高圧で受電する非常電源専用受電設備は、キュービクル式なら不燃専用室が要らないという設置基準までは知られていても、実際に何を測って合格にしているかは意外と知られていません。
工事が終わったあとには目で見る外観試験だけでなく、実際に電圧をかけたり抵抗を測ったりする機能試験が待っています。
高圧の充電部どうしの距離はミリメートル単位、接地抵抗はオーム単位というように、それぞれ基準の数値が決まっています。
今回は非常電源専用受電設備の機能試験で実際に確かめられる絶縁距離・接地抵抗・絶縁耐力・遮断順位・作動試験の中身を解説します。
非常電源専用受電設備は保有距離のルールがあることは知っていますが、検査で何を測るのかまでは知りませんでした。
実は接地抵抗や絶縁耐力まで、数値で測って確かめているんですよ。
数値で確かめるというのは、具体的にどうやるんですか。
高圧の充電部の距離から見ていきましょう。
まずは絶縁距離の話からです。
- 非常電源専用受電設備は外観試験に加えて機能試験でも合否を確かめます
- 高圧回路の絶縁距離は高圧充電部相互間90ミリメートルなど部位ごとに数値が決まっています
- 接地抵抗試験は約20メートル離れた位置に補助接地極を打ち込んで測定します
- 絶縁耐力試験は最大使用電圧の1.5倍の電圧を連続10分間印加して確かめます
- ネットワーク方式配電では一般負荷側の遮断器が消防用設備側より先に遮断される設計になっています
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目次
高圧回路の絶縁距離はなぜミリメートル単位まで決まっているのか

これらの間隔は、感電や短絡を防ぐためにミリメートル単位で数値が決まっています。
最も広いのは高圧充電部どうしの90ミリメートルで、大地との間は70ミリメートルまで縮められます。
電線の端末部は絶縁電線の外被の外側から測るのが原則ですが、外被端から50ミリメートル以内は絶縁テープを巻いても高圧充電部とみなすという判定基準もあります。
つまりテープで覆ったつもりでも、近すぎれば規定違反になるということです。
検査ではこの数値をスケールで実際に測り、表の値を下回っていないかを確認します。
90ミリメートルや70ミリメートルと言われても、感覚がつかめません。
この間隔があるからこそ放電や短絡が起きにくくなっているんです。
次は接地抵抗の測り方を見てみましょう。
接地抵抗はなぜ20メートルも離れた場所で測るのか

この接地が実際に効いているかどうかは、接地抵抗計という専用の測定器で確かめます。
被測定接地極P1から約20メートル離れた位置にP3を、その中間にP2を打ち込み、3点の電位差から抵抗値を求めます。
合否の基準は電圧の種別で変わり、A種は10オーム以下、D種は100オーム以下と定められています。
数値が大きいほど、漏電したときに電気が地面へ逃げにくくなっていることを意味します。
測定前には電源を確実に遮断し、検電器で安全を確認してから作業することも決まりの一つです。
接地棒をそんなに離して打ち込むのは、なぜですか。
近すぎると正確な抵抗値が測れないからです。
だから決まった距離が必要になるんです。
絶縁耐力試験はどんな電圧をどれだけの時間かけて確かめるのか

そのための試験が、絶縁耐力試験です。
高圧電路は最大使用電圧の1.5倍、特別高圧電路は1.25倍の電圧を印加し、連続して10分間耐えることが合格の条件です。
接地抵抗試験や作動試験と同じく、他の法令に基づく試験と兼ねて行うこともできます。
ただし告示の基準に適合した認定キュービクルで、指定認定機関の認定表示が貼付されているものは、この絶縁耐力試験を省略できます。
つまり認定品を選ぶかどうかで、現場で立ち会う試験の手間そのものが変わってきます。
10分間も高い電圧をかけ続けるんですか。
はい、瞬間的に耐えるだけでは不十分だからです。
ただし認定品なら省略できる場合もあります。
一般負荷の事故はなぜ消防用設備の電源に波及しないのか

一般側で事故が起きても、消防用設備側まで止まってしまっては本末転倒です。
一般負荷側の配線用遮断器(MCCB)が先に遮断し、消防用設備側につながるLBS又はCBは一般負荷の過負荷や短絡では遮断しない構造にしておく、という考え方です。
変圧器の二次側から供給する場合や特別高圧で受電する場合でも、一般負荷側だけが先に落ちるという順位は変わりません。
検査ではこの分岐方法が図面どおりに結線されているかを目視で確認します。
だから一般側でトラブルがあっても、消防隊が到着するまで消防用設備は動き続けられます。
一般の電気と消防用設備の電気が、同じ受電設備から出ていることもあるんですね。
はい、その代わり遮断する順番を決めて備えているんです。
保護継電器が正常に作動するかはどうやって確かめるのか

そこで工事完了後には、模擬的に異常を発生させて動作を確かめる試験も行います。
使うのは模擬試験装置で、過電流や地絡を模擬的に発生させて保護装置の反応を確かめます。
確認するのは、保護継電器が正常に作動して遮断器の開放・表示・警報まで一連の動作が行われるかどうかです。
あわせて計器や点検スイッチ類に機能不良や破損がないか、定格電圧が確立しているかも見ます。
数値の基準だけでなく、いざというときに設備が正しく反応するかまで、工事の最後に確認しているわけです。
わざと異常を起こして試すなんて、少し怖い気もします。
実際の事故ではなく模擬試験装置で再現するので安全です。
これで検査の中身がひととおりつながりましたね。
よくある質問
まとめ
検査でこんなに細かく数値まで測っているとは思いませんでした!
試験結果報告書の作成までお手伝いできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第12条第1項第4号イ(非常電源専用受電設備の設置基準)
- キュービクル式非常電源専用受電設備の基準(昭和50年消防庁告示第7号、改正平成10年消防庁告示第8号)
- 消防庁「消防用設備等の試験基準」第24 非常電源(高圧又は特別高圧で受電する非常電源専用受電設備) 外観試験・機能試験
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





