タンクローリー(移動タンク貯蔵所)を保有していると、秋になると消防と警察が合同で立入検査に来ることがあります。
これは思いつきの取り締まりではなく、全国の基準不適合率が2割近くに達している実態を踏まえ、消防庁が毎年通知を出して実施しているものです。
常置場所だけでなく、荷卸し場所や走行中の道路上でも行われるため、突然呼び止められて戸惑う運転者も少なくありません。
何を根拠に、どこで、何を確認されるのかを整理します。
うちのタンクローリーが先週、道路脇で消防と警察に止められて点検を受けました。
何かの違反を疑われたのでしょうか。
ご安心ください、個別の疑いではなく毎年秋に実施される全国一斉の立入検査です。
消防庁の通知に基づくもので、対象は決まった重点項目に沿って確認されます。
点検記録は積んでいましたが、どこまで見られるのか分からず焦りました。
次はどう備えればよいでしょうか。
通知に示された重点項目を順に押さえておけば、当日に慌てることはありません。
この記事で一つずつ整理していきましょう。
- 基準不適合率が約19%と高止まりしていることを受け、消防庁が毎年通知を出して全国一斉の立入検査を依頼している
- 対象は移動タンク貯蔵所(タンクローリー)と危険物運搬車両で、常置場所・荷卸し場所・道路上のいずれでも行われる
- 道路上での検査は原則として警察と合同で実施される
- 最も指摘が多いのは定期点検(漏れの点検)に関する義務違反で、年々増加傾向にある
- 点検記録簿・消火器・標識・接地導線・免状の携帯を日頃から車両に備えておくことが最大の対策になる
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目次
移動タンク貯蔵所の立入検査はなぜ毎年実施されるのか

その背景には、立入検査で見つかる基準不適合の割合が高止まりしているという実態があります。
数字が悪化を示すたびに、翌年の検査項目が強化される仕組みになっているのです。
毎年同じ時期に同じような通知が出るのは、危険物の移送・運搬中の事故が一度発生すると、人命や交通に重大な影響を及ぼすためです。
「今年は来ないだろう」という思い込みは通用しません。
翌年以降も同種の通知が継続して出されていることは、消防庁の年次一覧で確認できます。
毎年決まった時期に来るなら、うちも先回りして準備できそうです。
何をもとに検査の重点が決まるのでしょうか。
前年度の立入検査で目立った不適合項目が、翌年の重点項目に反映されます。
次の章で対象と場所を確認していきましょう。
どの車両がどこで検査を受けるのか

道路上で止められる場合は、消防だけでなく警察も一緒に来ることを知っておく必要があります。
常置場所の車庫でも、荷卸し中の現場でも、走行中の道路上でも検査は行われます。
道路上で警察と合同になるのは、消防法第16条の5第2項が消防吏員・警察官の双方に走行中の車両を止める権限を認めているためです。
実施期間は例年11月を中心に1か月ほどに設定されますが、日時は事前に公表されません。
常置場所の変更許可を得ずに位置を変えていた事例も、この検査を通じて発覚することがあります。
走行中に止められることがあるとは知りませんでした。
そのときは何を見せればよいのでしょうか。
走行中に止められたときの手順は、当サイトの別記事で詳しく解説しています。
ここでは検査当日に確認される中身を見ていきましょう。
検査では具体的に何を確認されるのか

車両の外観だけでなく、書類と運転者への質問まで含めて一通り確認されます。
マンホールのふたや配管の弁がきちんと閉まっているかも、その場で目視で確認されます。
危険物運搬車両側では、運搬容器の表示・積載方法に加えて、運転者が事故発生時にどう動くかという応急措置の理解度まで質問されます。
出発前の点検は義務であって形だけの確認ではないことが、この重点項目からも分かります。
イエローカードの携行状況が別途確認されることもあり、詳しくは別記事で扱っています。
マンホールのふたまで見られるとは思っていませんでした。
うちで特に見落としやすいところはどこでしょうか。
統計を見ると、指摘される項目にははっきりとした偏りがあります。
次の章で実際の内訳を確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

中でも突出しているのが、日々の運用で後回しにされやすい項目です。
「毎年やっているから大丈夫」という思い込みが、記録の空白を生みやすいのです。
次いで多いのが標識や消火器の未設置・不足で、荷台の見やすい位置に掲げているつもりでも劣化して読めなくなっているケースがあります。
常置場所の変更許可を取らずに駐車場所だけを変えてしまう例も、この検査で発覚しやすい落とし穴です。
点検を実施していても、記録簿を車両に積んでいなければ「実施状況が確認できない」として扱われます。
点検はしているのに記録簿を積み忘れていたら、それだけで指摘されるということですね。
明日から何を確認すればよいでしょうか。
はい、その通りです。
最後に、今日から車両ごとに確認できるチェックポイントをまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

どれも通知の重点項目と重なるため、そのまま社内点検の項目に流用できます。
点検そのものより「記録が車両にあるか」が検査で最初に問われるポイントです。
次に消火器の本数と設置位置、危険物の類・品名・最大数量を表示する標識が色あせずに読めるかを見ます。
電気設備と接地導線に断線がないか、乗車する危険物取扱者が免状を携帯し保安講習の受講期限内であるかも忘れずに確認してください。
これらを月次の車両点検表に組み込んでおけば、いつ検査が来ても慌てずに対応できます。
記録簿・消火器・標識・接地導線・免状の5つを月次点検に組み込めばよいのですね。
社内のチェックリストを作り直してみます。
それが一番確実です。
最後によくある質問をまとめておきます。
よくある質問
まとめ
重点項目を月次点検に組み込めば、検査が来ても落ち着いて対応できそうです!
点検記録の整備から日頃の車両管理まで、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「移動タンク貯蔵所等に対する立入検査の実施について」(平成27年9月25日付け消防危第222号 消防庁危険物保安室長)
- 「移動タンク貯蔵所等に対する立入検査結果について」(平成27年1月9日付け消防危第11号 消防庁危険物保安室長)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第14条の3の2・第13条の23・第16条の2・第16条の5
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第15条・第30条・第30条の2
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





