地震のあと、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備の消防ポンプを確認しようとしても、回転軸が重く、円滑に回らないことがあります。
制御盤に故障表示がなくても、そのまま起動してよいのか、施設側では判断に迷う場面です。
BCPでは回転軸の抵抗を見つけた時点で起動を保留し、軸受と軸継手を専門点検します。
消防ポンプの軸が重いです。
電源を入れて確かめてもええですか。
起動せず、専門業者へ引き継ぎます。
制御盤が正常なら、ポンプも正常ではないんですか。
電気系統と機械部分は分けて確認します。
- 回転軸が円滑でなければ消防ポンプを起動しません
- 施設担当者は軸を回さず、発見時の状態を残します
- 専門業者が電源を遮断して軸と軸受を確認します
- 軸継手の緩みや芯ずれを一体で切り分けます
- 補修後は管理下の試運転で復旧を判断します
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目次
回転軸が円滑に回らなければ起動してよいのか

回転軸に引っ掛かりや重さがあれば、確認のための起動もしません。
電動機が回転しようとする力を固着部へ加えると、軸受や軸継手などの損傷を広げるおそれがあります。
総務省消防庁の点検基準は、電動機とポンプの回転軸が円滑に回転することを確認事項にしています。
点検要領では、運転による確認を除き、電源を遮断した状態で点検することが示されています。
ただし、施設担当者が自己判断でカップリングガードを外したり、軸を手で回したりする作業ではありません。
発見時は設備を停止状態に保ち、周囲の変位、漏水、異物、警報の有無を記録して、消防設備士や保守事業者へ引き継ぎます。
始動できるかではなく、安全に起動して所定の性能を出せるかが復旧判断です。
消防ポンプが使えない間の防火安全対策も同時に決めます。
少し重いだけでも起動を止めるんですね。
機械的な抵抗を解消してから試運転します。
どの軸と周辺部を確認するのか

確認対象は、ポンプ軸だけではありません。
電動機軸、ポンプ軸、軸受、軸継手、潤滑状態をつながった機械系として確認します。
- 電動機の回転軸に引っ掛かりや異音がないか
- ポンプの回転軸が円滑に回るか
- 軸受の潤滑油やグリースに汚れや不足がないか
- 軸継手に緩みや損傷がないか
- 電動機とポンプの芯がずれていないか
- 基礎、架台、アンカーボルトに変位がないか
- グランド部から著しい漏水がないか
点検要領は、電動機とポンプの軸を手で回して円滑さを確認し、軸受は目視や手触りで潤滑状態を確認する方法を示しています。
軸継手はスパナ等で緩みを確認し、結合状態が正常かを見ます。
地震後は架台や配管のわずかな変位が軸芯へ影響することがあります。
回転部だけでなく、固定部と配管から伝わる力まで確認します。
グランド部は漏れを完全にゼロへ締めるのが正解とは限りません。
点検要領に沿い、著しい漏水の有無を専門業者が判断します。
ポンプ側だけ見れば足りますか。
電動機からポンプまで一列で確認します。
発見から専門点検と復旧確認までどう進めるのか

起動保留、影響確認、専門点検、補修、試運転、復旧承認の順で進めます。
- 回転軸の重さを見つけた時点で起動を保留する
- 電源状態と警報、漏水、周囲の変位を記録する
- 対象となる消防用設備と防護範囲を確認する
- 専門業者が電源を遮断して軸と軸受を点検する
- 軸継手の緩み、損傷、芯ずれを確認する
- 必要な補修後に管理下で試運転する
- 流量、圧力、振動、発熱、異音を記録して復旧を承認する
専門点検では、軸を切り離す前後の抵抗を比較すると、電動機側かポンプ側かを切り分けやすくなります。
軸受の損傷、潤滑不良、軸継手の芯ずれ、異物混入などを設備仕様に沿って確認します。
補修後の運転確認では、回転方向、電流、発熱、異常振動、不規則または断続的な異音、吐出圧力と流量を見ます。
消防庁の点検要領も、運転時に著しい発熱、異常な振動、不規則音等がなく、所定の性能を確保することを確認事項としています。
復旧まで消防ポンプを使えない場合は、火気使用の制限、巡回の増強、初期消火器具の再配置などを検討します。
防火管理者と設備管理者が影響範囲を共有し、必要に応じて所轄消防署へ相談します。
軸だけ直れば、すぐ復旧でええですか。
圧力と流量まで確認して復旧します。
制御盤が正常なら使えると思うと何を見落とすのか

制御盤の表示は、主に電気系統や運転状態を知らせます。
表示が正常でも、軸受の損傷や軸継手の芯ずれを直接示すとは限りません。
- 軸受の潤滑油やグリースが不足している
- 地震の変位で軸継手の芯がずれている
- ポンプ内部へ異物が入り回転を妨げている
- 軸または羽根車が接触している
- 基礎やアンカーボルトに緩みがある
- グランド部を締め過ぎて抵抗が増えている
- 起動直後だけ正常に見えて発熱が進む
電気的に起動可能でも、機械的に運転可能とは限りません。
無理に起動すると、過電流や発熱が出る前に接触部の損傷が進むことがあります。
反対に、軸が手で円滑に回ることだけでも復旧完了にはできません。
連結した状態での振動、異音、発熱、圧力、流量を試運転で確認します。
ポンプグランドのわずかな漏れは潤滑や冷却に関係する場合があります。
漏れを完全に止めるために自己判断で増し締めしないことも見落とし防止の一つです。
表示灯だけでは機械の状態まで分からへんのですね。
機械部分は別の確認が必要です。
明日から回転軸の異常にどう備えるのか

災害後に初めて判断手順を考えると、起動の可否と防火安全対策が遅れます。
停止判断、連絡先、代替措置、復旧承認者を平常時に決めておきます。
- 消防ポンプと電動機の型式を設備台帳へ記録する
- 軸受、軸継手、グランド部の点検履歴を整理する
- 地震後に施設側が触れてよい範囲を決める
- 回転軸が重い場合の起動保留基準を掲示する
- 保守事業者と部品調達の連絡先を更新する
- 使用不能時の巡回や火気制限を消防計画へ反映する
- 試運転の確認項目と復旧承認者を決める
点検結果は正常か異常かだけでなく、抵抗、振動、発熱、圧力、流量を時系列で残します。
前回の記録と比較できれば、経年変化と災害による変化を切り分けやすくなります。
消防法第17条の3の3に基づく点検の記録と、BCP上の初動・停止・代替措置の記録を結び付けます。
設備の復旧と事業再開を同じ時点と考えないことが重要です。
訓練では、軸の異常を想定し、消防ポンプが使えない時間に誰が何を止め、誰へ連絡し、どの条件で再開するかを確認します。
設備担当者だけで完結しない連携を作っておきます。
停止中の対応まで訓練に入れておきます。
復旧までの防火安全を一緒に決めましょう。
よくある質問
まとめ
起動前に止まれる手順を準備します。
点検から復旧判断まで一式で確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 消防法第17条・第17条の3の3
- 総務省消防庁 消防用設備等の点検の基準 別表第2 屋内消火栓設備
- 総務省消防庁 消防用設備等の点検要領 第2 屋内消火栓設備
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和5年3月
※本記事は公表されている法令および公的資料に基づく一般的な解説です。消防ポンプの回転軸が円滑に回らない場合は、施設担当者が自己判断で軸を回したり起動したりせず、電源遮断と誤起動防止ができる専門業者へ相談してください。個別の点検、補修、試運転、代替措置、復旧判断は、設備の仕様と施設の運用状況に応じて所轄消防署や専門家へご確認ください。





