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テナントビルのBCPは管理会社と何を分担するのか|消防計画と事業継続の役割を解説

テナントビルのBCPは管理会社と何を分担するのか

地震や火災のあと、エレベーターの停止や共用部の被害を誰が確認するか決まっていますか。
テナント側が管理会社からの連絡を待つだけでは、重要業務を続けられるか判断する情報が集まりません。
反対に、専有部分の従業員や設備の状況まで管理会社へ任せることもできません。
建物全体と専有部分の役割を分け、初動情報をBCPへ渡す仕組みが必要です。

共用部の被害は、管理会社から連絡が来るまで待てばええですか?

待つだけでは足りません。
連絡する条件と受取先を決めましょう。

うちのBCPにビル管理側の担当者まで書くんですか?

氏名だけやなく、何を確認する窓口かまで書くと動けます。

この記事の結論
  • 消防計画は建物全体と各テナントの防火管理を整合させます。
  • BCPは自社の重要業務を続ける判断を担います。
  • 共用部は管理側、専有部はテナント側を基本に確認項目を分けます。
  • 連絡先だけでなく発信条件と回答期限を決めます。
  • 合同訓練で初動情報の受渡しまで確かめます。

テナントビルで建物全体と専有部分の情報を共有してBCPの事業継続判断へつなぐ流れの図解

テナントビルの消防計画とBCPは誰が担うのか

テナントビルの前で管理者とテナント担当者が役割を確認するアイソメ図
同じ建物に入っていても、管理会社とテナントでは管理できる範囲が違います。
まず法令上の防火管理と、自社のBCPを分けて整理します。
消防法第8条は、一定の防火対象物の管理について権原を有する者に、防火管理者を選任し、消防計画に基づく防火管理上必要な業務を行わせることを求めています。
内閣府の事業継続ガイドラインは、BCPを重要な事業を中断させない、または可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示す計画としています。
消防計画は防火管理、BCPは事業継続の判断を整えます。
管理会社が建物全体の設備や共用部を把握していても、テナントの従業員や業務データまでは判断できません。
一方、テナントだけでは受変電設備、エレベーター、共用階段などの復旧見込みを確定できません。
そこで、消防計画側の防火管理体制と、BCP側の意思決定体制をつなぐ窓口を決めます。
どちらか一方へ責任を集めるのではなく、確認できる範囲を分けることが出発点です。

管理会社が、うちの業務再開まで決めるわけではないんですね。

はい。
建物情報を受けて自社が判断します。

どのテナントビルで全体の調整が必要なのか

テナントビルのロビーと階段や非常口など共用施設を管理者が確認するアイソメ図
すべてのビルに統括防火管理者が必要とは限りません。
建物の用途、規模、高さ、管理権原の分かれ方を確認します。
消防法第8条の2は、高層建築物や一定の複合用途防火対象物などで管理についての権原が分かれている場合、管理権原者が協議して統括防火管理者を定める仕組みを置いています。
消防庁は、対象建物では各管理権原が存する部分ごとの防火管理に加え、建物全体の防火管理を一体的に行うための統括防火管理を説明しています。
法令上の対象判定と、BCP上の連携必要性は別に確認します。
統括防火管理の対象であれば、全体についての消防計画と各テナントの消防計画を整合させます。
対象外の小規模ビルでも、停電、断水、共用階段の閉鎖などが事業継続を左右するなら連絡ルールが必要です。
BCPでは、自社の重要業務が共用設備に依存する度合いを確認します。
賃貸借契約、館内規則、消防計画を並べ、実際の管理範囲を管理側と確かめましょう。

統括防火管理の対象外なら、連携は要らないんですか?

いいえ。
BCPは事業への影響から連携を決めます。

管理会社とテナントは何を分担するのか

テナント事務所で従業員と消火器や緊急連絡先を確認するアイソメ図
役割分担は、担当者の名前だけでは機能しません。
設備、情報、判断の三つに分けて書きます。
消防法施行規則第3条第3項は、管理についての権原が分かれている防火対象物では、各防火管理者の消防計画に当該権原の範囲を定めることを求めています。
内閣府の事業継続ガイドラインは、全社的なBCM実施体制を構築し、BCPの策定、事前対策、教育・訓練、継続的な見直し・改善の役割を割り当てる考え方を示しています。
共用部と専有部を分け、情報の受渡しを決めます。
管理側へは、受変電設備、給排水、エレベーター、共用階段、防火戸、警報設備などの状況を確認します。
テナント側は、従業員の安全、室内の出火や漏水、商品や機器、通信、重要業務の要員を確認します。
共通欄には、発信時刻、確認者、使用できない場所、復旧見込み、次回連絡時刻を置きます。
管理側の情報は建物使用の可否に、テナント側の情報は業務継続の可否に使います。
区分主な確認項目情報の使い道
建物全体共用部、電力、給排水、エレベーター入館や施設利用の判断
専有部分従業員、室内設備、通信、重要業務事業継続や代替拠点の判断

