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ワンルームマンションの火災警報器はなぜ調理のたびに鳴るのか|消防長の特例で定温式に変えられる仕組みを解説

ワンルームマンションの警報器はなぜ調理のたびに鳴るのか

ワンルームマンションで自炊のたびに火災警報器が鳴ってしまい、うんざりしている方はいないでしょうか。
住宅用防災機器は消防法で設置が義務づけられていますが、住宅の作りによっては誤作動が頻発することがあります。
実はこうした場合に備えて、機種を変更できる仕組みが用意されています。
この記事では消防長の特例により定温式住宅用火災警報器へ変更できる仕組みと、その注意点を整理します。

入居者から、炒め物をしただけで警報器が鳴ると苦情が来るんです。

それは非火災報と呼ばれる状態です。
放置せずに済む方法があります。

警報器を取り外すわけにはいかないですよね。

取り外さずに済む方法があります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 調理の煙で頻発する警報は、機器を光電式のまま我慢して使う以外の選択肢があります
  • 根拠は消防法施行令第五条の八が定める「基準の特例」です
  • 消防庁は消防安第65号でこの問題に「お見込みのとおり」と回答済みです
  • 変更先は熱で反応する定温式住宅用火災警報器です
  • 特例の適用は消防長または消防署長の判断が必要で、住民が独断で機器を外すことはできません

ワンルームマンションの調理で光電式住宅用防災警報器が誤作動する仕組みと消防長の特例により定温式住宅用火災警報器へ変更できる流れを示した図解

なぜワンルームマンションでは調理のたびに警報器が鳴るのか

ワンルームの台所で発生した湯気や煙に天井の住宅用防災警報器が反応しているイメージ
住宅用防災機器の多くは、煙を感知して作動する光電式が使われています。
その仕組み自体が、ワンルームでは裏目に出ることがあります。
住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令第二条第四号 光電式住宅用防災警報器 周囲の空気が一定の濃度以上の煙を含むに至つたときに火災警報を発する住宅用防災警報器で、一局所の煙による光電素子の受光量の変化により作動するものをいう。
光電式は煙に含まれる微粒子で光電素子の受光量が変わったことを検知して作動する仕組みです
台所と居室が仕切りなく続くワンルームでは、調理の煙や湯気がそのまま警報器の近くまで届きます。
これは機器の故障ではなく、設計どおりの動作が住宅の作りと噛み合っていないために起きています。
まずは「壊れているわけではない」と理解しておくことが最初の一歩です。

てっきり不良品を掴まされたのかと思っていました。

いいえ、仕組みどおりの反応です。
そこで役に立つ制度があります。

消防長の判断で設置基準を変えられる仕組みはあるのか

住宅の図面と条例の書類を前に消防長が基準の特例を検討しているイメージ
住宅用防災機器の設置基準は、市町村条例で一律に定められています。
ただし条文には、一律の基準を緩める仕組みも組み込まれています。
消防法施行令第五条の八 法第九条の二第二項の規定に基づく条例には、住宅用防災機器について、消防長又は消防署長が、住宅の位置、構造又は設備の状況から判断して、住宅における火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、住宅における火災による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおける当該条例の規定の適用の除外に関する規定を定めるものとする。
市町村条例には、消防長または消防署長が個別に認めた場合に基準の適用を除外できる規定を置くことが義務づけられています
これが実務で「基準の特例」と呼ばれる仕組みです。
判断材料になるのは、住宅の位置・構造・設備の状況で、火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないと言えるかどうかです。
条文自体には個別の適用場面までは書かれておらず、具体的にどんな場合に使えるかは消防庁の解釈に委ねられています。

そんな特例があるなら、うちのケースにも使えるんでしょうか。

ワンルームの誤作動については消防庁がすでに回答しています。
その中身を見てみましょう。

消防庁はワンルームの誤作動にどう答えたのか

消防庁の通知文書と了承の印が示された執務資料のイメージ
実はこの疑問は、すでに全国の消防機関へ向けて回答が出されています。
消防庁が取りまとめた執務資料に、そのままの質問が載っています。
消防安第65号(平成17年3月31日)問7 ワンルームマンション等において、調理の煙等により非火災報が頻発する場合等住宅用防災警報器の設置が適さない場合は、消防長(消防署長)の特例を適用し、定温式住宅用火災警報器の設置を認めて差し支えないか
答 お見込みのとおり。
ワンルームマンション等で調理の煙による誤作動が頻発する場合、消防庁は定温式への変更を認めて差し支えないと回答しています
問いに出てくる「等」という言葉が示すとおり、対象はワンルームマンションに限定されていません。
同じ執務資料には、ホームセキュリティーシステムやスプリンクラー設備がある場合の特例も並んで載っており、機器の状況に応じた個別判断という考え方は共通しています。
この一問一答が、機種変更の直接の根拠になります。

