上階の会議室は、従業者だけが使う部屋だから収容人員に入らない――そう思い込んでいませんか。
実はその判断、何を決めるための計算かによって答えが変わります。
防火管理者の選任要否では算入しない部屋が、避難器具の設置要否では算入されることがあります。
消防庁への疑義照会が示したのは同じ会議室でも目的が違えば数え方も変わるという線引きです。
うちのビルは(15)項なんですが、上の階の会議室は社員しか使いません。
だから収容人員には入らないんですよね。
それは防火管理者の選任要否の話なら正しいです。
でも避難器具の設置要否では話が変わります。
同じ部屋なのに、何によって数え方が変わるんですか。
実はそこがポイントです。
何の要否を判定するための計算かで結論が変わります。
- 令別表第一(15)項の防火対象物の上階にある会議室を従業者のみが使用する場合、防火管理者選任要否と避難器具設置要否で収容人員の数え方が異なります
- 防火管理者選任要否の算定では、従業者が移動して使用する会議室の収容人員は算入しません
- 避難器具設置要否の算定では、階ごとに算定し会議室の部分を3㎡で除した数を加算します
- 出典は昭和48年10月23日付消防予第140号・消防安第42号の疑義照会です
- 迷ったときは、判定の目的を先に確認してから計算するのが確実です
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目次
なぜ同じ会議室で収容人員の数え方に疑義が生じたのか

よくある光景ですが、収容人員の算定になると答えが割れました。
同じ会議室でも、防火管理者を選任すべきかどうかを見るときの数え方と、避難器具を設置すべきかどうかを見るときの数え方は別の規定に基づいています。
現場ではどちらか一方の計算だけを覚えて、もう一方にもそのまま当てはめてしまう混同が起きやすいところです。
だから最初に確認すべきは、今どちらの要否を判定しているのかという前提です。
収容人員はどの場面でも同じ数字だと思っていました。
判定の目的によって使う規定が変わります。
順番に見ていきましょう。
どんな会議室が対象になるのか

条件を2つに整理できます。
1つ目は、防火対象物が令別表第一(15)項に該当する一般の事務所ビル等であること。2つ目は、会議室を当該防火対象物の従業者のみが使用していることです。
外部の取引先や一般客も利用する会議室、あるいはホテルの宴会場のように従業者以外が主に使う部屋は、この疑義照会が前提とする状況とは異なります。
まず自分のビルが(15)項に該当するか、会議室が本当に従業者専用かを確認してから、次の計算方法に進んでください。
来客も使う会議室だったら、この考え方は当てはまらないんですか。
はい。
従業者以外が使う前提の部屋は、また別の算定方法によります。
防火管理者と避難器具でどう数え方が違うのか

どちらも根拠は令別表第一(15)項の算定方法ですが、会議室の扱いが変わります。
防火管理者選任要否では、従業者が移動して使うだけの会議室は収容人員に算入しません。従業者の数と、従業者以外が使う部分の床面積を3㎡で除した数を合算するだけで足ります。
一方、避難器具設置要否では階ごとに収容人員を算定するため、同じ会議室の床面積も3㎡で除して加算します。避難器具は火災時にその階にいる人がどれだけ逃げられるかを見る規定なので、移動して使う部屋であっても人がいる以上は数に入れる考え方です。
避難器具のほうは、なぜ算入するんでしょうか。
避難器具はその階にいる人の数を見る規定だからです。
移動してきた人も含めて数えます。
実務で見落としやすいのはどこか

「防火管理者は従業者数だけで足りたから、避難器具も同じでよい」と考えてしまうと、避難器具の設置要否を過小に見積もるおそれがあります。会議室を含めて階の収容人員を数え直すと、避難器具の設置基準に該当する人数に達することがあるからです。
また、消防法施行規則第1条の3は昭和48年当時「規則第1条」として引用されていましたが、その後の改正で条番号が第1条の3に移っています。算定方法の内容自体は変わっていないものの、条文を引くときは現行の号数を確認してください。
避難器具の設置基準そのものは消防法施行令第25条が定めており、こちらの階ごとの階数・収容人員の要件と合わせて確認する必要があります。
防火管理者がいらないと分かって、そこで安心していました。
避難器具は別計算なので、そこで安心するのは早いです。
階ごとにもう一度数えてください。
明日からなにを確認すればよいのか

まず、建物が令別表第一(15)項に該当するか、会議室が従業者専用かを確かめます。
次に、防火管理者選任要否を消防法施行規則第1条の3で算定し、従業者が移動して使うだけの会議室は除いて計算します。
続けて、避難器具設置要否は消防法施行令第25条に基づき階ごとに算定し、同じ会議室の床面積を3㎡で除した数を加算し直します。
2つの結果が食い違っていても矛盾ではありません。判定の目的が違えば答えも違って当然と考え、迷ったら所轄消防署に確認してください。
2つの計算を両方ともやり直してみます。
それが確実です。
不安なら所轄消防署にも相談してみてください。
よくある質問
まとめ
同じ部屋でも目的次第で数え方が変わると分かって助かりました。
両方やり直してみます。
防火管理者と避難器具、それぞれの計算を分けて確認すれば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 収容人員算定方法に対する疑義について(昭和48年10月23日付消防予第140号、消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 消防法施行令第1条の2第3項第1号ハ(防火管理者を定めなければならない防火対象物)
- 消防法施行規則第1条の3(収容人員の算定方法)
- 消防法施行令第25条(避難器具に関する基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





