BLOG

耐熱電線はなぜ操作回路の金属管工事を省略できるのか|JISの傾斜試験と380度15分間の耐熱試験を解説

耐熱電線はなぜ金属管工事を省略できるのか

自動火災報知設備や屋内消火栓設備などの操作回路の配線は、原則として金属管工事などで保護されます。
ただし条文にはただし書があり、そこに耐熱電線の基準が結びついています。
その基準はJISの傾斜試験や380度15分間の耐熱試験という具体的な数値で線引きされています。
この記事では条文の委任構造から試験の中身、表示の見方まで順番に解説します。

うちの現場では配管を使わず電線だけで配線している場所があります。
これは基準違反にならないんでしょうか。

その電線が耐熱電線の基準に適合していれば問題ありません。
まずは条文の委任構造から見てみましょう。

普通の電線と耐熱電線は何が違うんですか。
見ただけでは分からない気がします。

傾斜試験や耐熱試験に合格したものだけが耐熱電線と呼べるんです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 操作回路の配線は消防庁長官が定める基準に適合すれば金属管工事を省略できます。
  • その基準(耐熱電線の基準)は消防法施行規則第12条第1項第5号ロただし書に基づいて定められています。
  • 一般性能はJISの傾斜試験で60秒以内に自然に消える難燃性が求められます。
  • 耐熱試験は380度プラスマイナス38度の加熱炉で15分間加熱し絶縁抵抗などを確認します。
  • 高難燃ノンハロゲン耐熱電線は追加で3つの試験に合格しなければなりません。

耐熱電線の基準を条文の委任構造傾斜試験耐熱試験高難燃ノンハロゲン試験表示確認の4段階でまとめた図解

操作回路の配線はなぜ金属管工事でなくてもよいことがあるのか

金属管工事と単体の耐熱電線による配線の2つの方法を示す図
自動火災報知設備や屋内消火栓設備の操作回路は、原則として金属管工事などで保護されます。
けれど条文にはただし書があり、そこに耐熱電線の基準が結びついています。
消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第5号 操作回路又は第三号ロの灯火の回路の配線は、電気工作物に係る法令の規定によるほか、次のイ及びロに定めるところによる。ロ 金属管工事、可とう電線管工事、金属ダクト工事又はケーブル工事(不燃性のダクトに布設するものに限る。)により設けること。ただし、消防庁長官が定める基準に適合する電線を使用する場合は、この限りでない。耐熱電線の基準(平成9年12月18日消防庁告示第11号)第一 趣旨 この告示は、消防法施行規則第12条第1項第5号ロただし書に規定する電線(以下「耐熱電線」という。)の基準を定めるものとする。第二 用語の意義 一 電線 弱電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した導体又は絶縁物で被覆した上を保護被覆で保護した導体をいう。
金属管工事の代わりに、耐熱電線という電線そのものの性能で置き換えることが認められています。
この規則第12条は屋内消火栓設備の基準ですが、耐熱電線の基準は他の設備の同種のただし書からも共通して引用されます。
自動火災報知設備の配線や光ファイバケーブルの特例も、この告示の「耐熱電線と同等以上」という表現を根拠にしています。
つまり耐熱電線の基準は一つの設備だけでなく、電気配線全体を支える横断的な基準です。
では耐熱電線と認められるには、どんな性能が求められるのでしょうか。

金属管を使わずに配線してよいなんて、意外な気がします。
なぜそんな例外が認められているんですか。

配管の代わりに電線自体の性能で燃え広がりを防ぐという考え方なんです。
次はその性能の中身を見てみましょう。

耐熱電線と認められるための一般性能とは何か

傾斜試験で炎が60秒以内に自然に消える耐熱電線の一般性能を示す図
耐熱電線と名乗るには、まず基本的な性能をクリアする必要があります。
それは電気設備そのものの技術基準への適合と、燃え広がりにくさの2点です。
耐熱電線の基準(平成9年12月18日消防庁告示第11号)第三 一般性能 耐熱電線の一般性能は、次に定めるところによる。一 耐熱電線は、電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号)の規定に適用するものであること。二 保護被覆の難燃性は、JIS C3005の傾斜試験を行った場合において、60秒以内に炎が自然に消えるものであること。
保護被覆は、傾けた状態で炎を当てても60秒以内に自然に消える難燃性が求められます。
これはJIS C3005という規格で定められた傾斜試験で確かめます。
まず電気設備に関する技術基準を定める省令に適合していることが大前提で、そのうえで難燃性を試験で確認する、という二段構えです。
この一般性能だけでは終わらず、さらに踏み込んだ耐熱試験が別に用意されています。
では耐熱試験はどんな条件で行われるのでしょうか。

