地震後に消防ポンプ室を確認すると、ポンプと電動機の間にあるグランド部から水が落ち、架台がぬれていることがあります。
消防ポンプは水を扱う設備なので、少しの漏れならそのまま運転してよいのか迷う場面です。
BCPでは漏れをゼロにするための自己流の増し締めをせず、漏れ方と送水性能を専門点検して復旧を決めます。
グランド部から水が落ちています。
運転してもええですか。
運転を保留して漏れ方を残します。
締めれば止まりそうです。
全く漏れない状態まで締め付けません。
- 漏れの程度を判断できない消防ポンプは運転を保留します
- 清掃や増し締めの前に滴下位置と広がりを記録します
- グランド部を全く漏水がない状態まで締め付けません
- 軸封部だけでなく軸と軸受と送水性能を確認します
- 停止中の防火安全対策と復旧承認者を決めます
▼

目次
消防ポンプのグランド部から水が漏れていたら運転してよいのか

地震後に新しい漏れを見つけ、程度を判断できないときは運転を保留します。
ポンプの軸がケーシングを通るグランド部は、回転部分の周囲から水が外へ出るのを抑える軸封部です。
総務省消防庁の点検要領では、グランド部を目視し、手で触れるなどして確認し、著しい漏水がないことを確認します。
一方で、グランド部を全く漏水がない状態まで締め付けないことも明記されています。
つまり、水滴を一滴見つけただけで直ちに故障と決めるのでも、ポンプだから漏れて当然と放置するのでもありません。
平常時からの変化、漏れの量、運転時と停止時の違いをそろえて判断します。
地震の直後は、軸のずれ、締結部の緩み、パッキンの状態変化が同時に起きている可能性があります。
施設担当者が確認のために繰り返し起動しません。
運転を保留したら、消防設備が使えない範囲を防火管理者へ共有します。
巡回や火気制限などの代替措置を始め、専門業者へ引き継ぎます。
一滴でも故障ですか。
量と変化と運転状態を確認します。
どの漏れ方と周辺部を確認対象にするのか

確認するのは水滴の数だけではありません。
どこから、いつ、どのように、どこまで漏れたかを同じ順番で記録します。
- 停止中にも滴下しているか
- 運転時だけ漏れが増えるか
- 水滴、筋状、噴き出しのどれか
- グランド部の片側へ偏っていないか
- 受け皿や架台から床へ広がっていないか
- 異音、振動、焦げ臭、発熱を伴っていないか
- 圧力計、連成計、流量の指示に変化がないか
漏れの起点がグランド部か、配管継手やケーシングかを区別します。
上から伝った水をグランド漏水と誤認すると、原因箇所を取り違えます。
写真は、ポンプ全体、軸封部の中距離、滴下箇所の近接、床面への広がりの順で残します。
水を拭き取る前に設備番号と発見時刻を記録します。
軸受部については、外形の変形や損傷に加え、潤滑油の汚れ、変質、必要量も点検要領の確認対象です。
グランド部だけを見て軸系全体を正常と判断しません。
施設担当者は安全な位置から観察し、回転部分のカバーを外しません。
運転中の軸や継手へ手を近づけず、分解確認は専門業者へ任せます。
水滴だけ撮れば足りますか。
全体位置と床への広がりも残しましょう。
漏水を見つけたときはどう進めるのか

運転保留、状態記録、影響確認、専門点検、調整または交換、性能確認、復旧承認の順で進めます。
- 漏れの程度を判断できない時点で運転を保留する
- 設備番号、発見時刻、停止中か運転中かを記録する
- 滴下位置、漏れ方、床への広がりを写真で残す
- 防火管理者へ連絡して防護できない範囲を特定する
- 専門業者がグランドパッキンと軸系を点検する
- 仕様に基づいて調整、部品交換、芯出しを行う
- 送水性能と漏れの状態を確認して復旧を承認する
連絡時には、地震の発生時刻、直前の運転記録、前回点検時の漏れ方、異音や振動の有無をまとめます。
平常時との差が分かる情報を一つの連絡票にします。
専門点検では、グランドパッキンの締め代や摩耗、軸スリーブ、軸受、芯ずれ、継手、ケーシング周辺を確認します。
漏れだけを止める作業ではなく、漏れが変化した原因を確認します。
調整または部品交換後は、圧力計と連成計の作動、吐出圧力、流量、運転電流、振動、異音を確認します。
床が乾いたことだけで復旧完了にしません。
設備を止めている間は、消防計画に定めた連絡と安全確保を実行します。
BCP側では使用できない区画を踏まえて事業の縮小や再開条件を判断します。
先に水を拭いてええですか。
記録してから安全に処置します。
グランドを強く締めればよいと思うと何を見落とすのか

