消防用設備等の配線工事が終わると、業者は完了検査の前に「系統図どおりに保護されています」と説明します。
この系統図、実は設備の種類によって耐火配線・耐熱配線・一般配線の範囲がまったく違います。
自動火災報知設備ひとつをとっても、中継器の回路が一般配線で済む場合と、発信機の回路がわざわざ耐熱配線になる場合があります。
この記事では消防庁の試験基準にある系統図をもとに、どの配線をどこまで保護すればよいのかを実務の目線で整理します。
配線工事の完了検査で「系統図どおりです」と言われましたが
正直どこが耐火配線でどこが一般配線なのか分かっていません。
実は設備の種類ごとに保護の範囲が決まっています。
まずは自動火災報知設備を例に見ていきましょう。
中継器や発信機のような細かい機器の配線まで
気にする必要があるんですね。
はい、故障したときにどの回路が生きているかが変わります。
一つずつ確認していきましょう。
- 非常電源から受信機までの回路は耐火配線で保護するのが原則です
- 受信機から感知器までの回路は一般配線でよいとされています
- 中継器が予備電源を内蔵していれば非常電源回路は一般配線で足ります
- 発信機を起動装置と兼用すると上部表示灯だけ耐熱配線になります
- 耐火配線を埋め込めない場所は同等以上の耐熱効果がある方法で保護すればよいとされています
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目次
配線の外観試験は何を確認しているのか

このとき配線について確かめるのが、非常電源から機器までの経路を描いた系統図です。
消防庁の試験基準には、屋内消火栓設備から無線通信補助設備まで13種類の消防用設備等について、それぞれの系統図が用意されています。
図には太い線・斜線のハッチング・細い線という3種類の描き分けがあり、耐火配線・耐熱配線・一般配線を表します。
どの区間がどの配線になるかは設備の種類によって違うため、まず自分が点検・検査する設備の系統図を確認することが出発点になります。
続けて、実務でよく登場する自動火災報知設備を例に、この使い分けを具体的に見ていきます。
系統図は見たことがあるんですが
線の太さの違いまでは意識していませんでした。
線の種類ごとに保護のレベルが変わります。
まずは電源側から見ていきましょう。
自動火災報知設備の配線はどこが耐火でどこが一般なのか

経路の途中で、保護のレベルが何度か切り替わります。
これは消防法施行規則第12条第1項第4号ホの配線規定を、自動火災報知設備の非常電源にも準用する形になっているためです。
一方、受信機から地区音響装置までの回路や、消防用設備等の操作回路へつながる部分は耐熱配線で保護するとされています。
感知器そのものの回路は細い線、つまり一般配線として描かれており、火災を検知する最前線の配線にまで耐火性能を求めているわけではありません。
経路のどこにいるかで扱いが変わるという考え方を押さえておくと、次に見る中継器や発信機の例外も理解しやすくなります。
受信機までは頑丈に、感知器の先は普通の配線でいいんですね。
はい、ただし中継器と発信機には少し例外があります。
次で説明します。
中継器の非常電源回路はなぜ一般配線で足りることがあるのか

この注記が、実務でいちばん見落とされやすい緩和ルールです。
本来、非常電源につながる回路は耐火配線か耐熱配線で保護するのが原則です。
ただし中継器が予備電源を内蔵していれば、停電しても中継器自身の電池で動き続けられるため、受信機側からの非常電源回路をわざわざ保護する必要が薄れます。
これは受信機が予備電源を内蔵している場合も同じ考え方で、注記は「受信機又は中継器」と両方を挙げています。
点検の現場では、中継器の型式や設計図書で予備電源の有無を確認してから、配線の保護区分を判断することになります。
中継器の中に電池が入っているかどうかで
配線の扱いまで変わるんですね。
そのとおりです。
設計図書か型式の仕様書で確認してみてください。
発信機を起動装置と兼用すると何が変わるのか

兼用するかどうかで、上部表示灯の配線の扱いが変わります。
発信機を屋内消火栓設備のポンプ起動などと兼用する設計は珍しくありません。
兼用していない発信機であれば、表示灯の回路は他の警報回路と同じ扱いで済みますが、起動装置を兼ねた瞬間に条件が一段厳しくなります。
これは、発信機を押した人が確実に作動を確認できるよう、停電時でも表示灯が消えない状態を求めているためと考えられます。
新設のときだけでなく、増設や改修で発信機の役割を変えるときにも、この注記を思い出す必要があります。
うちの発信機、たしか屋内消火栓のボタンと兼用でした。
表示灯の配線を確認してもらいます。
それがいいですね。
図面に耐熱配線と書かれているか一緒に見てみましょう。
耐火配線を埋め込めないときはどう保護すればよいのか

とはいえ、工事の都合で埋め込めない場所も出てきます。
たとえば不燃専用室や、耐火性能を持つパイプシャフト・ピットの区画内に設ける場合は、他の配線と15センチメートル以上離すか不燃性の隔壁で仕切れば、埋設扱いにしなくてもよいとされています。
耐火電線やMIケーブルを使うときは、ケーブル工事のままで足り、埋設までは求められません。
このほか、ガス漏れ検知器の電源をコンセントから取る場合は容易に抜けない構造にすること、放送設備のスピーカーに音量調整器を設けた場合は3線式配線にすることなど、設備ごとの細かい工事条件も同じ試験基準に定められています。
系統図の太さだけでなく、埋め込めない場所の代替策まで押さえておくと、現場での判断に迷いにくくなります。
全部埋め込まなきゃいけないと思っていました。
同等の方法でもいいなら現実的です。
はい、それでも耐熱効果の証明は必要です。
工事業者に方法を確認してもらいましょう。
よくある質問
まとめ
配線図の見方がつながりました。
点検のときも自信を持って説明できます!
耐火配線か耐熱配線かで迷ったときは系統図を確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第12条第1項第4号(電源、配線及び附属装置)
- 消防法施行規則第24条第1項第4号(自動火災報知設備の非常電源)
- 消防庁「消防用設備等の試験基準に係る運用について」(平成14年消防予第283号)記3第28(配線)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





