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非常電源専用受電設備はなぜ低圧受電だと絶縁耐力試験を受けなくてよいのか|配電盤の耐熱区分と接地抵抗の合格基準を解説

低圧で受電する非常電源専用受電設備の配電盤とアイキャッチタイトル

低圧で受電する非常電源専用受電設備は、高圧受電のキュービクル式と違って身近な建物にも数多く使われていますが、検査で何を確かめているかは意外と知られていません。
配電盤は設置場所に応じて一種耐熱形・二種耐熱形・一般形という種別に分かれ、種別ごとに確保すべき保有距離も変わります。
電気系統の安全性は絶縁抵抗試験と接地抵抗試験という二つの測定で確かめられており、高圧受電の絶縁耐力試験とは異なる基準が使われます。
今回は低圧で受電する非常電源専用受電設備の配電盤の種別分類・保有距離・絶縁抵抗試験・接地抵抗試験・試験結果報告書の記載例を解説します。

非常電源専用受電設備というと、高圧受電のキュービクル式しか思い浮かびませんでした。

実は低圧で受電するタイプもあり、身近な建物でよく使われているんですよ。

低圧なら検査も簡単で済むということですか。

いいえ、低圧には低圧なりの絶縁抵抗試験接地抵抗試験があります。
まずは配電盤の種別から見ていきましょう。

この記事の結論
  • 配電盤は設置場所に応じて一種耐熱形・二種耐熱形・一般形の三種別に分かれます
  • 一種耐熱形配電盤等の保有距離は操作面1.0メートル以上(相互に面する場合は1.2メートル以上)です
  • 接地抵抗の合格基準は300ボルト以下がD種で100オーム以下、300ボルトを超えるとC種で10オーム以下です
  • 絶縁抵抗試験は測定値5メガオーム以上であることが求められます
  • 試験結果報告書には接地抵抗や絶縁抵抗の実測値をそのまま記入します

低圧で受電する非常電源専用受電設備を検査でどう確かめるかを示す図解

配電盤の種別はなぜ設置場所で変わるのか

不燃材料で区画された専用の室に設置された低圧受電の配電盤を示す図
低圧で受電する非常電源専用受電設備の配電盤は、どこに置いてもよいわけではありません。
設置場所ごとに、収める配電盤の耐熱区分が決まっています。
設置場所に対応して配電盤等の種別が、次のとおりとなっていること。不燃材料で造られた壁、柱、床及び天井(天井のない場合は屋根)で区画され、かつ、窓及び出入口に防火戸を設けた専用の室(不燃専用室)は一種耐熱形配電盤等。屋外又は主要構造部を耐火構造とした建築物の屋上(隣接する建築物等から3メートル以上の距離を有する場合等に限る。)は一種耐熱形配電盤等、二種耐熱形配電盤等又は一般形配電盤等。不燃材料で区画された変電設備室、機械室、ポンプ室その他これらに類する室は一種耐熱形配電盤等又は二種耐熱形配電盤等。耐火性能を有するパイプシャフトは二種耐熱形配電盤等。上記以外の場所は一種耐熱形配電盤等。(消防庁「消防用設備等の試験基準」第25 非常電源(低圧で受電する非常電源専用受電設備) ア 外観試験)
配電盤の耐熱性能は、設置する場所の火災リスクに応じて使い分けられています。
不燃専用室のように壁・床・天井を不燃材料で区画し防火戸まで備えた部屋なら、いちばん軽い一種耐熱形配電盤等で足ります。
一方、屋上や機械室のように延焼のおそれがある場所では、二種耐熱形以上の配電盤が求められる場合があります。
耐火性能を有するパイプシャフトはさらに厳しく、二種耐熱形配電盤等でなければ設置できません。
つまり配電盤を選ぶ前に、まず設置場所がどの区分に当たるかを確認する必要があるということです。

