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避難はしごの基準はなぜ金属製と分かれているのか|非金属製の構造材質強度を解説

避難はしごの基準はなぜ金属製と分かれているのかのアイキャッチ画像

避難はしごには、金属製のものと、それ以外の材質で作られたものがあります。
実はこの二つ、根拠となる基準がまったく別の文書に分かれています。
非金属製の避難はしごには、専用の告示が構造・材質・強度を細かく定めています。
今回は非金属製の避難はしごの基準を、根拠条文から確認します。

うちの避難はしごは繊維製のつり下げはしごなんですが、
金属製と同じ基準なんでしょうか。

実は金属製と非金属製は別の基準で定められています。
施行規則の除外規定にはっきり書かれているんです。

知りませんでした。
非金属製の方はどこに基準があるんですか。

消防庁告示の中に、構造・材質・強度がまとめて定められています。
1つずつ条文で見ていきましょう。

この記事の結論
  • 避難はしごは施行規則第27条第1項第11号により金属製避難はしご及び緩降機を除き消防庁長官が定める基準に適合しなければならない
  • 告示の用語の意義では避難はしご=固定・立てかけ・つり下げはしごのうち金属製以外のものと定義されている
  • 縦棒の間隔は内法寸法で30センチメートル以上50センチメートル以下、横桟は直径14ミリメートル以上35ミリメートル以下
  • 横桟の強度試験は金属製が2キロニュートン、非金属製は3キロニュートンの等分布荷重に耐えること
  • 表示事項は種別・製造者名又は商標・製造年月・長さなど5項目

非金属製避難はしごの構造材質強度の基準を示す図解

避難はしごの基準はなぜ金属製と分かれているのか

建物の壁に固定された繊維製のつり下げはしごを示すイラスト
避難はしごとひと口にいっても、材質によって根拠となる基準が違います。
まずはどこで線引きされているのかを確認します。
消防法施行規則第27条第1項 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目は、次のとおりとする。
第11号 避難器具(金属製避難はしご及び緩降機を除く。)は、消防庁長官が定める基準に適合するものであること。
避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)第二 用語の意義
一 避難はしご 固定はしご、立てかけはしご及びつり下げはしごで金属製以外のものをいう。
金属製避難はしごだけは、この告示の対象から外れています。
施行規則第27条第1項第11号は、避難器具の構造・材質・強度を消防庁長官が定める基準(避難器具の基準)に委任していますが、金属製避難はしごと緩降機はこの委任から除かれています。
金属製避難はしごは、別に定められた「金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令」に従うため、対象が重ならないようになっています。
つまりこの告示第三が扱う「避難はしご」は、固定はしご・立てかけはしご・つり下げはしごのうち金属製以外のもの、たとえば繊維製のはしごに限られます。
点検の際は、まず対象のはしごが金属製かそれ以外かを確認し、どちらの基準を見ればよいかを見極めます。

材質で参照する基準が変わるとは知りませんでした。
まずはうちのはしごの材質を確認します。

それがいちばんの近道です。
次は構造の寸法を見てみましょう。

縦棒と横桟はどんな寸法で作られているのか

避難はしごの縦棒の間隔と横桟の直径を測定する様子を示すイラスト
避難はしごは、縦棒・横桟・つり下げ具で構成される単純な器具です。
だからこそ、それぞれの寸法に細かい基準があります。
避難器具の基準 第三 避難はしごの構造、材質及び強度
一 避難はしごの構造は、次に定めるところによる。
(二)避難はしごは、二本以上の縦棒、横桟及びつり下げ具で構成されるものであること。
(三)縦棒の間隔は、内法寸法で30センチメートル以上50センチメートル以下であること。
(四)横桟は、直径14ミリメートル以上35ミリメートル以下の円形の断面を有するもの又はこれと同等の握り太さの他の形状の断面を有するものであること。
(五)横桟は、縦棒に同一間隔に取り付けられたものであり、かつ、当該間隔は、25センチメートル以上35センチメートル以下であること。
(六)横桟は、使用の際、離脱及び回転しないものであること。
(八)つり下げ具は、丸かん、フックその他の容易にはずれない構造のものとし、縦棒の上端に取り付けられたものであること。
縦棒は2本以上、横桟の間隔は25センチメートルから35センチメートルの範囲です。
縦棒どうしの間隔は内法寸法で30センチメートル以上50センチメートル以下、横桟は直径14ミリメートル以上35ミリメートル以下の円形断面が条件です。
横桟は使用の際に離脱したり回転したりしないこと、踏面には滑り止めの措置を講じることも定められています。
つり下げはしごの場合は、丸かんやフックなど容易にはずれないつり下げ具を縦棒の上端に取り付けます。
点検では、実際の間隔や直径を測り、横桟がぐらついていないかもあわせて確認します。

