グループホームや老人ホームに、職員が住み込む住宅部分が併設されていることがあります。
実はこの住宅部分の存在が、スプリンクラー設備や屋内消火栓設備の基準に影響することをご存じでしょうか。
設備そのものが不要になるわけではなく、面積の数え方が変わるという分かりにくい仕組みです。
この記事では、住宅部分がある施設で1,000平方メートルの面積計算がどう変わるのかを解説します。
うちの施設は職員が住み込みで、建物の一部が住宅になっているのですが、それで設備の基準が変わるなんて知りませんでした。
住宅部分があると、面積計算に有利な扱いが認められることがあります。
まずはどんな建物が対象になるのか確認しましょう。
設備を設置しなくてよくなるということですか。
いいえ、面積の数え方が変わるだけです。
その違いを順番に見ていきましょう。
- 消防法施行令第12条第1項第1号や第9号にあたる施設は、原則として面積にかかわらずスプリンクラー設備の設置が必要です。
- 住宅部分がある場合、水源にタンクや加圧送水装置を持たない特定施設水道連結型スプリンクラー設備を選べることがあります。
- その判定に使う1,000平方メートル未満という基準面積は、住宅部分の面積を除いて計算できます。
- 屋内消火栓設備の要否を判断するときは逆に、1,000平方メートルに住宅部分の面積を加えた数値で判断してもよいとされています。
- これは設置義務そのものを免除する制度ではなく、面積の数え方が変わる制度だと理解しておく必要があります。
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目次
住宅部分があるとなぜ設備の基準が変わるのか

その建物に住宅部分が併設されていると、設備の基準の当てはめ方が変わってきます。
グループホームや老人ホームなど介助が必要な方が入所する施設の一部は、延焼を抑制する構造を備えていない限り、規模の大小を問わずスプリンクラー設備の設置が必要です。
これは重大な火災被害が繰り返されたことを踏まえて設けられた基準で、面積の小さな施設であっても例外にはなりません。
ただし、この建物の中に住宅部分が含まれている場合は、後で説明する面積の計算方法に別の扱いが用意されています。
まずは自分の施設がこの基準の対象になるかどうかを確認することが出発点です。
うちは面積が小さいので、スプリンクラーは要らないと思っていました。
この類型は面積にかかわらず対象になります。
まず用途をご確認ください。
どんな建物のどの部分が対象になるのか

対象になる建物はあらかじめ決まっています。
第1号は前のセクションで見たグループホームや老人ホームなどの類型、第9号は地下街などの複合用途の建物のうちこれらの施設が入っている部分を指します。
一般の事務所ビルや店舗など、この2つの号にあたらない建物には、これから説明する計算方法はそもそも関係しません。
また対象になる場合でも、住宅部分そのものではなく、施設部分の床面積の合計を1,000平方メートル未満に収められるかどうかが判定の対象です。
自分の建物がこの2つの号のどちらかにあたるかを、まず用途区分から確認してください。
普通の賃貸マンションに住宅部分があっても対象にはならないんですね。
はい、介助が必要な方が入所する施設が前提です。
用途を混同しないようにしましょう。
1,000平方メートルの面積計算はどう変わるのか

住宅部分がある建物では、面積の数え方に2つの緩和が用意されています。
特定施設水道連結型スプリンクラー設備を選べるかどうかの判定では、防火対象物の床面積から総務省令で定める部分に加えて住宅部分の面積を除いて1,000平方メートル未満かどうかを計算してよいとされています。
一方、屋内消火栓設備が必要かどうかの判断では逆に、1,000平方メートルに総務省令で定める部分の面積と住宅部分の面積を加えて判断してよいとされています。
この取扱いは平成27年10月20日消防予434号で示されたもので、住宅部分があることで、どちらの計算でも施設側に有利な方向に働きます。
条文の数字だけを追うと引くのか足すのかを取り違えやすいので、どちらの制度を計算しているのかを常に意識してください。
引く計算と足す計算があるなんて、混同しそうです。
どちらも住宅部分があるほど有利になる点は共通です。
まず両方の存在を知っておくことが大切です。
実務で見落としやすいのはどこか

実務では次の点に注意が必要です。
特定施設水道連結型スプリンクラー設備は、水道管を水源として使うため貯水施設や加圧送水装置を省略できる分、通常のスプリンクラー設備より導入や維持の負担が軽くなります。
しかし住宅部分があるからといって、スプリンクラー設備そのものが不要になるわけではありません。
また、この面積計算は令第12条第1項第1号と第9号の施設に限った特例であり、令第32条による個別の設置免除の制度とは別の仕組みです。
自分の施設に当てはまる制度がどちらなのかを、所轄消防に確認しながら整理する必要があります。
住宅部分があれば設備自体が要らなくなると勘違いするところでした。
設置する設備の種類や要否の判断が変わるだけです。
免除の制度と取り違えないようにしましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

まず基準となる「総務省令で定める部分」の中身を確認しましょう。
「総務省令で定める部分」にあたるかどうかは、壁や床の準耐火構造・防火戸の仕様・地階や無窓階かどうかまで確認しないと判断できません。
そのうえで、建物の図面から施設部分と住宅部分の床面積をそれぞれ正確に測り、自己判断で図面を読み解くのではなく設計段階から所轄消防に相談するのが確実な進め方です。
すでに完成している建物についても、面積の測り方を見直すだけで設備の選択肢が広がる可能性があります。
増築や用途変更を行うときは、そのつどこの面積計算をやり直してください。
今度の改修の前に、図面を持って消防に相談してみます。
それが一番確実な進め方です。
面積の内訳を整理してから相談すると話が早く進みます。
よくある質問
まとめ
面積の数え方だけでも、設備の選び方が変わるとよく分かりました!
面積の内訳を整理しておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第11条第2項(e-Gov法令検索)
- 消防法施行令第12条第1項第1号・第2項第3号の2・第4号(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則第13条の5の2(e-Gov法令検索)
- 平成27年10月20日消防予434号(総務省消防庁通知)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





