給水設備の定期検査では、配管そのものが他の系統とつながっていないか、水を受ける設備との位置関係が適切かを確認します。
この検査事項は「飲料水系統配管の汚染防止措置の状況」という一文でしか表れませんが、背景には配管の構造にまつわる二つの規定があります。
ひとつは配管同士を直接つながないというルール、もうひとつは吐水口とあふれ面の間に空間を確保するというルールです。
この記事では、これらの措置がなぜ必要なのかという仕組みから、吐水口空間を確保できないときの代替策まで整理します。
「汚染防止措置」と言われても、具体的に何を見ているのかピンときません。
大きく分けるとクロスコネクションの禁止と逆サイホン作用の防止という二つの視点があります。
今回はその仕組みを詳しく見ていきましょう。
配管を汚れた水が逆流することなんて、本当にあるんですか。
ホースをバケツに差し込んだままにするだけでも起こりうる現象です。
バキュームブレーカという代替措置もあわせて解説します。
- 検査事項(8)は建築基準法施行令第129条の2の4第2項第一号又は第二号の規定に適合しないことを判定基準とします
- 第一号は、飲料水の配管設備を他の配管設備と直接連結(クロスコネクション)させないことを求めています
- 第二号は、水を受ける設備との間に吐水口空間などの有効な逆流防止措置を確保することを求めています
- この措置が無いと、負圧の発生時に逆サイホン作用によって汚染された水が吸い込まれるおそれがあります
- 吐水口空間を確保できないときはバキュームブレーカの設置で代替します
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目次
なぜ配管を直接つないではいけないのか

その最初の視点が、飲料水の配管を他の配管設備と直接つないでいないかという確認です。
飲料水の配管設備と、排水管や雑用水管など水質の異なる配管とを恒久的につないでしまうと、両者の圧力関係が入れ替わった瞬間に、汚染された水が飲料水側へ流れ込むおそれがあります。
消火用の配管や雑用水の配管を安易に給水管とつないでしまう配管改修は、この規定に触れる典型例です。
なお、水道法第3条第9項に規定する給水装置に該当する配管設備(水道事業者の配水管から分岐した部分)は、本検査事項の対象外です。
検査ではまず、配管図を手がかりに配管の系統がどこでどうつながっているかを追うことから始めます。
つなぐこと自体がもうアウトなんですね。
はい、恒久的な接続そのものが問題視される規定です。
次は、つないでいなくても起こりうる逆流の話です。
吐水口空間はどうやって逆流を防いでいるのか

そこで検査事項(8)には、もうひとつの視点が含まれています。
洗面器や給水タンクのように水を入れる設備・受ける設備では、あふれ縁の水面よりも水栓の開口部を高い位置に保つことで、両者の間に大気に開放された空間を作ります。
「水を入れる設備」とは各水槽やプールなど長時間水を滞留させるもの、「水を受ける設備」とは台所の流しや洗面器など水を貯留する設備を指します。
「水栓の開口部」は蛇口の吐水口だけでなく、弁の操作によって水を供給する配管の開口部も含まれます。
この空間があれば、たとえ受け側の水位が上がっても、給水側の配管とは物理的に切り離されたままなので、汚染された水が配管側へ入り込む経路が断たれます。
空間を空けておくだけで、そんなに効果があるんですか。
はい、物理的に切り離すという発想がポイントです。
ただ、この空間が確保できないケースもあります。
逆サイホン作用はどんな仕組みで起こるのか

その現象には名前が付いています。
蛇口にゴムホースをつなぎ、その先端をバケツや洗面器にためた水の中に入れたまま給水を続けると、ホースの中も含めて配管は水で満たされた状態になります。
この状態で断水や上階での大量使用などにより配管内の圧力が急に下がると、ホースの中の水が押し戻されるのではなく、逆にバケツ側の水を吸い上げる向きに流れが生じます。
これが逆サイホン作用で、吐水口が水没している状態と、配管内に負圧が生じるという二つの条件がそろったときに起こります。
洗面器やバケツにホースを差し込んだまま水を入れる行為は、この二条件がそろいやすい典型例として注意が必要です。
ホースをバケツに突っ込んだままにするのも良くないんですか。
まさにそれが逆サイホン作用の典型例です。
吐水口空間さえ確保しておけば起こりません。
吐水口空間を確保できないときはどうするのか

そのようなときに使われるのが、代替の逆流防止装置です。
大気圧式は、常時圧力のかからない配管に設置するタイプで、配管内が負圧になると内部の弁が開いて大気を取り込み、逆サイホン作用を断ち切ります。
圧力式は、常時圧力のかかる配管に設置するタイプで、開閉弁とテストコック、逆止め弁を組み合わせた構造により、常時通水状態でも機能します。
このように取付け位置が異なるため、検査では設置場所の配管がどちらの条件にあたるかを確認したうえで、型式が適切かを見ます。
吐水口空間という物理的な空間の代わりに、機械的な弁の作動で同じ役割を果たす仕組みといえます。
空間の代わりに、弁で守っているんですね。
はい、型式を間違えると正しく機能しないので注意が必要です。
最後に検査全体の見方を整理します。
定期検査ではこの措置をどう確認するのか

検査事項(8)は、この二つをまとめて一つの判定基準で扱っています。
まず配管図をもとに、飲料水の配管が排水管や雑用水管など他系統の配管と直接つながっていないかを追います。
次に、洗浄弁や水受け容器への給水部分で、あふれ縁と水栓の吐水口空間が確保されているか、確保できない箇所にはバキュームブレーカがあるかを確認します。
配管改修で系統が増えるたびにクロスコネクションのリスクが生まれ、機器の更新のたびに吐水口空間の確保状況が変わりうるため、竣工時だけでなく定期検査のたびに見直す価値がある項目です。
配管そのものの他の検査事項とあわせて、飲料水を守る仕組みとして押さえておきましょう。
配管図と現場の両方を見比べる必要があるんですね。
そうですね。
改修履歴まで含めて確認するのが実務のコツです。
よくある質問
まとめ
クロスコネクションと逆サイホン作用の違いがはっきり分かりました!
配管の系統やバキュームブレーカの点検は、建築設備検査員にお任せください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第3項(定期検査報告義務)
- 建築基準法施行令第129条の2の4第2項第一号・第二号(飲料水の配管設備の設置及び構造)
- 水道法第3条第9項(給水装置の定義)
- 平成20年国土交通省告示第285号 別記第四号(給水設備及び排水設備の検査結果表)
※本記事は建築基準法・同施行令等に基づき、一般的な検査要領を解説したものです。実際の配管配置や設備の状態によって判定は異なります。個別の判断は建築設備検査員や所轄の特定行政庁にご確認ください。