横桟の間隔まで範囲が決まっているんですね。
今度メジャーで測ってみます。

ぜひ確認してみてください。
続いて材質の基準を見ていきましょう。

材質と耐食加工にはどんな条件があるのか

繊維製の縦棒と耐食加工を施した横桟を示すイラスト
避難はしごは屋外に取り付けられ、雨風にさらされ続ける器具です。
そのため部位ごとに材質の条件が分けて定められています。
避難器具の基準 第三
二 避難はしごの材質は、次に定めるところによる。
(一)縦棒にあつては、耐久性に富んだ繊維製のもの又はこれと同等以上の耐久性を有するもの、横桟にあつては、金属製のもの又はこれと同等以上の耐久性を有するもの、つり下げ具にあつては、鋼材又はこれと同等以上の耐久性を有するものであること。
(二)耐食性を有しない材質のものにあつては、耐食加工を施したものであること。
縦棒・横桟・つり下げ具は、それぞれ別の材質条件が定められています。
縦棒は耐久性に富んだ繊維製のもの又はこれと同等以上の耐久性を有するもの、横桟は金属製のもの又はこれと同等以上の耐久性を有するものが条件です。
つり下げ具は鋼材又はこれと同等以上の耐久性を有するものとされています。
そして耐食性を持たない材質を用いる部位は、すべて耐食加工を施すことも条件です。
点検では、縦棒のほつれや横桟のさびなど、部位ごとに劣化の現れ方が違う点に注意します。

縦棒と横桟で材質の条件が違うんですね。
次の点検では部位ごとに見てみます。

はい、それがいちばん確実です。
次は強度試験の中身を確認しましょう。

横桟はなぜ金属製より重い荷重試験に耐える必要があるのか

避難はしごの横桟に等分布荷重を加える試験を示すイラスト
避難はしごは人の体重を支えながら降りる器具なので、部位ごとに荷重試験が定められています。
ここに、非金属製ならではの数値差が現れます。
避難器具の基準 第三
三 避難はしごの強度は、次に定めるところによる。
(一)縦棒は、避難はしごを伸ばしたときの全長において最上部の横桟から、最下部の横桟までの部分について2メートル又はその端数ごとに縦棒の方向について、縦棒一本につき1.3キロニュートンの圧縮荷重(つり下げはしごにあつては、引張荷重)を加える試験において、亀裂、破損等を生じないものであること。
(三)横桟は、縦棒の方向について、一本につき中央7センチメートルの部分に、金属製のものにあつては2キロニュートン、その他の材質のものにあつては、3キロニュートンの等分布荷重を加える試験において、亀裂、破損等を生じないものであること。
(六)つり下げ具は、その一個につき、当該はしごを伸ばした縦棒の方向に、当該はしごの最上部の横桟から最下部の横桟までの部分について2メートル又はその端数ごとに1.5キロニュートンの引張荷重を加える試験において、著しい変形、亀裂又は破損を生じないものであること。
横桟の試験荷重は、金属製が2キロニュートン、その他の材質(非金属製)は3キロニュートンです。
太さの基準は金属製の横桟と同じ数値でも、非金属製は横桟自体の材質が軽くなりやすいため、試験荷重はあえて重く設定されています。
縦棒は2メートルごとに1.3キロニュートンの圧縮荷重(つり下げはしごは引張荷重)に耐え、それぞれ半分の静荷重でも永久歪を生じないことが条件です。
つり下げ具も1個につき1.5キロニュートンの引張荷重に耐える必要があり、著しい変形や亀裂が生じてはなりません。
点検では、横桟の中央部にたわみや変形が無いか、つり下げ具のかん・フックが摩耗していないかを見ておきます。