うちの配電盤は電気室に置いていますが、それなら一番軽い区分で大丈夫ということですね。

専用の室で防火戸まで備わっていれば、そのとおりです。
次は保有距離の違いを見てみましょう。

一種耐熱形配電盤と一般形配電盤で保有距離はどう違うのか

配電盤の操作面と点検面の保有距離をメジャーで測る図
配電盤は種別ごとに、周囲へ確保すべき保有距離の数値が変わります。
特に屋外や屋上に置くときは、種別による差がはっきり出ます。
配電盤等は、次表に掲げる数値以上の保有距離を有して設置されていること。一種耐熱形配電盤等及び二種耐熱形配電盤等は、操作面1.0メートル以上(操作を行う面が相互に面する場合は1.2メートル以上)、点検面0.6メートル以上(点検に支障とならない部分についてはこの限りでない)、屋外・屋上で建築物等と相対する面は1.0メートル以上。一般形配電盤等は、操作面及び点検面は同じ数値であるが、屋外・屋上で建築物等と相対する面は3.0メートル以上。(消防庁「消防用設備等の試験基準」第25 非常電源(低圧で受電する非常電源専用受電設備) ア 外観試験)
操作面と点検面の数値は種別が違っても共通ですが、屋外や屋上で建築物と向き合う面だけは種別で差が付きます。
一種耐熱形配電盤等と二種耐熱形配電盤等なら1.0メートル以上で足りるのに対し、一般形配電盤等は3.0メートル以上と3倍の距離が必要です。
これは、耐熱性能の低い一般形配電盤等ほど、隣接する建築物からの延焼リスクを距離で補う必要があるためと考えられます。
操作を行う面どうしが向かい合う配置では、1.0メートルではなく1.2メートル以上の余裕を確保することも忘れてはいけません。
検査ではこの数値をメジャーで実際に測り、表の値を下回っていないかを確認します。

屋上に置く配電盤だけ距離が3倍というのは、意外でした。

耐熱性能が低い分を距離で補っているんです。
次は電気系統の測定試験を見てみましょう。

低圧受電の非常電源はなぜ絶縁耐力試験でなく絶縁抵抗試験で足りるのか

絶縁抵抗計で配電盤内部の充電部を測定する図
高圧で受電する非常電源専用受電設備には、高い電圧を連続してかけ続ける絶縁耐力試験があります。
これに対し、低圧で受電するものは測定方法が異なります。
配電盤等の各充電部相互間並びに充電部と外箱間の絶縁抵抗値を絶縁抵抗計により測定する。なお、この試験は、他の法令に基づく試験と兼ねて行うことができる。測定値は、5メガオーム以上であること。この試験は、「配電盤及び分電盤の基準」(昭和56年消防庁告示第10号)に適合しているものとして、総務大臣又は消防庁長官が指定する指定認定機関の認定を受け、その表示が貼付されているものにあっては、省略することができる。(消防庁「消防用設備等の試験基準」第25 非常電源(低圧で受電する非常電源専用受電設備) イ 機能試験)
低圧受電では、電圧をかけ続ける絶縁耐力試験ではなく、絶縁抵抗計で抵抗値を測る絶縁抵抗試験が使われます。
測るのは充電部相互間充電部と外箱間の二か所で、どちらも絶縁抵抗計という専用の測定器で確かめます。
合格の基準は測定値が5メガオーム以上であることで、電圧が低い分、高圧受電のような長時間の耐圧試験までは求められていません。
配電盤及び分電盤の基準に適合した表示が貼られているものは、この試験そのものを省略できる場合もあります。
電気工事士の資格を持つ試験実施者が、他の法令に基づく試験と兼ねて測定することも認められています。

絶縁耐力試験より簡単そうに見えますが、それで安全性は大丈夫なんですか。

電圧の高さに応じて必要な試験の強さが変わる仕組みなんです。
続いて接地抵抗の基準も見てみましょう。

接地抵抗の合格基準はどう決まるのか

接地抵抗計と接地棒で配電盤の接地抵抗を測定する図
配電盤の金属部分は、万一の漏電から人を守るために接地されています。
この接地が実際に効いているかどうかは、接地抵抗計という専用の測定器で確かめます。
接地極等の接地工事について、接地抵抗計で接地抵抗値を測定する。なお、この試験は、他の法令に基づく試験と兼ねて行うことができる。測定値は、次表の数値であること。電圧300ボルト以下のもの(ただし、直流電路及び150ボルト以下の交流電路に設けるもので乾燥した場所に設けるものを除く)はD種接地工事で接地抵抗値100オーム以下。300ボルトを超えるものはC種接地工事で接地抵抗値10オーム以下。接地線の太さは、引張り強さ0.39キロニュートン以上の金属線又は直径1.6ミリメートル以上の軟銅線。低圧電路において、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは500オーム以下。(消防庁「消防用設備等の試験基準」第25 非常電源(低圧で受電する非常電源専用受電設備) イ 機能試験)
接地抵抗の合格基準は、電圧の高さによってD種とC種の二段階に分かれています。
300ボルト以下の一般的な機器はD種接地工事で100オーム以下、300ボルトを超える機器はC種接地工事で10オーム以下という基準です。
ただし0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を備えていれば、D種の基準は500オーム以下まで緩和されるという例外もあります。
接地線の太さにも下限があり、引張り強さ0.39キロニュートン以上の金属線か、直径1.6ミリメートル以上の軟銅線を使う必要があります。
数値が基準を上回っていれば、漏電時に電気が地面へ逃げにくくなり、感電や機器損傷の危険が高まります。