傾けて燃やして60秒以内に消えるかを見るんですね。
普通の電線と何が違うんでしょうか。

普通の電線には、この傾斜試験の基準そのものがありません。
次は本番の耐熱試験を見てみましょう。

耐熱試験はどんな条件で行われるのか

けい酸カルシウム板に巻いた電線を380度の加熱炉で15分間加熱する耐熱試験の図
一般性能だけでなく、実際に高温にさらす耐熱試験そのものにも合格しなければなりません。
試験体の作り方から判定基準まで、細かく数値が決められています。
耐熱電線の基準(平成9年12月18日消防庁告示第11号)第五 耐熱試験 一 試験体 試験体は、長さ1.3メートルの電線を縦300ミリメートル、横300ミリメートル、厚さ10ミリメートルのけい酸カルシウム板等に固定線(太さ1.6ミリメートルの金属線)で二重巻きにして取り付け、その中央部に自重の2倍の荷重をかけたものであること。二 加熱炉 試験体を挿入しない状態で加熱した場合において、380度プラスマイナス38度の温度を15分間以上保つことができるものであること。四 判定 耐熱試験の結果の判定は、試験体が次に掲げる条件に適合しているものを合格とする。(一)絶縁抵抗は、直流500ボルトの絶縁抵抗計で測定した値が、加熱前にあっては50メガオーム以上、加熱中にあっては0.1メガオーム以上であること。(三)保護被覆は、加熱を終了した後において、加熱炉の内壁から測定して150ミリメートル以上燃焼していないこと。
試験体はけい酸カルシウム板に固定した電線に自重の2倍の荷重をかけ、380度前後の加熱炉で15分間加熱します。
加熱前は絶縁抵抗が50メガオーム以上、加熱中でも0.1メガオーム以上を保てなければ不合格です。
保護被覆が炉の内壁から150ミリメートル以上燃えてしまった場合も不合格になります。
荷重をかけながら高温にさらすので、単に燃えないだけでなく、垂れ下がらず機能を保てるかまで見られています。
点検の場では試験を再現できないので、メーカーの試験成績書で確認することになります。

荷重までかけて燃やすなんて、かなり厳しい試験なんですね。
普通の電線ではまず通らなそうです。

絶縁抵抗と保護被覆の燃焼範囲まで細かく決まっています。
次はさらに厳しい試験が必要になるケースです。

高難燃ノンハロゲン耐熱電線だけ試験が増えるのはなぜか

高難燃性試験発煙濃度試験燃焼時発生ガス試験の3つの試験装置を示す図
耐熱電線の中には、絶縁物にハロゲンを使わない種類があります。
このタイプだけ、耐熱試験に加えてさらに3つの試験を受けなければなりません。
耐熱電線の基準(平成9年12月18日消防庁告示第11号)第二 用語の意義 二 高難燃ノンハロゲン耐熱電線 耐熱電線のうち、絶縁物、保護被覆を構成する材料にハロゲン(ふっ素、塩素、臭素、よう素及びアスタチンをいう。)を含まないものをいう。第六 高難燃ノンハロゲン性試験 高難燃ノンハロゲン性試験は、電線の高難燃性試験、発煙濃度試験及び燃焼時発生ガス試験を行い、そのいずれにも適合するものを合格とする。三 燃焼時発生ガス試験 (四)ガス洗浄容器内の水素イオン濃度の最小値の平均が3.5以上であること。
高難燃ノンハロゲン耐熱電線は、燃えにくさだけでなく発煙と発生ガスの安全性まで試験で確認します。
高難燃性試験は上端まで燃焼しないことを、発煙濃度試験は煙で視界がどこまで奪われるかを確かめます。
燃焼時発生ガス試験は絶縁物を燃やしたときに出るガスを水に通し、水素イオン濃度の平均が3.5以上であることまで求めます。
ハロゲンを含む電線は燃えると有毒なガスや強い腐食性の煙を出しやすいため、含まない代わりにこの3試験で安全性を裏付ける仕組みです。
避難経路に近い場所ほど、この高難燃ノンハロゲン耐熱電線が選ばれる理由でもあります。

