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危険物施設で事故が起きたらまず何をすべきなのか|通報先と応急措置命令の行政代執行までを解説

危険物施設で事故が起きたらまず何をすべきか

危険物を貯蔵し、または取り扱う製造所・貯蔵所・取扱所で、油の流出や火災につながりかねない事故が起きることがあります。
「まず自分たちで何をすべきなのか」「誰に連絡すればよいのか」を知らないまま初動が遅れると、被害はあっという間に広がってしまいます。
消防法第16条の3は、事故発生時の応急の措置から通報、市町村長等による命令、従わなかった場合の行政代執行まで一連の流れを定めています。
この記事では危険物施設が事故に直面したときに何をどこまで求められるのかを条文にそって解説します。

うちの施設で配管から油が漏れているのを見つけたら、まず何をすればいいんでしょうか。

危険物の流出を止める応急の措置と、消防への通報が必要です。
消防法第16条の3に具体的な流れが定められています。

もし命令に従わなかったら、どうなるんでしょうか。

行政が代わって措置を実施することもあります。
順を追って見ていきましょう。

この記事の結論
  • 危険物の流出などの事故が起きたら、施設の所有者・管理者・占有者は直ちに拡散防止や除去の応急の措置を講じなければならない
  • 求められるのは流出・拡散の防止、除去、災害発生の防止という三段構えの対応である
  • 事故を発見した者は、消防署や警察署などへ直ちに通報する義務がある
  • 応急の措置が不十分なとき、市町村長等は施設に対して措置命令を出すことができる
  • 命令に従わない、または従っても不十分なときは行政代執行法に基づき行政が代わって措置を実施できる

危険物施設の事故対応の流れを示す図解

危険物施設で事故が起きたときまず何をすべきなのか

危険物施設のタンクから液体が漏れ土のうと囲いで応急対応する様子のイラスト
配管の継ぎ目や弁から油がにじんでいる、タンクの周りに変色が広がっている。
そんな場面に気づいたとき、消防法は施設の関係者に最初にすべきことを定めています。
消防法第16条の3第1項 製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該製造所、貯蔵所又は取扱所について、危険物の流出その他の事故が発生したときは、直ちに、引き続く危険物の流出及び拡散の防止、流出した危険物の除去その他災害の発生の防止のための応急の措置を講じなければならない。
条文が名指ししているのは所有者・管理者・占有者の三者です。
現場に立ち会っているのがどの立場の人であっても、施設を実質的に支配している人がこの義務を負います。
求められているのは「流出・拡散の防止」「除去」「その他災害の発生の防止」という三段構えの対応です。
専用の消火設備や油吸着材があれば使い、無ければ土のうやオイルフェンスで拡散を食い止めるだけでも意味があります。
この自主的な応急の措置が、このあとの通報や命令の前提になります。

専門の業者を呼ぶ前に、まず自分たちでできることがあるんですね。

そのとおりです。
止める行動が遅れるほど、被害の範囲は広がります。

事故を発見した人は誰に通報しなければならないのか

電話の受話器を上げて消防署へ通報する様子を示すイラスト
応急の措置と並んで、事故の発生をすぐに外部へ知らせることも義務づけられています。
これは施設の関係者に限らず、事故に気づいた人全員に課された義務です。
消防法第16条の3第2項 前項の事態を発見した者は、直ちに、その旨を消防署、市町村長の指定した場所、警察署又は海上警備救難機関に通報しなければならない。
通報先は消防署だけに限られていません。
市町村長があらかじめ指定した場所や、警察署、海上警備救難機関も通報先として条文に並んでいます。
「発見した者」という書き方なので、施設の従業員だけでなく、たまたま近くを通りかかった人にもこの義務がおよびます。
どこに連絡すればよいか迷って通報が遅れると、その分だけ拡散防止の初動も遅れてしまいます。
施設としては通報先の一覧と連絡先を日頃から現場に掲示しておくと迷いがなくなります。

従業員だけじゃなくて、見つけた人全員に通報の義務があるんですね。

はい、だからこそ通報先を分かりやすく掲示しておくことが大切です。

応急の措置をしていないと市町村長等は何ができるのか

役所の建物から施設へ命令書が渡される様子のイラスト
自主的な応急の措置に任せきりにしないため、行政の側にも動く仕組みが用意されています。
措置が講じられていないと行政が判断した場合の対応を見ていきます。
消防法第16条の3第3項 市町村長等は、製造所、貯蔵所(移動タンク貯蔵所を除く。)又は取扱所の所有者、管理者又は占有者が第一項の応急の措置を講じていないと認めるときは、これらの者に対し、同項の応急の措置を講ずべきことを命ずることができる
市町村長等は「命じることができる」立場にあります。
第1項の義務は施設側の自主的な対応を前提にしていますが、それが果たされていないと市町村長等が判断すれば、同じ内容の措置を命令という形で改めて求められます。
ここでいう市町村長等には、消防本部や消防署を置く市町村では市町村長、置かない区域では都道府県知事が当たります。
命令の対象になるのは移動タンク貯蔵所を除く製造所・貯蔵所・取扱所で、移動タンク貯蔵所は次の見出しで扱う別の仕組みが適用されます。
命令を受けてから動くのではなく、命令が出る前に自主対応を終えているのが本来の姿です。