自動遮断装置があると基準が緩くなるというのは、初めて知りました。

遮断の速さで安全性を担保できるからなんです。
最後に試験結果報告書の実例を見てみましょう。

試験結果報告書には実際どんな数値が入るのか

試験結果報告書に記載された配電盤の実測値を示す図
基準の数値だけでは、現場でどれくらいの余裕を持って合格しているのかが分かりません。
そこで試験結果報告書の記載例を見てみます。
試験結果報告書の記載例では、受電方式は単相3線式220ボルト、主開閉器は定格電圧220ボルト・定格電流50アンペア、配電盤の設置場所は1階電気室、保有距離は一種耐熱形配電盤等で操作面1.2メートル・点検面0.6メートルと記入されている。機能試験の欄には、接地抵抗試験がD種接地工事で10オーム、絶縁抵抗試験が充電部相互間・充電部と外箱間ともに100メガオームという実測値が記入され、試験実施者が有している資格として第一種電気工事士が記載されている。(消防庁「消防用設備等の試験基準」別記様式第25①② 記載例)
実測値を見ると、基準ぎりぎりではなく大きな余裕を持って合格しているのが分かります。
接地抵抗は基準の100オーム以下に対して実測は10オーム、絶縁抵抗は基準の5メガオーム以上に対して実測は100メガオームと、どちらも基準の10倍前後の余裕があります。
保有距離も、操作面1.2メートル・点検面0.6メートルと基準の下限をそのまま満たすのではなく、記入欄に実測値をきちんと書き込むのが実務の姿です。
測定機器の型式や次期校正期限まで備考欄に記録しておくことで、あとから見返しても信頼できる報告書になります。
試験結果報告書の作成そのものは、電気工事士の資格を持つ専門業者に相談するのが確実です。

基準ぎりぎりではなく余裕を持って作られているんですね。

そのとおりです。
これで検査の流れがひととおりつながりましたね。

よくある質問

Q一般形配電盤等はどんな場所にでも設置できますか?
A設置できますが、屋外や屋上に置く場合は建築物と相対する面で3.0メートル以上の保有距離が必要になります。一種耐熱形や二種耐熱形の1.0メートル以上より広い距離を確保しなければなりません。
Q絶縁抵抗試験と接地抵抗試験は同時に行えますか?
Aどちらも他の法令に基づく試験と兼ねて行うことが認められています。電気工事士が行う定期的な電気設備の点検とあわせて実施することができます。
Q接地抵抗の基準はなぜD種とC種で数値が違うのですか?
A電圧が高いほど漏電時の危険が大きいため、300ボルトを超える機器ほど厳しい数値が求められます。D種は100オーム以下、C種は10オーム以下です。
Q絶縁抵抗試験は省略できる場合がありますか?
A「配電盤及び分電盤の基準」に適合しているものとして指定認定機関の認定表示が貼付されている配電盤であれば、省略できる場合があります。

まとめ

配電盤は設置場所に応じて一種耐熱形・二種耐熱形・一般形に分かれる
不燃専用室に置く配電盤は一種耐熱形配電盤等で足りる
屋外・屋上で建築物等と相対する面は一般形配電盤等だけ3.0メートル以上と数値が変わる
低圧受電は絶縁耐力試験でなく絶縁抵抗試験で合否を確かめる
絶縁抵抗試験の合格基準は測定値5メガオーム以上であること
接地抵抗の合格基準は300ボルト以下でD種100オーム以下、超えるとC種10オーム以下
試験結果報告書の記載例では基準の10倍前後の余裕を持った実測値が記入されている

低圧受電でも、こんなに細かく数値まで確かめているとは知りませんでした!

試験結果報告書の作成までお手伝いできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第12条第1項第4号イ(非常電源専用受電設備の設置基準)
  • 配電盤及び分電盤の基準(昭和56年消防庁告示第10号、改正平成12年消防庁告示第8号)
  • 消防庁「消防用設備等の試験基準に係る運用について」(平成14年消防予第283号)記3 第25 非常電源(低圧で受電する非常電源専用受電設備) 外観試験・機能試験・別記様式第25

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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