グランドパッキン式の軸封は、締め付ければ締め付けるほどよいものではありません。
消防庁の点検要領も、全く漏水がない状態まで締め付けないよう注意しています。
- 締め付け過ぎでパッキンと軸周辺の摩擦が増える
- 発熱や軸スリーブの損傷につながる
- 片締めで軸封部の当たりが偏る
- 芯ずれや軸受損傷による漏れを隠す
- 運転中だけ増える漏れを確認できなくなる
- 床面の水だけ拭いて漏れの起点を取り違える
- 送水圧力や流量の変化を見逃す
漏れを完全に止めることと、消防ポンプを正常な状態へ戻すことは同じではありません。
メーカーの仕様や構造を確認せず、施設担当者が締め付け量を決めないことが重要です。
地震後に急に漏れが増えた場合は、パッキンの摩耗だけでなく軸系の変化も疑います。
軸の円滑な回転、軸受部、継手、固定状態を一体で確認します。
漏れが少なくなっても、異音や振動、運転電流の変化が残れば復旧とはいえません。
調整後の試運転で複数の指標をそろえて確認します。
グランド部以外からの漏れであれば、パッキン調整では直りません。
ケーシング、配管、フランジからの漏れを切り分けます。
完全に止めたら安心ですか。
締め過ぎも異常の原因になります。
明日からどの順番で漏水時の手順を整えるのか

災害後に初めて正常な漏れ方や連絡先を調べると、復旧判断が遅れます。
平常時の写真、点検記録、設備仕様、連絡先、代替措置、復旧承認者を先にそろえます。
- 消防ポンプごとの設備番号とグランド部の通常写真を残す
- 停止時と運転時の正常な漏れ方を点検記録で確認する
- 運転を保留する異常と連絡先を決める
- 停止中の巡回、火気制限、立入管理を消防計画へ反映する
- 完成図書とメーカー資料をすぐ開ける場所へまとめる
- 専門点検後の性能確認項目と復旧承認者を決める
- 訓練で発見から事業再開までを通して確認する
平常時の漏れ方と運転結果があれば、地震後の変化を比較できます。
写真は同じ方向と距離で残し、停止中か運転中かを記載します。
消防法第17条の3の3に基づく消防用設備等の点検結果を、BCPの判断資料として利用します。
法定点検と災害後の臨時確認を別々の台帳にしません。
消防計画では、設備停止中の防火安全と関係者への連絡を定めます。
BCPでは事業の縮小、停止、再開の条件へつなげます。
訓練では、漏水の写真を起点に運転保留、連絡、代替措置、専門点検の手配まで進めます。
防火管理者と設備管理者が同じ復旧基準を共有します。
普段の漏れ方も残すんですね。
変化を比べられる記録にしましょう。
よくある質問
まとめ
処置前の記録から始めます。
軸封部の点検から性能確認まで一式で備えましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 消防法第17条・第17条の3の3
- 総務省消防庁 消防用設備等の点検の基準 別表第2 屋内消火栓設備
- 総務省消防庁 消防用設備等の点検要領 第2 屋内消火栓設備
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和5年3月
※本記事は公表されている法令および公的資料に基づく一般的な解説です。消防ポンプのグランド部に著しい漏水がある場合や漏れの程度を判断できない場合は運転を保留し、施設担当者が自己判断で増し締めや分解を行わず、設備仕様を確認できる専門業者へ相談してください。噴き出す漏れ、異音、強い振動、焦げ臭などがある場合は近づかず、施設の緊急手順に従ってください。個別の点検、調整、部品交換、性能試験、代替措置、復旧判断は、設備の仕様と施設の運用状況に応じて所轄消防署や専門家へご確認ください。





