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令8区画を貫通する配管はなぜ鋼管等でも認められるのか|耐火二層管とは別の被覆方法とJIS規格を解説

集合住宅の配管シャフトで区画を貫通する配管のイメージ

マンションの住戸を区切る壁や床には、燃え広がりを止めるための厳しい構造基準があります。
ところがその壁を給水管や排水管が貫通していく以上、どこかに配管を通す方法を決めておく必要があります。
消防庁は長年この配管の扱いを通知で具体的に示しており、令和6年にはその引用条文が書き換えられました。
耐火二層管とは別の方法として、鋼管等を使う場合の具体的な基準を整理します。

うちのマンションの配管点検で「鋼管でも区画は貫通できます」と言われたんですが、
塩ビの耐火二層管じゃなくてもいいんですか。

はい、消防庁の通知に鋼管等を使う方法もきちんと定められています。
今日はその中身を整理してご説明しますね。

令和6年に改正されたとも聞きました。
何が変わったんでしょうか。

技術基準そのものは変わっていません。
もとになる政令の条文番号がずれたので、通知の引用先を書き直したという改正です。

この記事の結論
  • 令8区画・共住区画は原則として配管を貫通させてはならない区画です。
  • 例外として認められる方法の一つが、JIS等の規格に適合した鋼管等を使う方法です。
  • 貫通部はセメントモルタルかロックウールで隙間なく塞ぐことが求められます。
  • 配管の表面から150ミリメートル以内に可燃物があるときは被覆等の措置が必要です。
  • 令和6年の改正は条文番号の書き換えだけで、技術基準そのものは変わっていません

鋼管等でも満たせる貫通部の基準を示す図解

共住区画を貫通する配管はなぜ改めて基準が示されたのか

令8区画・共住区画を貫通する配管と通知文書のイメージ
住戸と住戸の間を仕切る壁は、火災を隣に広げないための重要な区画です。
この区画に配管を通す方法を、消防庁は長年ひとつの通知でまとめてきました。
「令8区画及び共住区画を貫通する配管等に関する運用について」の一部改正について(令和6年3月29日 消防予第156号) 消防法施行令の一部を改正する政令(令和6年政令第7号)及び消防法施行規則の一部を改正する省令(令和6年総務省令第25号)が公布されたことに伴い、344号通知を別添のとおり改正し、令和6年4月1日から施行しますので通知します。
消防法施行令第8条第1項第1号 開口部のない耐火構造(建築基準法第二条第七号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)の床又は壁
この改正は書き換えだけで、貫通部の技術基準は変わっていません。
もとになっているのは平成19年に出た消防予第344号という通知です。
令和6年の政令改正で「開口部のない耐火構造の床又は壁」の号番号がずれたため、344号が引用していた条文の書き方を合わせただけでした。
つまり令8区画・共住区画を貫通する配管の技術基準そのものは変わっていないまま、20年近く前から積み上げられてきたということです。

条文の番号が変わっただけなら、
現場の工事のやり方は何も変わらないということですか。

そのとおりです。
ただし古い改修工事の記録には旧条文の番号が残っていることもあるので、読み替えだけ意識してください。

どの配管がこの基準の対象になるのか

給湯器や燃焼機器につながる配管が区画を貫通するイメージ
対象になるのは給排水管だけではありません。
共住区画では、住戸内の燃焼機器に燃料を送る配管も同じ枠組みで扱われます。
令8区画及び共住区画を貫通する配管等に関する運用について(別添1) 共住区画を貫通する燃料供給配管のうち、次により設置されているものにあっては、位置・構造告示第3の第3号(4)に適合するものとして取り扱って差し支えないものであること。配管の用途は共同住宅の各住戸に設けられている燃焼機器に、灯油又は重油を供給するものであること。
消防法施行規則第5条の2第4号 耐火構造の壁等は、配管を貫通させないこと。ただし、配管及び当該配管が貫通する部分が次に掲げる基準に適合する場合は、この限りでない。
対象は給排水管と、共住区画に限っては灯油・重油の燃料供給配管です。
給排水管の場合は、呼び径200ミリメートル以下・貫通部の断面積が直径300ミリメートルの円以下であることが施行規則の前提条件になります。
燃料供給配管は、日本工業規格(JIS)H3300の銅及び銅合金の継目無管を含むものであることが条件です。
どちらも令8区画・共住区画を貫通している部分そのものでは、配管をつなぎ合わせてはいけません。

うちは各住戸に灯油ボイラーがあるんですが、
その配管も対象になるということですね。

はい、灯油や重油を各住戸に送る配管も共住区画を貫通する以上は対象です。
継手の規格まで通知で決まっているので、次に工事記録を見ておきましょう。

鋼管等を使うとき何を満たす必要があるのか

鋼管の周囲にロックウールを巻きモルタルで固めるイメージ
鋼管等を使う場合は、規格品であることに加えて貫通部の処理方法まで細かく決まっています。
すき間の埋め方を誤ると、耐火構造の壁としての性能そのものが失われます。
別添 鋼管等の種類(抜粋) JIS G3442(水配管用亜鉛めっき鋼管)、JIS G3452(配管用炭素鋼管)、JIS G5525(排水用鋳鉄管)等。貫通部の処理 ロックウール充填後、25ミリメートル以上のケイ酸カルシウム板又は0.5ミリメートル以上の鋼板を床又は壁と50ミリメートル以上重なるように貫通部に蓋をし、アンカーボルト、コンクリート釘等で固定すること
使える鋼管は日本工業規格などの規格品に限られます。
水配管用亜鉛めっき鋼管や配管用炭素鋼管など、通知は14種類のJIS・JWWA・WSP規格をそのまま列挙しています。
貫通部の処理はセメントモルタルで密に充填する方法と、ロックウールを充填したうえで板でふさぐ方法の2種類が示されています。
どちらの方法も、貫通部及びその両側1m以上の範囲は必ず対象の鋼管等とすることが前提です。

