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避難安全検証法の在館者密度はどうやって決まるのか|居室の用途別数値と出口通過の計算根拠を解説

在館者密度は居室の用途によって数値が変わる

中規模ビルの改修や大規模施設の設計では、廊下や階段の仕様が施行令の数値基準どおりでなくても、計算で安全性を証明すれば使える「避難安全検証法」という仕組みがあります。
建築基準法施行令第129条・第129条の2が定めるこの検証法の計算式には、居室にどれだけ人がいるとみなすかを表す在館者密度という数値が使われています。
在館者密度は、居室の用途によって定められた数値が変わり、同じ床面積でも計算結果が大きく変わってきます。
この記事では、告示が定める在館者密度の数値と、その数値が検証のどこで使われるのかを整理します。

うちのビル、確認申請の書類に「検証法」って書いてあった気がします。
あれは何を計算しているんでしょうか。

それはおそらく避難安全検証法のことですね。
計算の中心にある「在館者密度」という数値から見ていきましょう。

在館者密度、初めて聞きました。
どこで決まっている数値なんですか。

建設省告示第1441号という国の告示が、居室の用途ごとの数値を定めています。
1つずつ条文で見ていきましょう。

この記事の結論
  • 在館者密度は、建築基準法施行令第129条・第129条の2が定める避難安全検証法で、居室の出口を通過する人数を計算するための数値
  • 具体的な数値は建設省告示第1441号が定めており、居室の用途によって数値が変わる
  • 住宅の居室は0.06人、教室は0.7人、劇場等は1.5人など、用途によって最大25倍ほどの差がある
  • 廊下や階段そのものには在館者密度を使わない。別に定められた「必要滞留面積」を使う
  • 告示は平成13年・27年・28年に改正されているため、最新の数値表を確認する

在館者密度が避難安全検証法の出口通過時間の計算に使われるしくみを示す図解

在館者密度とは何のために使う数値なのか

居室の床に人のアイコンが均等に並ぶイラスト
避難安全検証法という言葉を聞いたことがあっても、計算の中身まで見る機会は少ないかもしれません。
まずは、計算の土台になる在館者密度がどんな数値なのかを確認します。
建築基準法施行令第129条第3項 第1項の「階避難安全検証法」とは、次の各号のいずれかに掲げる方法をいう。
一 次に定めるところにより、火災発生時において当該建築物の階からの避難が安全に行われることを当該階からの避難に要する時間に基づき検証する方法
ハ 当該階の各居室ごとに、(略)当該居室の出口を通過するために要する時間を、(略)国土交通大臣が定める方法により計算すること。
在館者密度は、居室の出口を通る人の数を計算するために使う数値です。
施行令第129条第3項第1号ハは、出口を通過するまでの時間を「国土交通大臣が定める方法」で計算するよう定めており、具体的な計算式と数値は建設省告示第1441号に委ねられています。
告示は、居室の床面積に在館者密度を掛けてその居室にいるとみなす人数を求め、出口の処理能力と比較して通過時間を計算する仕組みです。
つまり在館者密度は、避難計算の出発点にある「その居室に何人いるとみなすか」という前提の数値だということです。
次の見出しから、この数値が検証のどの場面で使われるのかを見ていきます。

在館者密度って、実際に人数を数えた数値なんですか。
それとも決まった数値があるんですか。

実測ではなく、用途ごとに決められた数値を使います。
次は、どの計算式に登場するのかを見てみましょう。

避難安全検証法のどの場面でこの数値が使われるのか

居室の出口を人のアイコンが列になって通過するイラスト
在館者密度は、階避難安全検証法と全館避難安全検証法のどちらでも使われます。
ここでは、検証のどの計算式に登場するのかを確認します。
建設省告示第1441号(階避難安全検証法に関する算出方法等を定める件)第三 令第129条第3項第1号ハに規定する在室者が当該居室の出口を通過するために要する時間は、次の式によって算出するものとする。
tqueue=ΣpAarea/ΣNeffBeff
p 在館者密度(単位 一平方メートルにつき人)
Aarea 当該居室等の各部分ごとの床面積(単位 平方メートル)
在館者密度は、居室の床面積に掛け合わせて人数を出すための係数として使われます。
式の中の「Aarea」が居室の床面積、「p」が在館者密度で、この2つを掛け合わせるとその居室にいるとみなす人数になります。
その人数を、出口の処理能力を表す有効流動係数と有効出口幅で割ることで、出口を通過するまでの時間が求まります。
全館避難安全検証法(施行令第129条の2第4項第1号イ)でも、各階が階避難安全検証法の考え方を満たしていることが前提になっており、同じ在館者密度の数値を使う計算が土台に入っています。
つまり在館者密度は、階単位でも建物全体でも、検証の入口で必ず使う共通の数値です。