同じ太さでも非金属製の方が試験は厳しいんですね。
横桟の中央部を意識して点検します。

ぜひお願いします。
最後に表示事項を確認しましょう。

避難はしごに表示すべき事項はどこまで求められるのか

避難はしごに取り付けられた表示板を確認するイラスト
最後に、避難はしごに表示しておくべき事項を確認します。
立てかけはしごとつり下げはしごで、表示項目が少し変わります。
避難器具の基準 第三
四 避難はしごには、次に定める事項を、その見やすい箇所に容易に消えないように表示するものとする。
(一)種別
(二)製造者名又は商標
(三)製造年月
(四)長さ
(五)立てかけはしご又はつり下げはしごにあつては、自重
表示事項は種別・製造者名又は商標・製造年月・長さの4項目が基本です。
これに加えて、立てかけはしご又はつり下げはしごにあたる場合は自重の表示も必要で、あわせて5項目になります。
固定はしごには自重の表示は求められていないため、はしごの種類によって確認すべき項目が変わる点に注意します。
表示が見やすい箇所にあるか、消えかけていないかも点検のたびに確かめておきたいポイントです。
日頃の点検では、寸法・材質・表示の3点をあわせて見ておくと確認漏れを防げます。

固定はしごには自重の表示が要らないんですね。
今度の点検でうちのはしごの種類も確認します。

はい、ぜひ確認してみてください。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q金属製の避難はしごにもこの告示は適用されますか?
A適用されません。施行規則第27条第1項第11号は金属製避難はしご及び緩降機を除いてこの告示に委任しており、金属製避難はしごは別の省令に従います。
Q縦棒の間隔と横桟の直径はどのくらいと決まっていますか?
A縦棒の間隔は内法寸法で30センチメートル以上50センチメートル以下、横桟は直径14ミリメートル以上35ミリメートル以下の円形断面が条件です。
Q横桟の強度試験に金属製との違いはありますか?
Aあります。横桟の等分布荷重試験は金属製が2キロニュートン、その他の材質は3キロニュートンで、非金属製の方が重い荷重に耐える必要があります。
Q避難はしごの表示に自重が必要なのはどんなときですか?
A立てかけはしご又はつり下げはしごのときです。固定はしごには自重の表示は求められていません。

まとめ

避難はしごは施行規則第27条第1項第11号により金属製避難はしご及び緩降機を除き消防庁長官が定める基準に適合しなければならない
対象は避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)第三が定める、金属製以外の避難はしご
縦棒の間隔は30センチメートル以上50センチメートル以下、横桟は直径14ミリメートル以上35ミリメートル以下
縦棒・横桟・つり下げ具はそれぞれ別の材質条件があり、耐食性が無ければ耐食加工を施す
横桟の試験荷重は金属製2キロニュートン、その他の材質は3キロニュートンと非金属製の方が重い
縦棒は1.3キロニュートンの圧縮荷重、つり下げ具は1.5キロニュートンの引張荷重に耐えるものとする
表示事項は種別・製造者名又は商標・製造年月・長さに加え、立てかけ・つり下げはしごは自重も必要

金属製と非金属製で基準自体が分かれていることがよく分かりました。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第27条第1項第11号(e-Gov法令検索)
  • 避難器具の基準(昭和53年3月13日消防庁告示第1号、最終改正令和元年6月28日消防庁告示第2号)第二・第三 避難はしごの構造、材質及び強度

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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