設備の状況と、業務を続けられるかは別の情報なんですね。

そうです。
受け取った情報の使い道まで決めましょう。

管理会社へ任せたつもりになるのはなぜ危険なのか

二つのテナント区画と中央の管理窓口が情報をやり取りするアイソメ図
委託契約や館内規則があっても、災害時の情報が自動で届くとは限りません。
特に夜間や休日は、平日の担当者が不在になることがあります。
消防庁は、統括防火管理の対象建物でも、各管理権原が存する部分ごとに防火管理者を選任して防火管理を行い、これと建物全体の防火管理を組み合わせる仕組みを説明しています。
内閣府の事業継続ガイドラインは、重要業務に不可欠な経営資源を洗い出し、ボトルネックを把握することや、建物・施設の被害を軽減する対策を求めています。
委託の有無ではなく、災害時に情報が届くかを確かめます。
防火管理者を外部委託していても、自社の従業員確認や事業再開の判断まで当然に委託されるわけではありません。
また、管理会社が設備を確認しても、テナントのBCP担当者を知らなければ情報は止まります。
平日昼間だけでなく、夜間、休日、担当者不在、通信障害を想定し、代行者と代替手段を決めます。
未確認の情報は推測で埋めず、確認中として次回連絡時刻を残しましょう。

契約に書いてあるだけでは、連絡が届くとは限らないんですね。

はい。
実際の連絡経路で試してください。

明日から役割分担をどう確認するのか

管理者とテナント担当者が図面とチェックリストで合同訓練を振り返るアイソメ図
分厚い計画を作り直す前に、一枚の役割分担表を作ります。
次の順番なら、消防計画とBCPの食い違いを見つけやすくなります。
消防法第8条の2は、統括防火管理者が全体についての消防計画を作成し、各防火管理者へ必要な指示を行う仕組みを定めています。
内閣府の事業継続ガイドラインは、教育・訓練を実施し、BCPが本当に機能するかを点検・評価して継続的に改善する流れを示しています。
連絡先、確認項目、判断者、期限を一枚にします。
まず、建物全体と専有部分について、平日と夜間休日の窓口を確認します。
次に、停電、火災、浸水、エレベーター停止など、連絡を始める条件を決めます。
受け取る情報と、自社の誰が待機、在宅勤務、代替拠点への移行を判断するかを結びます。
最後に合同訓練を行い、最初の通報からBCP判断までの所要時間と、情報が止まったボトルネックを記録します。
  • 消防計画とBCPの担当者・代行者を並べる
  • 建物全体と専有部分の確認項目を分ける
  • 連絡を始める条件と回答期限を決める
  • 建物情報を受けた自社の判断者を決める
  • 合同訓練で情報の受渡しを計測する

次の訓練は、管理会社からの情報を受け取るところまで試します。

そのあと自社が継続判断するところまで測りましょう。

よくある質問

Q管理会社が消防計画を作ればテナント側は不要ですか?
A管理権原が分かれる建物では、各部分の防火管理と建物全体の防火管理を整合させます。自社部分の必要性は所轄消防署と管理側へ確認してください。
Q統括防火管理者がいればテナントのBCPも任せられますか?
A統括防火管理者は建物全体の防火管理を担います。自社の重要業務を続けるかは、テナント側のBCP責任者が判断できる体制にします。
Q連絡網には何を書けばよいですか?
A平日と夜間休日の窓口、代行者、発信条件、確認項目、回答期限、代替手段を記載し、次回連絡時刻も共有します。
Qテナントだけで訓練してもよいですか?
A自社訓練も必要ですが、少なくとも一度は管理側と情報を受け渡し、建物全体からBCP判断までの流れを確かめましょう。

まとめ

消防計画とBCPは役割を分けてつなぎます。
管理側は建物全体と共用部の情報を確認します。
テナントは専有部と重要業務を確認します。
法令上の対象外でも事業への依存度から連携を決めます。
夜間休日を含む代行者と代替手段を決めます。
未確認の情報は確認中として扱います。
合同訓練でBCP判断までの情報経路を測ります。

管理側との情報の受渡しを、次の訓練で試します!

消防計画とBCPの役割分担を整えましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

※本記事は公表されている法令および内閣府・消防庁の資料に基づく一般的な解説です。施設の用途、規模、管理権原、契約、地域の条例により必要な対応は異なります。個別の消防計画については所轄消防署に、BCPについては建物管理者と自社の業務・リスクに応じてご確認ください。

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