえてください。
自分の区画だけ見ていればいいわけじゃないんですね。
そのとおりです。
次はかっこ書きの中身を見ましょう。
特例認定を受けている部分は点検の対象からどう外れるのか

「次条第一項の規定による認定を受けた部分を除く」という一節です。
特例認定は、過去三年間にわたり法令違反や点検不適合が無いなど優良な区画に対し、消防長または消防署長が個別に認定するものです。
この認定を受けた区画は、建物全体の点検を行う際の対象範囲からあらかじめ除かれます。
つまり建物全体で判定するといっても、実際に点検を受ける必要があるのは「特例認定を受けていない残りの部分」だけということになります。
認定を受けた区画は点検そのものが要らなくなるんですね。
はい、三年間は免除されます。
次は優良認定証のほうを見てみましょう。
優良認定証はなぜ管理権原者全員の認定が必要なのか

優良認定証のほうを条文で確認します。
点検済証は「特例認定を受けていない残りの部分」だけが基準に適合していれば足りましたが、優良認定証は建物全体が認定を受けたものに限るという、より厳しい条件です。
テナントの一部だけが特例認定を受け、残りが点検基準に適合しているだけでは、優良認定証を掲げることはできません。
優良認定証を目指すなら、すべての管理権原者がそろって特例認定を受ける必要があるということです。
うちのテナントだけ特例認定を受けても、優良認定証には届かないんですね。
そうなります。
では逆に、一部が基準未達だとどうなるか見ましょう。
一人でも基準に届かなければ本当に何も掲げられないのか

最後にもう一つ、表示そのものを縛る条文を確認します。
管理権原者全員が特例認定を受けていれば優良認定証を、特例認定を受けていない残りの部分がすべて基準に適合していれば点検済証を掲げられますが、そのどちらでもない場合、つまり特例認定を受けていない部分の中に基準不適合の区画が一つでもあれば、優良認定証も点検済証も掲げることはできません。
このとき特例認定を受けている部分の点検免除自体は生きたままですが、建物全体としての表示は認められないということです。
自分の区画の点検が済んでいても、建物のどこかに基準不適合が残っていれば、それだけで表示は止まってしまいます。
つまり一つのテナントの不備が、建物全体の表示を止めてしまうということですね。
そのとおりです。
最後に、明日から確認すべきことをまとめます。
明日から何を確認すればよいのか

順番に三つ確認してください。
- 建物内の管理権原者が誰と誰かを、管理組合や所有者を通じて把握する
- 各区画の点検結果と特例認定の有無を共有してもらう
- 表示を目指すなら、優良認定証(全員が特例認定)と点検済証(残り全部が基準適合)のどちらを狙うのか関係者間で方針をそろえる
特に区分所有やテナント貸しのビルでは、管理組合や所有者が窓口になって各区画の状況をとりまとめる体制を作っておくと安心です。
判断に迷う場合は、所轄消防署に建物全体の状況を伝えて相談してください。
まずは管理組合に、他の区画の点検状況を聞いてみます。
それが一番の近道です。
優良認定証と点検済証、どちらを狙うかも話し合ってみてください。
よくある質問
まとめ
建物全体で見るという発想が抜けていました。
管理組合に確認してみます。
区画ごとではなく建物全体の視点が大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第八条の二の二(防火対象物点検及び報告並びに点検済証等の表示)
- 消防法第八条の二の三(特例認定及び優良認定証等の表示)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物での判定や表示の可否は所轄消防署にご確認ください。





