劇場や旅館の客室に敷くじゅうたんには、防炎の性能が求められます。
その証明といえば消防長官の登録を受けた機関が付ける防炎表示が基本ですが、実はそれだけではありません。
建材として売られているカーペットやタイルカーペットの中には、日本産業規格のマークだけで足りるものがあります。
これは消防法が「指定表示」という制度で認めている別ルートです。
うちのホテルは、客室のカーペットを敷き替える予定です。
防炎表示のラベルが付いていないと言われたのですが、それでも大丈夫なのでしょうか。
ラベルの種類によっては大丈夫です。
JISマークが付いていれば、防炎表示の代わりとして認められる場合があります。
JISマークだけで、消防の検査も通るということですか。
そのとおりです。
どんなマークなら認められるのか、順番に見ていきましょう。
- 高層建築物や地下街、劇場・旅館などで使うじゅうたん等には、政令で定める基準以上の防炎性能が必要です
- 防炎表示は消防庁長官の登録を受けた機関だけが付けることができます
- 産業標準化法などに基づく「指定表示」があれば、防炎表示を重ねて付ける必要はありません
- 指定表示として認められるのは消防庁長官が個別に指定したJISマークだけです
- 防炎処理や防炎対象物品の作製をさせたときは、処理者の氏名や年月を明らかにしておく義務があります
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目次
じゅうたんの防炎表示はなぜJISマークで代えられることがあるのか

その証明の方法は、実は一つではありません。
消防法第8条の3第2項が定める防炎表示は、消防庁長官の登録を受けた機関が縫付や下げ札などの方法で付けるものです。
一方で同条第3項は、産業標準化法など政令で定める法律に基づく表示を「指定表示」と呼び、これがあれば防炎表示を重ねて付けなくてもよいと定めています。
つまりカーペットの世界には、消防が直接管理する表示と、他の法律の表示を消防が認めるという、二つのルートがあるということです。
自分の建物に入るじゅうたんがどちらの表示を持っているのか、まずはラベルを見て確かめることから始まります。
防炎の表示にも、いろいろな種類があるのですね。
知りませんでした。
はい、JISマークもその一つです。
次の章で対象になる建物を確認しましょう。
どんな建物のどんなじゅうたん等が対象になるのか

対象は思っているより広いかもしれません。
建物側は高層建築物・地下街のほか、劇場や旅館、病院など不特定多数の人や避難に弱い人が出入りする防火対象物が政令で指定されています。
物品側は消防法施行規則が「じゅうたん等」として、じゅうたんや毛せん、タフテッドカーペット、ござ、人工芝、合成樹脂製床シートなどを列挙しています。
タイルカーペットもビニル系の床材も、この列挙の中に含まれる床敷物の一種として扱われます。
まず自分の建物がこの対象に入るかどうかを確かめないと、指定表示の話は始まりません。
うちは病院なので、対象になる建物ということですね。
そのとおりです。
次は、その表示にどんなJISマークが使えるのかを見ていきます。
指定表示として認められるJISマークにはどんな種類があるのか

消防庁長官が個別に指定したものだけが対象になります。
これまでに指定されてきたのは、日本産業規格のL4404(織りじゅうたん)、L4405(タフテッドカーペット)、L4406(タイルカーペット)、そして後から加わったA5705(ビニル系床材)の難燃性の表示です。
いずれも、防炎対象物品の材料として使われるものに付され、産業標準化法の規定に基づいて表示されたものに限られます。
ビニル系床材が加わったのは比較的新しく、防炎性能の基準や試験方法が消防法令上のものと同等になったことを踏まえて指定表示に追加された経緯があります。
この4つの規格名を覚えておけば、納品書やカタログを見たときに指定表示かどうかの見当が付けやすくなります。
規格の番号を覚えるのは大変そうです。
覚えなくても大丈夫です。
納品書にJISマークと「難燃」の文字があるかを見れば十分です。
実務で見落としやすいのはどこか

一つずつ確認しておきましょう。
まず、床にのり付けして貼り込む接着形の床材は、従来から床そのものとして扱われ、防炎規制の対象外として運用されている点に注意が必要です。指定表示の対象になるのは、置いて敷くだけの置敷き形の床材とされています。
次に、過去の告示に基づく旧いJISマークも、経過措置として引き続き指定表示としての効力を持っています。新しいマークに切り替わっていないからといって無効ではありません。
最後に、指定表示が付いた生地から現場でカーテンなどを作らせた場合は、指定表示だけで終わらず、処理者や作製者の氏名と年月を明らかにしておく義務が別に生じます。
指定表示は防炎表示の代わりにはなりますが、作製時の記録義務まで免除するものではないということです。
置き敷きか接着かで、扱いが変わるのですね。
はい。
発注前に施工方法も確認しておくと安心です。
明日からなにを確認すればよいのか

特別な検査を自分で行う必要はありません。
納品されたじゅうたんやタイルカーペットに、防炎表示か指定表示のどちらかが見やすい箇所に付いているかをまず確かめてください。
指定表示の場合は、JISマークと「難燃」の文字がセットで表示されているかを見ます。マークだけでは指定表示として認められません。
接着で貼り込む予定の床材であれば、施工方法もあわせて業者に確認しておきましょう。
確認した結果は、防炎対象物点検の記録や図面と一緒に残しておくと、次の点検や模様替えのときにも役立ちます。
今度カーペットを選ぶときは、まずマークを見てみます。
それで十分です。
迷ったときは、遠慮なく確認してください。
よくある質問
まとめ
防炎表示だけでなく、JISマークも見ればいいと分かって安心しました!
表示を見分けるコツは、防炎表示かJISの指定表示のどちらかを確認することです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第8条の3
- 消防法施行令第4条の4
- 消防法施行規則第4条の3第2項
- 消防法施行規則第4条の4第1項・第8項・第9項
- 消防法施行規則第4条の4第8項の指定表示について(総務省消防庁)
- 平成28年12月22日消防庁告示第20号による指定表示の指定
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