階だけでなく建物全体の検証でも同じ数値を使うんですね。
うちの建物はどちらの検証法か確認してみます。

はい、階避難安全検証法と全館避難安全検証法の両方で使います。
次は、用途ごとの具体的な数値を見てみましょう。

居室の用途によって数値はどう変わるのか

事務室と教室と店舗のイラストが並ぶ様子
在館者密度は、すべての居室で同じ数値ではありません。
建設省告示第1441号は、居室の用途ごとに使う数値を細かく分けています。
建設省告示第1441号 第三第4項 在館者密度の表(抜粋)
住宅の居室 一平方メートルにつき0.06人
事務室、会議室その他これらに類するもの 一平方メートルにつき0.125人
教室 一平方メートルにつき0.7人
百貨店又は物品販売業を営む店舗の売場の部分 一平方メートルにつき0.5人
劇場、映画館その他これらに類する用途に供する室(固定席でない場合) 一平方メートルにつき1.5人
展示室その他これに類するもの 一平方メートルにつき0.5人
同じ床面積でも、居室の用途によって想定する人数はまったく違います。
住宅の居室は一平方メートルにつき0.06人ですが、教室は0.7人、劇場等(固定席でない場合)は1.5人と、用途によって最大25倍ほどの差があります。
百貨店の売場のように人が滞留しやすい用途は数値が大きく、住宅のように普段は少人数で使う用途は数値が小さく設定されています。
設計対象の居室がどの区分に当てはまるかを間違えると、通過時間の計算結果も大きくずれてしまいます。
複数の用途が混在する建物では、居室ごとに用途を確認しながら数値を当てはめる必要があります。

うちのテナントは店舗と事務所が混在しています。
数値は部屋ごとに分けて考えるんですね。

はい、居室ごとに用途を確認して数値を当てはめます。
次は実務で見落としやすい点を見てみましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

固定席が並ぶ部屋と手すりのある廊下を対比するイラスト
在館者密度の考え方には、混同しやすい落とし穴がいくつかあります。
ここでは、実務でとくに見落としやすい点を確認します。
建設省告示第1441号 第三第2項(抜粋) an 避難経路等の部分の区分に応じて次の表に掲げる数値(必要滞留面積)
階段の附室又はバルコニー 一人につき0.2平方メートル
階段室 一人につき0.25平方メートル
廊下その他の通路 一人につき0.3平方メートル
在館者密度は居室に使う数値で、廊下や階段そのものには使いません。
廊下や階段は必要滞留面積という別の数値(附室0.2平方メートル・階段室0.25平方メートル・廊下0.3平方メートル、いずれも一人あたり)で人の滞留を計算します。
在館者密度と必要滞留面積を混同すると、通過時間の計算結果そのものが変わってしまいます。
また、劇場等の固定席がある部屋は一律の数値ではなく、座席数を床面積で除した実測値を使う点も見落としやすいところです。
病院やホテルの固定ベッドがある寝室も同様に、ベッド数を床面積で除した数値を使います。

廊下や階段にも在館者密度を使うと思っていました。
別の数値があるとは知りませんでした。

廊下や階段は必要滞留面積という別の数値を使います。
次は明日からの確認事項を見てみましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

図面に虫眼鏡をあてて確認するイラスト
最後に、避難安全検証法が使われているかどうかを確認する手順を整理します。
告示の改正履歴もあわせて確認しておきたいところです。
建設省告示第1441号 附則(抜粋)
この告示は、平成12年6月1日から施行する。
附則(平成27年3月27日国土交通省告示第442号) この告示は、平成27年4月1日から施行する。
附則(平成28年4月25日国土交通省告示第704号) この告示は、平成28年6月1日から施行する。
告示第1441号は、平成13年・27年・28年と複数回改正されています。
古い設計図書や解説書に載っている数値表が、最新の改正を反映していない場合があるので注意します。
確認申請書類や検査済証の副本に「階避難安全検証法」「全館避難安全検証法」の記載があれば、その建物は検証法を使って設計されています。
定期報告(12条点検)の報告書には検証法の採用有無を記載する欄があるので、そこも確認材料になります。
不明な場合は、設計者や特定行政庁に確認申請時の図書を確認してもらうのが確実です。

まずは確認申請書類を見て、検証法を使っているか確認してみます。
改正の年も見ておきます。

はい、それがいちばん確実な方法です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q在館者密度はどんな計算式で使われますか?
A建築基準法施行令第129条第3項第1号ハが定める出口を通過するために要する時間の計算で、居室の床面積に掛け合わせて人数を求めるために使います。
Q住宅の居室と教室では在館者密度はどれくらい違いますか?
A住宅の居室は0.06人、教室は0.7人と、建設省告示第1441号の表で10倍以上の差が定められています。
Q廊下や階段にも在館者密度を使いますか?
A使いません。廊下や階段は必要滞留面積という別の数値で人の滞留を計算します。
Q固定席がある劇場では一律の数値を使えますか?
A使えません。固定席の場合は座席数を床面積で除した実測値を使うよう告示に定められています。

まとめ

在館者密度は施行令第129条・第129条の2の避難安全検証法で使う数値
具体的な数値は建設省告示第1441号第三第4項の表に定められている
出口通過時間は床面積×在館者密度を出口の処理能力で割って求める
住宅の居室は0.06人、教室は0.7人、劇場等(固定席でない場合)は1.5人
固定席・固定ベッドがある部屋は座席数・ベッド数を床面積で割った実測値を使う
廊下・階段は在館者密度でなく必要滞留面積(附室0.2・階段室0.25・廊下0.3平方メートル)を使う
告示は複数回改正されているため、確認申請書類で最新の数値を確認する

在館者密度が用途で細かく分かれていることがよく分かりました。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第129条・第129条の2(避難上の安全の検証を行う建築物の階及び建築物に対する基準の適用、e-Gov法令検索)
  • 階避難安全検証法に関する算出方法等を定める件(平成12年5月31日建設省告示第1441号、最終改正平成28年4月25日国土交通省告示第704号)第三 在館者密度・必要滞留面積の表

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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