ずいぶん前から想定されていた問題だったんですね。

制度が始まった直後から想定されていた論点です。
次は変更先の機器を確認しましょう。

定温式住宅用火災警報器に変えると何が変わるのか

煙を検知する光電式警報器と熱を検知する定温式警報器を並べて比較したイメージ
定温式は光電式と検知の仕組みそのものが違います。
条文の定義から、その違いを確認します。
住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令第二条第四号の二 定温式住宅用防災警報器 一局所の周囲の温度が一定の温度以上になつたときに火災警報を発する住宅用防災警報器をいう。
定温式は煙ではなく、周囲の温度が一定の温度以上になったことで作動する仕組みです
炊事による湯気や煙だけでは温度が急上昇しないため、光電式に比べて誤作動が起きにくくなります。
一方で、煙は出ても温度が上がりにくいくすぶり型の火災には反応が遅れやすいという弱点もあります。
どちらが優れているという話ではなく、住宅の使われ方に合わせて選ぶものだと考えてください。

なるほど、煙じゃなくて熱を見ているから鳴りにくいんですね。

そのとおりです。
ただし勝手に交換してよいわけではありません。

特例を使うときに見落としやすいのはどこか

住民が消防署の窓口に電話で相談しているイメージ
ここまでの流れを見て、自分の判断だけで機器を交換してよいと思っていないでしょうか。
特例の条文には、その判断を誰が行うかも明記されています。
消防法施行令第五条の八 (略)消防長又は消防署長が、住宅の位置、構造又は設備の状況から判断して、(略)当該条例の規定の適用の除外に関する規定を定めるものとする。
基準の特例を適用できるかどうかを判断するのは、あくまで消防長または消防署長です
「非火災報が多いから」という理由だけで、住民や管理会社が独自に光電式を定温式へ交換してよいわけではありません。
実際に交換するときも、消防法施行令第五条の七が定める設置場所の基準そのものは変わらず適用されます。
交換を検討する段階で、まずは所轄の消防署に相談することが確実な進め方です。

てっきり自分たちで機種を選んで交換すればいいのかと思っていました。

消防署への相談が最初の一歩です。
最後にポイントをまとめます。

よくある質問

Q誤作動が続くからといって、警報器の電源を切ってしまってもよいですか?
Aおすすめできません。住宅用防災機器は消防法第九条の二で設置・維持が義務づけられています。電源を切るのではなく、消防長の特例による定温式への変更を検討してください。
Qワンルームマンション以外の住宅でも特例は使えますか?
A消防安第65号の問いは「ワンルームマンション」となっており、対象を限定していません。台所と居室が近い間取りなど、条件が似ていれば所轄消防署に相談する価値があります。
Q定温式に変えれば設置場所の基準も自由になりますか?
Aなりません。機種を変更しても、消防法施行令第五条の七が定める設置場所の基準そのものは引き続き適用されます。特例が及ぶ範囲は個別に確認が必要です。
Q賃貸物件の場合、誰が消防署に相談すればよいですか?
A条文上の相談窓口は限定されていませんが、設備の設置・維持義務を負うのは住宅の関係者です。管理会社やオーナーを通じて、所轄消防署へ相談する流れが一般的です。

まとめ

住宅用防災機器の多くに使われる光電式は煙で作動するため、調理の煙や湯気に反応しやすい仕組みです
消防法施行令第五条の八は、消防長または消防署長の判断で基準の適用を除外できる特例を定めています
消防庁は消防安第65号の問7で、ワンルームマンション等での定温式への変更を認めて差し支えないと回答済みです
対象は「ワンルームマンション」で、似た条件の住宅にも広げて考えられます
定温式住宅用火災警報器は温度の上昇で作動するため、調理の煙だけでは反応しにくくなります
機種を変更しても設置場所の基準そのものは変わらず適用される点に注意が必要です
特例を使えるかどうかは消防長または消防署長の判断次第なので、まず所轄消防署へ相談しましょう

入居者にも「まず消防署に相談を」と伝えます。
電源を切らなくてよかったです。

機種と設置場所の両方を確認するのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第九条の二(住宅用防災機器の設置及び維持義務)
  • 消防法施行令第五条の八(住宅用防災機器に係る条例の規定の適用除外に関する条例の基準)
  • 消防法施行令第五条の七(住宅用防災機器の設置及び維持に関する条例の基準)
  • 住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令第二条第四号・第四号の二(平成17年1月25日総務省令第11号)
  • 消防安第65号「執務資料の送付について」(平成17年3月31日)問7

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。特例の適用可否は個々の住宅の状況により異なります。実際の申請や判断は所轄消防署にご確認ください。

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