地震後の巡回で、バルコニーの避難ハッチを開けようとしても上ぶたが動きませんでした。
工具で少し持ち上げればよいのか、その階だけ使わないのか、避難経路に関わる設備ほど現場判断に迷います。
避難ハッチは、上ぶただけでなく下ぶた、取付け部、収納された避難はしご、降下空間まで一体で使う設備です。ふたが開かない状態は、見た目だけでは原因と使用可否を決められません。
BCPではこじ開けない、近づかせない、代替経路を周知する、専門点検後に復旧するという順番を決めます。
バールで少し持ち上げたらあきませんか?
工具は使わず近づかせません。
階段へ案内できたら営業できますか?
人数と代替経路を確認して判断します。
- 開かない避難ハッチを工具でこじ開けません
- ハッチ周囲と真下の降下空間を立入制限します
- 階段などの代替避難経路を確認して周知します
- 上ぶた・下ぶた・はしご・取付け部を専門点検します
- 復旧条件と代替経路を消防計画とBCPへ記録します
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目次
地震後に避難ハッチの上ぶたが開かなければ工具でこじ開けてよいのか

結論からいえば、工具でこじ開けず、ハッチ周囲と真下を立入制限します。
上ぶたが動かない原因は、ふたの変形、枠のゆがみ、可動部の損傷、落下物のかみ込みなど複数考えられます。力を加えると、ふたが急に開く、金具が外れる、収納されたはしごが不意に降下するおそれがあります。
まず離れた位置から、上ぶたの浮き、へこみ、枠とのずれ、床の亀裂、落下物を確認します。バルコニー側だけでなく、下階側の降下地点にも人が入らないよう連絡します。
現場ではバールを差し込まない、ふたの上へ乗らない、はしごを引き出そうとしないことを最初に共有します。
ふたの上にも乗らんほうがええんですね。
はい。
急な開放と降下を防ぎます。
どの上ぶたと下ぶたと周囲の空間を対象に確認するのか

開かない上ぶただけでなく、設備全体と避難に必要な空間を一組で確認します。
避難器具用ハッチは、上ぶた、下ぶた、支持部、固定環、格納箱、避難はしごなどで構成されます。上から見える部分だけを直しても、安全に降下できる状態とは限りません。
- 上ぶたのへこみ、浮き、変形、可動部の状態
- 下ぶたの変形と開放方向
- 枠、支持部、固定環、取付け部の緩み
- 収納された避難はしごの格納状態
- ハッチへ近づくまでの操作面積
- 下階までの降下空間と障害物
- 降下後に離れるための避難空地
設備図面と直近の点検票で、避難器具の種類、設置階、降下先、器具番号を確認します。下階が物置や仮設設備の置場になっていれば、ふたが開くかどうかとは別に避難の支障が生じます。
特に上ぶたと下ぶたの連動、はしごの格納状態、降下先の立入管理を同時に整理します。
上ぶたが直っても終わりやないんですね。
降下して離れるところまで確認します。
発見から使用停止と代替経路の周知までどう進めるのか

発見、立入制限、上下階の確認、代替経路の確保、専門点検、復旧記録の順で進めます。
代替経路の案内は、壊れた避難ハッチを直したことにはなりません。点検までの間に避難手段を補う暫定運用として、対象範囲、人数、担当者、終了条件を決めます。
- ハッチの操作範囲と下階の降下地点から人を離す
- コーンやバーで上階と下階を立入制限する
- 階段など利用できる代替避難経路を現場確認する
- 対象区画の在館者へ使えない器具と代替経路を伝える
- 避難誘導担当者へ人数と支援が必要な人を共有する
- 消防設備士などの専門業者へ点検を依頼する
- 復旧確認後に立入制限と暫定運用を解除する
連絡時は、建物名、階、器具番号、上ぶたの変形、開き幅、枠とのずれ、床の亀裂、下階の状態、代替経路、在館人数を伝えます。使用を止める範囲や営業継続の可否は、建物の避難経路と在館者の条件を踏まえて関係者と判断します。
点検までの間は別のハッチへ人を集中させない、手書き案内だけで済ませない、復旧時刻を決めつけないことが大切です。
階段へ案内する担当も決めるんですね。
設備停止と人の誘導を同時に管理します。
ふただけ開けば使えると思うと何を見落とすのか

上ぶたが動いても、下ぶた、はしご、取付け部、降下空間が正常とは限りません。
工具で変形を戻すと、外観だけは改善しても可動部や固定部の損傷が隠れます。急に開いたふたやはしごで人が負傷すれば、避難設備を復旧するつもりが二次災害につながります。
- 上ぶたをこじて枠やヒンジをさらに変形させる
- 下ぶたが開かない状態を見落とす
- はしごの結合部や可動部の損傷を確認しない
- 下階に人や物があるまま展開する
- 床や取付け部の亀裂を見落とす
- 代替経路の収容力と誘導担当を決めない
- 立入制限の解除条件を口頭だけで済ませる
専門点検では、変形や損傷の有無だけでなく、安全に操作できること、確実に展開できること、格納状態へ戻せることまで確認します。工具で一時的に動かせた事実は、復旧確認の代わりになりません。
特に可動部の機能、取付け部の堅固さ、降下空間の安全を分けて記録します。
開いたかどうかだけやと足りへんのですね。
展開から降下まで一連で見ます。
明日から開閉不良と代替経路にどう備えるのか

平常時に器具番号、上下階、代替経路、連絡先、復旧条件を一枚で確認できるようにします。
災害時に初めて下階の部屋番号や降下地点を調べると、立入制限と避難誘導が遅れます。消防計画の避難設備の管理とBCPの業務継続判断を、同じ現場情報でつなぎます。
- 避難ハッチへ器具番号を付け上下階を対応させる
- 操作面積と降下空間へ物を置かない
- 代替となる階段経路を現場で歩いて確認する
- 夜間や停電時の案内方法を決める
- 在館者数と避難支援が必要な人を把握する
- 保守事業者と所轄消防署の連絡先を更新する
- 復旧記録と訓練結果を消防計画とBCPへ反映する
訓練では、ハッチを実際に展開する場合の安全管理だけでなく、使用不能を想定した代替誘導も確認します。器具の操作は点検事業者と事前に調整し、下階の安全を確保して行います。
明日できることは器具番号を確認する、上下階を対応させる、代替階段を歩くの三つです。
上下階の部屋も一緒に確認しときます。
平常時の対応付けが初動を早めます。
よくある質問
まとめ
代替経路と上下階まで確認して訓練します!
避難器具の点検とBCP整備は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 消防法第17条・第17条の3の3
- e-Gov法令検索 消防法施行令第25条
- e-Gov法令検索 消防法施行規則第26条・第27条
- 消防庁 消防用設備等の点検基準 点検要領 点検票
- 消防庁 別表第15 避難器具の点検の基準
- 消防庁 第15 避難器具 点検要領
- 消防庁 別記様式第15 避難器具点検票
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和5年3月
※本記事は公表されている法令および消防庁、内閣府の資料に基づく一般的な解説です。避難器具の設置義務、構造、点検方法、代替避難経路の判断は建物ごとに異なります。実際の立入制限、営業継続、点検、復旧は管理権原者、防火管理者、消防設備士、消防設備点検資格者、保守事業者、所轄消防署へご確認ください。