命令が出てから動けばいいというわけではないんですね。

そのとおりです。
命令はあくまで自主対応が果たされなかったときの手段です。

移動タンク貯蔵所の事故は誰が命令を出すのか

道路上のタンクローリーの事故と都道府県庁舎を示すイラスト
タンクローリーのように場所を移動しながら危険物を運ぶ移動タンク貯蔵所は、固定された施設と同じ扱いにはなりません。
命令を出す主体が変わる点が、見落としやすい落とし穴です。
消防法第16条の3第4項 市町村長(消防本部及び消防署を置く市町村以外の市町村の区域においては、当該区域を管轄する都道府県知事とする。)は、その管轄する区域にある移動タンク貯蔵所について、前項の規定の例により、第一項の応急の措置を講ずべきことを命ずることができる
移動タンク貯蔵所の命令主体は「市町村長」に一本化されています。
固定施設の第3項が「市町村長等」なのに対し、移動タンク貯蔵所の第4項は都道府県知事を含まない「市町村長」だけが登場する点が条文上の違いです。
ただし消防本部・消防署を置かない市町村の区域では、その区域を管轄する都道府県知事が市町村長の役割を担います。
事故が起きた道路の所在地を管轄する市町村長が命令主体になるので、タンクローリーの走行区域が変わるたびに窓口も変わり得ることを覚えておく必要があります。
運行事業者としては、想定される走行ルート沿いの通報先をあらかじめ確認しておくと安心です。

走る場所によって窓口が変わるなら、事前に調べておかないと困りますね。

おっしゃるとおりです。
走行ルート沿いの連絡先を事前に整理しておくと安心です。

命令に従わなかったらどうなるのか

施設に代わって行政の車両が応急対応を実施する様子のイラスト
命令を受けてもなお対応が動かないままだと、事態は施設だけの問題では済まなくなります。
最終的にどのような手段が用意されているかを確認しておきましょう。
消防法第16条の3第5項 市町村長等又は市町村長は、それぞれ第三項又は前項の規定により応急の措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又はその措置の履行について期限が付されている場合にあつては履行しても当該期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法の定めるところに従い、当該消防事務に従事する職員又は第三者にその措置をとらせることができる
最後の手段として用意されているのが行政代執行です。
命令を履行しない場合だけでなく、履行しても不十分な場合や、期限までに完了する見込みがない場合も代執行の対象になります。
実施するのは消防事務に従事する職員、または委託を受けた第三者で、施設側の意思にかかわらず措置が実行されます。
代執行にかかった費用は、行政代執行法の定めにより最終的に施設側へ請求されるのが基本の考え方です。
ここまで至らないよう、事故発生の初期段階での応急の措置と通報を確実に行うことが何より重要です。

代執行の費用まで施設側の負担になるとは知りませんでした。

だからこそ、事故が起きた直後の初動がいちばん大切なんです。

よくある質問

Q応急の措置を講じれば、通報はしなくてもよいのですか?
Aいいえ、応急の措置(第1項)と通報(第2項)は別々に課された義務で、どちらか一方をすれば足りるものではありません。両方を直ちに行う必要があります。
Q通報先は消防署だけと考えてよいですか?
Aいいえ、条文には消防署のほかに市町村長の指定した場所・警察署・海上警備救難機関も通報先として並んでいます。事故の場所や状況に応じた通報先を確認しておくとよいでしょう。
Q措置命令に従わなければ、すぐに行政代執行になるのですか?
A条文上は、命令を履行しないとき、履行しても不十分なとき、期限までに完了する見込みがないときに代執行の対象になるとされています。いずれも命令が先にあることが前提です。
Q移動タンク貯蔵所以外の施設は誰が命令を出すのですか?
A条文上の「市町村長等」が命令主体で、消防本部・消防署を置く市町村では市町村長、置かない区域ではその区域を管轄する都道府県知事が担います。

まとめ

事故が起きたら所有者・管理者・占有者が直ちに応急の措置を講じる
求められるのは流出・拡散の防止、除去、災害発生防止の三段構えである
発見者は消防署・市町村長の指定した場所・警察署・海上警備救難機関へ直ちに通報する
措置が不十分なら市町村長等が施設に対して命令を出せる
移動タンク貯蔵所は市町村長(一部区域は都道府県知事)が命令主体になる
命令に従わない、または不十分なときは行政代執行法により行政が代わって措置を実施する
代執行に至る前に、日頃から応急資機材と通報先を施設内で共有しておくことが望ましい

事故が起きたときの流れがよく分かりました。
これで初動に迷わずにすみます。

応急資機材の備えや訓練のご相談は、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第16条の3(e-Gov法令検索)
  • 消防法第11条の5第4項・第5項(e-Gov法令検索)
  • 行政代執行法

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。実際の通報先や命令の運用は地域や事案ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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