ハロゲンを含まないほうが、かえって試験が増えるんですね。
なぜそうなるんですか。

ハロゲンが無い分、発煙や発生ガスの安全性を別に確かめる必要があるからです。
次は現場での確認方法です。

現場では何を確認すればよいのか

ケーブルの表示タグと点検チェックリストの図
試験の中身を知っているだけでは足りず、実際の電線がその基準に適合しているかを確かめる必要があります。
現場で見るべきは、電線そのものに付けられた表示です。
耐熱電線の基準(平成9年12月18日消防庁告示第11号)第七 表示 耐熱電線には、次の各号に掲げる事項を見やすい箇所に容易に消えないように表示するものとする。一 製造者名又は商標 二 製造年 三 耐熱電線である旨の表示 四 高難燃ノンハロゲン耐熱電線にあっては、NH
  • 配線が金属管工事ではなくケーブル単体で通っている箇所を見つける
  • 製造者名・製造年・耐熱電線である旨の表示が電線に付いているかを確認する
  • 高難燃ノンハロゲン耐熱電線であれば「NH」の表示があるかも見る
  • 表示だけで判断できない場合はメーカーの試験成績書を取り寄せる
  • 改修や増設のときは新しく通す電線がこの基準に適合しているか事前に確認する
表示の確認こそが、告示の基準を満たしているかどうかの唯一の手がかりです。
見た目だけでは普通の電線と区別がつかないからこそ、この表示を見落とさないようにしましょう。

電線そのものに表示があるなんて知りませんでした。

「NH」の文字まで確認できれば確実です

よくある質問

Q耐熱電線を使えば、必ず金属管工事を省略できますか?
Aいいえ、対象は操作回路又は表示灯回路の配線に限られ、そこに耐熱電線の基準に適合する電線を使う場合だけです。
Q耐熱電線の一般性能は、どんな試験で確認しますか?
AJIS C3005の傾斜試験で、60秒以内に炎が自然に消えることを確認します。
Q耐熱試験の加熱炉は何度で何分間加熱しますか?
A380度プラスマイナス38度の温度で15分間加熱します。
Q高難燃ノンハロゲン耐熱電線かどうかは、どこで見分けますか?
A表示に「NH」の文字があるかどうかで見分けます。

まとめ

耐熱電線の基準(平成9年12月18日消防庁告示第11号)は、消防法施行規則第12条第1項第5号ロただし書に基づいて定められています。
操作回路の配線は、金属管工事の代わりに耐熱電線という電線そのものの性能で満たすこともできます。
一般性能はJIS C3005の傾斜試験で60秒以内に自然に消える難燃性が求められます。
耐熱試験は380度プラスマイナス38度の加熱炉で15分間加熱し、絶縁抵抗などを確認します。
保護被覆は加熱炉の内壁から150ミリメートル以上燃焼していないことが合格条件です。
高難燃ノンハロゲン耐熱電線は高難燃性試験・発煙濃度試験・燃焼時発生ガス試験の3つに追加で合格しなければなりません。
現場では電線の表示を確認し、高難燃ノンハロゲン耐熱電線なら「NH」の文字も見ておきましょう。

耐熱電線の基準がここまでよく分かりました!

電線の表示を見比べるところから始めましょう
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第5号ロ
  • 耐熱電線の基準(平成9年12月18日消防庁告示第11号)第一・第二・第三・第五・第六・第七

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
耐熱電線はなぜ金属管工事を省略できるのか
自動火災報知設備や屋内消火栓設備などの操作回路の配線は、原則として金属管工事などで保護されます。 ただし条文にはただし書があり、そこに耐熱電線の基準が結びついています。 その基準はJISの傾斜試験や380度15分間の耐熱...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →