マンションのバルコニーで、はしごや緩降機とは違う形の新しい降下装置を見かけることが増えてきました。
車椅子に乗ったまま、電動に頼らず安全に降りられる仕組みだと聞くと、防火管理者として気になるところです。
実はこの装置が消防法施行規則の定める「避難のための器具」に当たるかどうか、消防庁が令和6年の通知ではっきり示しています。
認められる条件と、見落としやすい注意点を通知の内容から確認します。
うちのマンションでも車椅子用の降下装置を見たことがあります。
あれは避難器具として数えていいのでしょうか。
消防庁が令和6年に出した通知で、その質問にはっきり答えています。
まずは通知の中身を一緒に見ていきましょう。
普通の緩降機とは形が全然違うので不安でした。
形が違っても認められることがあるのですね。
条件付きで認められています。
その条件を見落とすと導入後に困ることになります。
- 消防庁は令和6年3月1日の消防予第108号で、新型の降下式避難装置についての質疑応答を示しました。
- 車椅子搭乗部と介助者搭乗部を備えた降下式の装置も、条件を満たせば避難のための器具として扱ってよいとされました。
- 対象は、消防法施行規則第26条第5項第2号ロが定める、バルコニー等に設けられた避難のための設備・器具です。
- 火災時に安全に避難する性能について第三者機関の認証を受けたものであることが望ましいとされていますが、これはあくまで推奨であり義務ではありません。
- 導入を検討するときは、認証の有無を確認したうえで所轄消防署に事前相談することが欠かせません。
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目次
車椅子用の降下式避難装置はなぜ通知で扱われたのか

バルコニーの避難器具といえば、はしごや緩降機、救助袋を思い浮かべる方が多いはずです。
そこに近年、車椅子ごと乗って降りられる新しい装置が登場しました。
これまで規則が想定していたのは、タラップやはしご、緩降機、救助袋といった昔からある器具でした。
ところが車椅子搭乗部を備えた昇降式の装置が実際にバルコニーへ設置されるようになり、現場の消防本部は判断に迷いました。
そこで消防庁は令和6年3月1日付けの消防予第108号で、実務者向けの質疑応答としてこの疑問に答えました。
まずはどんなバルコニーが対象になるのかを見ていきます。
見た目が全然違うので、法律の言葉に当てはまるのか心配になります。
形が違っても機能で判断されます。
次は対象になるバルコニーを確認します。
どのバルコニーのどんな器具が対象になるのか

この器具が問題になるのは、避難器具の設置を省略できるバルコニーの場面です。
条文を確認すると対象がはっきりします。
規則は、居室のバルコニー等が避難上有効に設けられ、そこから地上まで降りられる設備や器具があれば、その階の避難器具を減らしたり省略したりできると定めています。
その「地上に通ずる…設備若しくは器具」の具体例として、昭和43年の通知はタラップ・ステップ・はしご・緩降機・救助袋を挙げてきました。
つまり対象になるのは、この一覧に当てはまる器具がバルコニーに設置されている階です。
新しい装置がこの一覧に加わるかどうかが、まさに今回の通知の論点になります。
うちのバルコニーにも緩降機が付いています。
新しい装置に替えても大丈夫でしょうか。
条文が求めるのは地上まで降りられる機能です。
次は通知が何を認めたのかを見ます。
通知は装置の何を認めているのか

通知が扱った装置は、電動を使わずに自動で昇り降りする珍しい仕組みです。
構造を知っておくと理解しやすくなります。
装置は緩降装置の力で速度を抑えながら降下し、揺れや衝撃が少ないつくりになっています。
車椅子に乗ったまま搭乗できる部分と、介助者が同乗できる部分をそれぞれ備え、最大使用荷重も区別して定められています。
電力や動力を使わず、降りたあとは昇降架台が自動で元の位置へ戻るため、連続して複数人が避難できます。
消防庁はこの仕組みを踏まえ、規則第26条第5項第2号ロの器具として扱ってよいと答えました。
電気を使わないなら停電のときも安心ですね。
そのとおりです。
ただし答えにはもう一つ条件が付いています。
実務で見落としやすいのはどこか

「差し支えない」という言葉だけを見て安心すると、見落としが起きます。
答えにはもう一段落、条件が続いていました。
「望ましい」という言葉のとおり、第三者機関の認証は法律上の義務として課されているわけではありません。
そのため、メーカーの説明だけを鵜呑みにして認証の有無を確認しないまま導入してしまう建物が出てくるおそれがあります。
また今回の通知は、あくまで規則第26条第5項第2号ロの「器具に該当するか」を答えたものであり、装置そのものの性能や耐久性まで消防庁が保証したものではありません。
導入前に認証の有無を確認する一手間が、あとの見落としを防ぎます。
認証が付いているかまでは確認していませんでした。
そこが見落としやすいポイントです。
次は導入前の確認手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

順番は装置の確認から始め、最後に消防署への相談で締めくくります。
この通知の性格を踏まえておくことも大切です。
第三者機関の認証プレートや証明書が添付されているかを、メーカーや設置業者に確認します。
次に、装置が設置されるバルコニーが規則第26条第5項第2号ロの要件(避難上有効な設置・地上へ通ずる経路)を満たしているかを確かめます。
そのうえで、所轄消防署へ事前相談し、この通知は助言であるため最終的な判断は所轄の消防本部に委ねられていることを踏まえて進めます。
設置後も、他の避難器具と同じように維持台帳へ記録し、点検を続けることが欠かせません。
まずは認証プレートを確認してみます。
それが確実な第一歩です。
点検の継続も忘れずに進めましょう。
よくある質問
まとめ
認証の有無を確認するところから始めます!
消防署への相談も進めます。
維持台帳の整え方まで一緒に確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「消防用設備等に係る執務資料の送付について」(令和6年3月1日消防予第108号)
- 「消防法施行規則の一部を改正する省令の施行について」(昭和43年1月6日消防予第8号)
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第26条第5項第2号ロ
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