すき間を埋めるだけなら、
普通のパテやコーキング剤でもいいんじゃないですか。

通知が認めているのはモルタルかロックウールの2方法だけです。
材料や厚みを変えると認定を受けた性能が保証されなくなります。

可燃物との距離で見落としやすいのはどこか

可燃物に接触する配管と被覆された配管を比較するイメージ
貫通部そのものだけでなく、配管の周囲にある木材などにも注意が必要です。
熱を持った配管が可燃物に触れ続けると、区画とは別の場所から出火するおそれがあります。
別添 可燃物への着火防止措置 配管等の表面から150ミリメートルの範囲に可燃物が存する場合には、次の措置を講ずること。被覆材はロックウール保温材(充填密度150kg/立方メートル以上のものに限る。)又はこれと同等以上の耐熱性を有する材料で造った厚さ25ミリメートル以上の保温筒、保温帯等とすること。
盲点は配管そのものより、そばにある木材や合板です。
配管の表面から150ミリメートル以内に可燃物があると、呼び径によって被覆の範囲まで変わります。
呼び径100以下なら貫通部から60センチメートルの範囲を一重に被覆し、100を超え200以下ならさらに30センチメートルの範囲をもう一重被覆しなければなりません。
給排水管は、内部が常に充水されているか、木軸や合板など熱で容易に着火しないものに限られるかのどちらかであれば、この被覆を省略できます。

配管の近くに木の下地があるかなんて、
ふだんの点検では見落としそうです。

おっしゃるとおりで、見落としが一番多いポイントです。
天井裏や床下点検口を開けたときは配管周りの下地材まで見る習慣をつけてください。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストと配管の貫通部を確認するイメージ
配管そのものを新しく取り替えるのは大掛かりな工事です。
まずは今ある配管が基準を満たしているかを、図面と現地の両方で確かめることから始めます。
別添 配管等の接続 配管等は、令8区画及び共住区画を貫通している部分において接続しないこと。鋼管等の接続部の近傍を支持するほか、必要に応じて支持すること。
まず見るべきは、配管の種類と貫通部の処理記録です。
新築時の施工図や改修工事の記録に、鋼管等の規格名とモルタルかロックウールかの処理方法が残っているかを確認します。
次に、貫通部から1mの範囲に継手やつなぎ目が無いか、配管周辺150ミリメートル以内に可燃物が接触していないかを現地で見ます。
記録が無い、または現地の状態と食い違う場合は、所轄消防署に相談したうえで改修の要否を判断してください。

図面が残っていない古い建物だと、
どうすればいいでしょうか。

その場合は点検口を開けて現物を確認するのが確実です。
私たちのような専門業者に同行してもらうと記録も一緒に整理できます。

よくある質問

Q耐火二層管を使えば鋼管の基準は無視してよいですか?
Aはい、耐火二層管は国土交通大臣の認定を受けた別の方法なので、この記事で扱う鋼管等の基準とは併用せず、どちらか一方の方法を選んで使います。
Q対象はマンションだけですか?
A共住区画は特定共同住宅等の住戸を区切る区画に限られますが、令8区画は消防法施行令第8条の対象となる防火対象物であれば共同住宅以外にも適用されます。
Q貫通部の処理はモルタルとロックウールのどちらでもよいのですか?
A通知が示すセメントモルタルかロックウールのいずれかの方法であれば認められますが、施工方法を独自に変えることはできません。
Q古い建物で53号通知の時代に施工された配管はどうなりますか?
A53号通知は平成19年の344号通知で既に廃止されており、現在は344号通知(令和6年改正)の基準で確認する必要があります。

まとめ

令8区画・共住区画は原則として配管を貫通させてはならない区画です。
令和6年の改正は政令の条文番号の書き換えで、技術基準そのものは変わっていません。
対象は給排水管に加え、共住区画では灯油・重油の燃料供給配管も含まれます。
鋼管等はJIS・JWWA・WSP等の規格品に限られます。
貫通部はセメントモルタルかロックウールで隙間なく塞ぎます。
配管の表面から150ミリメートル以内の可燃物には被覆等の措置が必要です。
記録が無い・現地と食い違うときは所轄消防署に相談してから改修を判断します。

配管の種類と貫通部の処理記録を確認するところから始めてみます!

記録が無かったり判断に迷ったりしたときは、㈱防災屋でもご相談を承っております

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「令8区画及び共住区画を貫通する配管等に関する運用について」の一部改正について(令和6年3月29日 消防予第156号、消防庁予防課長)
  • 令8区画及び共住区画を貫通する配管等に関する運用について(通知)(平成19年10月5日 消防予第344号、令和6年3月29日消防予第156号改正)
  • 消防法施行令第8条第1項第1号・消防法施行規則第5条の2第4号
  • 特定共同住宅等の位置、構造及び設備を定める件(平成17年消防庁告示第2号)第3第3号(4)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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